毎日ヘルシーで元気に過ごすために意識すべきことは、体調不良になる前に「予防」すること。予防医療の中でも昨今は身近になってきた漢方、みなさんは取り入れていますか? 

今回は漢方薬剤師・大久保愛先生に、気になる漢方のあれこれについてお話を伺いました。 

漢方は体の根本をケアするアイテム 

ーーー改めて、漢方について定義など教えてください。 

大久保:漢方は、定義としては生薬を2つ以上配合しているものを指します。この生薬というのは、植物の根っこや草、茎や花の蕾とか実など色々なものがあります。 

生薬は、全部が医薬品扱いではなくて、食品扱いのものもあれば、混ぜることによって食品扱いや医薬品に変わるなど、結構複雑です。 

ーーー生薬を2種類以上配合……知りませんでした。組み合わせによって食品や医薬品に変わるというのは面白いですね。 

大久保:漢方薬の特徴としては生薬を2つ以上配合したものなのですが、実は1種類だけ使った漢方薬も存在します。ただ、一応定義としては2種類以上の生薬を混ぜたもので、国の決められた分量とか種類を混合したものを漢方薬という感じですね。 

ーーーなるほど。私も幼少期に風邪引いた時は、葛根湯を飲んでいました。私はてっきり葛根湯というものがあると思っていたんですけど、あれも2種類以上混ぜられたものなんですね。 

大久保:実際は、葛根湯という植物はありません。生薬が複数含まれています。風邪のひきはじめに飲むことで知られていますが、即効性を実感しやすい漢方薬の一つです。 

文明の発展前に親しまれてきた漢方は今も受け継がれる 

ーーー確かに、漢方薬がなぜ使われるようになったのか、みたいなところにも絡むと思いますが、実際はどうなんでしょうか? 

昔は、今の病院のようにレントゲンやMRI、血液検査の注射器も衛生管理が整っていませんでした。そんな文明が発展していない環境でも、元気に健康に生きるために経験則をもとに発展したのが漢方薬です。当時は、いろんな植物の根や茎などいろいろなものを組み合わせてスープやお茶にして不調を癒していました。 

今でもそのレシピが受け継がれて医薬品として評価されています。 

ーーー人々の健康に寄与したというところが評価されて今もなお使用されているということなのですね!西洋医学とは違うものの、その効果を実感している人が多いイメージもあるので、案外人の体感はあなどれない気がします。 

大久保:そうですよね。なので、漢方は可能性をすごく秘めているものと思っています。予防医療の中でもチベット医学だとかアユルヴェータとかたくさんありますが、漢方医学というものが現在も保険医療して使われていることは、結構奇跡的なことじゃないかなとも思います。 

ただ、漢方は優しく効くというものではなく、正しく使用しないと副作用が出てしまいます。 

例えば、ほてりを改善するものを冷え性の人が飲んだり、便秘に効果があるものを便秘じゃない人が飲んだら下痢になっちゃったりすることもあります。

正しく使用してこそ健康に寄与する漢方 

ーーー漢方を使う人って自分の予防のために使う場合が多いイメージがある一方で、最近は「韓国の漢方」が若い人たちの中で流行り、人気になっていると思います。あれは実際正しい使い方をしないと結構危ないのでは?と思うんですけど、どう思われますか? 

大久保:韓国の漢方(韓方)では、「麻黄(マオウ)」と「大黄(ダイオウ)」という生薬が主成分になっているものが多い印象です。麻黄を高容量含有していることが多いので、合う合わないがあると思います。適切な運動や食事で健康にダイエットしてほしいのが本音です。 

適切に摂取しないと、激しい動悸や冷や汗など、結構副作用が強いんですよね。でもやっぱり代謝が上がるので痩せるから流行ってしまっているんだろうなと思います。 

ーーーなるほど、ありがとうございます。私はその辺りはどうしても気になってしまって。若い子達にそんなに流行っているのは果たしていいことなのか、と思っていました。逆に、30〜40代で飲み始める人も多いのですが、どのような背景がありますか? 

