本記事は、漢方と体・腸、コンディショニングの関係について専門家に聞くシリーズです。 

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【漢方の基本のき】体の根本をケアするために欠かせない漢方のルーツや正しい使われ方は?【漢方薬剤師・大久保愛先生】 

漢方をリセットや区切りで取り入れる人が多い? 

ーーー大久保先生のところへ来られる人は、どんなタイミングで来られますか? 

大久保:30-40代のかたが多いと思います。20代は、対処療法でもすぐに不調の改善が見られますが、老化が表面化する30代では、対処療法では賄いきれなくなってしまうことも多いと思います。特に働き盛りの30-40代は、ストレスや暴飲暴食夜更かし、出産、親の介護など老化現象に加え様々な環境要因が加わることで、不調が慢性化し、根本的に体を整えたいと考える人が多いのだと思います。 

ーーーそうなんですね!私も年齢を重ねるとそうなるのかな……確かに今30代手前で必死に駆け抜けている感覚はあります。 

大久保:今28歳なら、自分ゴトになるのがあと5年ほどかと思います。ただ、AuBさんみたいな健康産業に携わっているのと、そうじゃない人とは全く違うと思いますが。 

ーーーそういうリセット感覚で漢方を使う人もいれば、ガッツリ何かを治したくて使用する人もいますが、効果・効能の強さはどうでしょうか? 

大久保:どっちもありますね。即効性のあるものもあれば、ゆっくりじわじわ効いてくるものもあります。 

即効性がある漢方薬といえば、「葛根湯」と「芍薬甘草湯」のふたつで、病院や街の薬局などで購入できます。葛根湯は、即効性があるので風邪の引きはじめに飲みましょうと言われています。芍薬甘草湯は足が攣った時に飲む漢方。足が攣りやすい人は枕元に置いて寝る人も多いくらいです。

即効性はないけどゆるくじんわり効くものもあって、例えば長年めまいや耳鳴りなどで悩む方に対しては、即効性を期待することは難しく時間をかけて漢方で改善を目指すという場合があります。 

ーーー西洋医学と漢方の考え方の違いはなんですか? 

不調を体の防御反応と捉えるのが漢方の考え方です。一方で、西洋医学は身体の異常やエラーを取り除く、にフォーカスしています。 

この図を見るとわかりやすいと思いますが、STEP1、2の段階でケアしていくのが予防医学です。 

普通の人はSTEP3の病気になった段階で動きます。病気とわかってから、手術や投薬で治していくのが一般ですね。でも漢方は、病気になる手前のところで、なんでそうなったんだろうという原因を見つけていき、その習慣を取り除くことを考えていきます。 

ーーーまさに予防医学ですね!今まで使ったことはありませんでしたが、これから活用してみたいと思います。 

漢方は土台があってこそ生きるアイテムである 

ーーー漢方は予防という側面が強いことはわかりましたが、栄養素で考えると、三大栄養素ではないんだろうなというイメージが湧きました。 

大久保:その通りです!漢方がどの部分かというのをこちらに示しています。 

三大栄養素に、ビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカルを合わせて七大栄要素になります。その7つめの、フィトケミカルが漢方に該当します。 

フィトケミカルは、体を作るというより働きを調節するという役割をもつ成分です。

例えば血虚の方が飲む漢方薬の中にタンパク質と鉄とビタミンB群がめちゃくちゃ入っているわけではありません。 

ーーーわかりやすいです!! 

大久保:身体のどこがエラーしているのかなと見つけることを漢方では弁証論治と言います。「肝気鬱結」や「心腎不交」、「肝脾不調」だとかいろんなそういう四文字熟語みたいな表現をします。聞いたことはありますか? 

ーーー文字面は見たことが、あるような……。 

大久保:聞き慣れないと難しいですよね。例えば肝気鬱結と言ったら加味逍遙散とか抑肝散加陳皮半夏を出しますが、体のどのエラーをどうやって治していこうかと方針を決めて、根本的に不調の原因を解決していくものです。 

それをサポートするのがフィトケミカルであり、フィトケミカルを組み合わせたものが漢方薬になっています。 

ーーー漢方はフィトケミカルの部分に該当するのですね。なるほど 

大久保:先ほどの図の横には食薬・薬膳と記載しています。いわゆる食養生という考え方ですね。 

食事と合わせて漢方を使うことが多いのは、根本の部分をケアするためです。七大栄養素の真ん中部分に近づくほど、身体を作るものとして必要になります。なので、三大栄養素がきちんと摂取できていなかったら、いくらフィトケミカルを摂ったところでやっぱり思ったような効果っていうのは得られにくいですよね。 

ーーーつまり、土台がしっかりしていないと治るものも治らない、ということですね。 

大久保先生から学ぶセルフチェック方法 

ーーー自分で「あ、不調だな」って思うときって、意識していないと難しい気がしています。セルフチェックのポイントってありますか? 

大久保:大切な質問ですね。まずはこちらをみてください。 

大久保:ここに挙げた5つはなるべくいつもモニタリングしましょう。例えば今日は顔色が悪いな、とか、唇がちょっと荒れている、眠い、集中力がいつもよりない・・・みたいな変化を感じ取ることが大切です。あ、うんちの状態を見るのもひとつですね。 

そのためにも、体調が良い時はどんな生活をしていたかということを把握していておくことも重要です。他人と比較するのではなく、昨日と比べて今日はどうだろうというところだけチェックしてもらえたらいいですね。今日もし何か不調を感じたら、昨日の行動を振り返る。食事の時間が遅かった、お菓子を食べすぎた、みたいな原因と結果の関係を覚えておくと、予防にもつながります。 

ーーー自分の体調ってなんとなく悪い時は悪いって理解できますが、それがどう悪いかっていうのは常日頃モニタリングしないとなかなか難しいですよね。そのあたりを習慣化すると良いコンディショニングができるんじゃないかというふうに思いました。 

大久保:漢方を使うことやコンディショニングは自分と向き合うこと。とても初歩的ですが、大事だと思います。 

ーーーなるほど、ありがとうございます!! 

〜第3回に続く〜 

大久保愛 
食薬の第一人者、薬剤師、漢方カウンセラー、国際中医師、日本初の国際中医美容師、薬膳料理研究家、作家、アイカ製薬代表取締役、腸内細菌検査協会理事。未病を治す専門家としてAI漢方・食薬相談システム『CrowdSalon』開発や『食薬アドバイザー』資格養成、商品開発、企業コンサルティングなどに携わる。著書『心がバテない食薬習慣』は発売1カ月で7万部突破のベストセラーに。著書多数。https://crowdsalon.com/