最近は腸内環境をケアする腸活が、多くのメディアやテレビ、雑誌で取り上げられるようになりました。そんな腸活の方法として、朝一番や食後の歯磨きがあることを知っていますか? 

今回は、千葉県・新浦安で「栗林歯科医院」を経営する歯科医師の栗林研治先生に、口腔内の健康と腸の関係や、全身の健康に与える影響についてお話を伺いました。 

歯(口腔内)の健康と腸の健康は関係していると考えて問題ない 

歯(口腔内)の健康と腸の健康は関係していると考えて問題ない 

ーーー初歩的ですが、腸内環境と歯の健康についてが今回のテーマにはなるんですけど、関係しているって言ってしまってもいいのでしょうか 

栗林:基本的に、口の中には、良い菌・悪い菌両方います。口の中をケアしないと、それらの菌がどんどん体の中に入ってきてしまう。食道、胃を通って、腸内にも入り込みます。その結果、悪い菌が腸内でどんどん増えて、腸内環境が乱れてしまうというのは、普通に考えたらそうですよね。 

なので、腸内環境を良くしようと考えている人は、その入り口として歯磨きをするのがいいと思います。 

ーーー全く同感です。私たちAuBも、「菌を守る」ことのひとつとして、歯磨きをおすすめしています。 

栗林:やっぱり基本ですよね。口の中の悪い菌が放ったらかしになって蓄積していってどんどん垂れ流しになると、その先には腸内があるわけなので、腸内に影響してしまうのは間違いないかと思います。腸には免疫細胞の7割がいる、重要な免疫器官なので、腸活の観点からいくと口内って外せないと思うんですよね。ですので、歯磨きも立派な腸活になり得ます。ただ、歯磨きをする上で大きな問題が2つあります。 

ーーー2つの問題?なんでしょう??? 

栗林:まず一つ目は、菌が目に見えないところ。そして二つ目が、自分の歯を自分の目で見れないことです。 

自分の歯を自分の目では直接見れませんよね?なので鏡で歯を見ますが、鏡で見ても細菌とウイルスは見えません。そうすると、次の手段として歯医者へ行ってクリーニングをしてもらいます。 

ーーー歯医者でクリーニングしてもらうと、安心感はあります。 

栗林:でも実は、そのお掃除で、菌をしっかり除けているかどうか確認しにくいんですよ。やっぱり細菌やウイルスは目に見えないので。なので、私の歯科医院では、全患者さんに対して菌を見える化した歯磨き指導をしています。 

ーーー菌の見える化!!初めて聞きました。 

栗林:見た目はインパクトがあってすごいですが、これで確実に菌を除けますよ。歯科衛生士さんがクリーニングで菌を取り除くだけでなく、患者さんにも見てもらったり、歯磨き指導をしたり。こういう取り組みはやっぱり家だとなかなかできないので、口腔内をケアする、かつ腸や体全体の健康にも気をつかうのであれば、歯科医院に来てほしいなと思います。 

抗生物質は必要最低限にとどめてほしい理由 

抗生物質は必要最低限にとどめてほしい理由 

ーーー歯医者さんにいくと抗生物質を処方されることが多いですが、腸内環境の視点からいうとあまり飲んでほしくないというのが本音です。このあたり、どう思われますか? 

栗林:僕もどちらかというと、抗生物質は必要以上に処方しない方がいいと思っていますよ。 

例えば、風邪を引いた時に病院の先生から抗生物質を飲みなさいと渡されますよね。歯医者さんでも歯茎が腫れたり親知らずを抜歯したりすると、抗生物質を出します。でも、抗生物質は悪い菌だけでなく良い菌も殺してしまうんです。なので、特定の悪影響を及ぼす菌だけでなく、腸内の良い菌・悪い菌も抗生物質は殺してしまう。だから腸のことを思うと良くないってことですよね。 

ーーーなるほど、そのあたりは医療の中でも同じ認識なのですね・・・!病院によっては、抗生物質と一緒にビオフェルミンみたいな整腸剤を一緒に渡されることもあります。 

栗林:なので、例えば親知らずを抜いたあとに2週間以上経って歯茎が腫れる=菌がいるということなので、局所的に効く抗生剤を使ったり、歯医者に来てもらって消毒したりしています。抗生物質を飲まなくても治療できる方法はあるので、そちらを使うのが良いかなと。 

ーーー勉強になります!腸内の良い菌を守るためにも、治療方法は選択した方がいいですね! 

口臭には種類がある 

ーーー最近AuBのユーザーさんで、口臭が気になるという方がよくいらっしゃいます。そういう人の中には、腸内環境が悪い人や便秘で悩んでいる人もいて。口臭と腸はどういう関係がありますか? 

栗林:まず、口臭には種類があります。 

口臭には種類がある 

基本は、口の中の菌が原因なことが多いです。菌は繁殖するので、毎日食後に3回歯磨きをして菌を確実に除きましょう。そうすると、口臭が激減すると思います。 

口臭の中でも甘酸っぱい、腐った卵や肉、カビ臭、におい、アンモニア臭、アンモニア臭の場合は腎機能が低下しているとか、肝臓が悪いとカビのにおいがするともいわれます。 

胃腸の部分は腐った卵のにおいといわれるので、結論、腸内環境が乱れている時も口臭がちょっと変・・・となることはあると思いますね。 

ーーー口臭に種類があるということを初めて知りました!口腔内の汚れが原因となりつつ、他の可能性として腸の乱れも考えられるということですね。 

栗林:はい。なので口腔内の健康って、すごく大切なんです。歯医者に来てもらったら、僕らはまず歯並びを見て、虫歯と歯周病をチェックします。実は、虫歯が原因で年間数人ほど亡くなっています。虫歯が死亡の原因にもなるって、あまりみんな知らないんですよね。 

ーーー知らなかったです。口腔内の健康が全身の健康を左右するのですね! 