大久保:そうですね、30〜40代で漢方薬を飲み始める方、特に女性が増えますが……漢方薬を飲むことは、人によっては意識が高いと思れがちです。でも、切実な思いをもって漢方を試される方が多いです。 

ーーーというのも? 

大久保:漢方医学では、基本的に28歳くらいから老化すると言われます。その年齢になるまでは、西洋医学でもすぐに体調が元に戻ります。下痢が出たら下痢止め、便が詰まったら便秘薬、体が痛かったら鎮痛剤、みたいな感じで対処療法で乗り越えられますよね。でも、だんだん28歳を越えてくると老化が始まってくる。西洋医学ではすぐに解決できなくなる頻度が増え、根本的に改善する方法を模索しはじめ、漢方薬にたどり着く人が増えます。 

今までの20代、仕事も頑張って実績も色々積んで、やりたいことも増えて、新人じゃなくなって。結婚する方もいれば子どもが生まれて・・・。時間がないけどやることがすごく多いという時に老化が始まるので、割と30代前半って無理をする人が多いんです。だから今までの対処療法では徐々に効きづらくなってしまいます。そこで漢方薬の出番です。 

ーーーなるほど!そして私がちょうど28歳です・・・!! 

大久保:あ、じゃあそろそろですね(笑) 

ライフステージの変化を見越して漢方を活用すべき理由 

大久保:若い頃に身体とあまり向き合ってこなかった人は、だんだん30代くらいから治りにくい病と出会っていくことになります。 

しかも、生命維持に関わらない(あまり必要ない)ところから、人間の機能って防御のために落ちていきます。 

例えばストレスを感じると副腎からコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。また、副腎では同じ原料から女性ホルモンなど性ホルモンも分泌しています。そのため、ストレス過多となり、生命維持のためにコルチゾールの分泌が優先されると、必然的に女性ホルモンの分泌が減少し、生理不順などを起こすことがあります。 

ーーーなるほど!ストレスを感じるとホルモンバランスや月経周期の乱れが起こりやすいと言われますが、そこに理由があるのですね! 

大久保:そうです。なので、婦人科の悩みは30代から増えてきます。 

若い頃に仕事を頑張って、過酷な生活を送ってきてそのまま無茶して30代を走り抜けると、30代中盤からいろんな不調が出てきてしまいます。40代に子宮筋腫など子宮系の疾患にかかり、そのまま更年期に突入。だんだんいろんな原因が積み重なっていく。しかも若い頃と違って老化してるので、今まですぐリカバリーできたのができなくなっていってしまう。 

痛み止めなど対処療法的などの薬だけでは治らなくなってきたから、じゃあどうしよう?となった時に出てくるのが、漢方薬という、根本的な原因を追究し体をもとの状態に戻していくものなのです。 

自分の身体と向き合ってなんかしなきゃいけないっていうのをどこかで気がつくのが多分30代なんですよね。 

ーーーこういうライフステージ別の体の変化は、女性特有ですか? 

大久保:男性の場合は、月単位でのホルモンの変動はなく安定しやすいので、顕著に現れないと言われます。ただ、最近ではストレスで男性更年期を若く感じる人もいらっしゃいますね。とはいえ、女性の方が月によって変動がすごく大きいことや、出産や更年期のようなタイミングでホルモンが乱れやすくなるので、男性と比べると女性の方が悩みが深くなりやすいです。 

なので、男性より女性の方が漢方使う人が多いという印象を持たれる方が多いです。 

ーーーなるほど、わかりやすいです。男女の違いはあれど、正しい使い方で漢方をうまく使って、長い人生をヘルシーに過ごせるのが一番ですね! 


大久保愛 
食薬の第一人者、薬剤師、漢方カウンセラー、国際中医師、日本初の国際中医美容師、薬膳料理研究家、作家、アイカ製薬代表取締役、腸内細菌検査協会理事。未病を治す専門家としてAI漢方・食薬相談システム『CrowdSalon』開発や『食薬アドバイザー』資格養成、商品開発、企業コンサルティングなどに携わる。著書『心がバテない食薬習慣』は発売1カ月で7万部突破のベストセラーに。著書多数。https://crowdsalon.com/