栗林:そうなんですよ。他にも、歯周病と腸内環境や糖尿病、心血管疾患は関わっています。歯周病って、歯と歯の間からばい菌が入っていって骨を壊していって支える骨がなくなって抜けちゃうこと。なので、口臭の話に戻りますが、虫歯と歯周病をちゃんと治していくことで、口臭をはじめ全身の健康を守ることに繋がります。 

ーーーとなると、歯磨きをするときの歯ブラシも重要ですよね? 

栗林:その通りです。患者さんにどんな歯ブラシがいいんですかとよく質問されますが、歯ブラシは歯科衛生士さんに相談しましょう。僕がこの歯ブラシいいですよって言うこともできますが、その人の歯並びの状態で変わってくるんで、普段から見てくれている歯科衛生士さんが安心です。歯ブラシの中でも、小さい・大きい、薄い歯ブラシ、電動歯ブラシ・・・と結構いろんな種類があるんですよね。今は保険がきいて安く歯科衛生士さんに相談できるようになっています。 

ーーーなるほど、ここは読者の方もぜひ、通われている歯医者さんの歯科衛生士さんに聞いてみてほしいです。 

栗林:あとは、歯科衛生士さんのチェックとクリーニングは3ヶ月に一回を心がけてみてください。やっぱり、歯茎の中に入り込んだ菌は歯科衛生士さんしかとれないので。3ヶ月という期間の目安根拠としては、菌はひとつじゃ何もできないけど、溜まってくると悪さし始める。それが大体、2〜3ヶ月だからです。その時にリセットボタンをピッと押してあげましょう。 

子どもの健康は歯と腸、食事から 

子どもの健康は歯と腸、食事から 

ーーー歯医者に通う頻度は、少なくとも3ヶ月に一回。歯医者は悪くなってから行くものと捉えている人も多いので、このあたりはぜひ意識してみてほしいですね。 

栗林:もっとみなさんに通いやすいと思ってもらうように、毎月離乳食教室やってるんですよ。歯が生えていない子どもたちの食の指導を管理栄養士さんたちにやってもらっています。 

ーーー歯医者で離乳食教室をするんですね!初めて聞きました。 

栗林:実は、赤ちゃんの脳の発達は3歳までに80%くらいに達します。その時に、甘いものや辛いものを食べると、脳がその刺激を覚えちゃうんです。そのまま大人になると、疲れたら甘いものや塩辛いもの食べるようになる。なので離乳食の段階からの食育はかなり重要です。 

ーーーなるほど、大人になった時の健康まで加味すると、実は大事な時期になりますね。 

栗林:そう。さらには、僕は離乳食の中に腸活を組み込みたいとも思っています。小さい子どもの腸内細菌はかなり大切で、この時期の腸内環境で免疫力は左右されてしまいますし。 

ーーー子どもの腸活、ぜひ口腔内のケアとセットで行ってほしいなと思います。ありがとうございます! 

歯が痛くなる前に歯医者へ通うことが当たり前になるように 

歯が痛くなる前に通うことが当たり前になるように 

ーーー最後に読者に伝えたいメッセージをお願いします。 

栗林:みんな緊急性を感じた時しか歯医者へ行かないと思うんですけど、やっぱり歯医者さんは定期的に行ってほしいなと思います。予防のために歯医者へ来てほしいですし、僕ら歯科医師や歯科衛生士はちゃんと口腔内のことについて知ってほしいという思いがあります。一般的な歯医者のイメージは、怖いとか痛いって思われがちなんですけど(笑)実際は怖い要素なんてありません。 

ーーーなるほど。お家で歯磨きやフロス、舌磨きのようなことはできると思うんですけど、やっぱり歯医者に行く、それを習慣化するのがいいですよね。 

栗林:口腔内の状態を良くするための方法として、今ではオンライン上でも簡単に情報を得られますよね。もちろん中には間違った情報もありますが、歯医者さんのHPなどをみてもらえば、歯の健康について色々学ぶことはできる、便利な時代です。 

ーーーぜひこの記事を読んだみなさんには、まずは歯医者に行ってもらい、習慣化してほしいと思いました。ありがとうございました! 

栗林研治(くりばやしけんじ) 
1977年大分県国東市生まれ。日本歯科大学生命歯学部卒業。口腔外科出身の開業医にて6年間勤務。勤務中に、ニューヨーク大学インプラント科にてインプラント治療・審美を学ぶ。2009年千葉県浦安市にて栗林歯科医院を開業。2011年にスウェーデン・スイスにて、むし歯や歯周病の予防医学を習得。2014年にはウィーン大学を通い留学し卒業。顎関節症を含めた総合治療を実現し、1万人の治療と予防に携わっている。2018年には、業界やコミュニティーに変化をもたらした世界一の人物に贈られる名誉あるアワードSMI World client of the yearのアワードをアメリカで受賞した。