本記事は、漢方薬剤師・大久保愛先生をゲストに漢方と体・腸のケア、コンディションイングについてお聞きしています。 

【漢方の基本のき】体の根本をケアするために欠かせない漢方のルーツや正しい使われ方は?【漢方薬剤師・大久保愛先生】 

【漢方を使うタイミングは?】自分の体調のセルフチェック方法や、栄養素との関係について【漢方薬剤師・大久保愛先生】 

の続編です。 

漢方が病院とドラッグストア両方で手に入る理由 

ーーー漢方は保険適用外なものもあると聞いたことがありますが、本当ですか? 

大久保:はい。医療用の医薬品として認可をとっていないと保険適応にはなりません。 

ーーー医療用医薬品と一般用医薬品での使い方の違いはなんでしょうか? 

大久保:保険適用にする場合は、病名が必要になります。その薬を使用する対象となる病名を医師が診断したら、その効能効果をとっている漢方薬しか使うことができないので、選択肢がすごく狭まってしまうんです。 

でも、例えば「最近トイレも近くて、抜け毛や目の疲れ、腰痛も気になるし、めまいもするんですよ」っていう人がいたとしたら、何科に行ったらいいんだろうって思いますよね。そんな時、漢方だったら一種類で解決することもあります。ですが、病院の場合、複数の不調があると、複数の科に行くことになり、体全体をつなげて考えることが少ない印象です。国の保険を使うということは、定義が明確になっている必要があるため、少し端的にならざるを得ません。そのため、病院で処方される漢方薬は、西洋医学と似たような処方の方法となることが多いようです。 

街の薬局で販売される漢方薬は保険が適応されないため高いけれど、不調を改善するために体全体のバランスを整えるようにアプローチするため、必然的に食事や運動指導、ストレッチ、ツボ押しなどサポート体制が手厚くなる傾向があります。 

ーーーすごい納得感です。たしかに病名がないと保険適用にならない…勉強になります、ありがとうございます。 
 

漢方と腸活は、切っても切り離せない関係である 

ーーー漢方と腸活って、どういう関係がありますか? 

大久保:実は昔から、腸と漢方って繋がりがあると言われています。 

「β結合」って聞いたことありますか?例えばきのこに含まれる成分である「β-グルカン」などがありますが、このβは物質同士の結合部分の「β結合」を意味しています。この結合は、私たち人間はほとんど分解できません。そして、漢方の有効成分は糖と「β結合」しています。 

つまり、このβ結合を解くことが、漢方が効果を発揮するために欠かせないんですよね。そして、腸内環境がいいとその結合を切って有効成分を吸収できるようになります。 

ーーーそうだったんですね・・・!!漢方の役割を最大化させるためにも、腸活が重要、ということですね! 

大久保:そうですね。もちろん漢方に限らず、きのこのような免疫力を高める有効成分を効かせるために、腸内環境をよくしてから飲みましょうねって言われるのです。 

アレルギー性疾患や喘息などで悩む人も、基本的に最初に胃腸のケアから始めましょうというのは、古くからある方針でもあります。 

ーーーなるほど。それでいうと、漢方を飲むタイミングっていつが一番いいんですか? 

大久保:基本的には、食前食間に飲みましょうと案内していますね。お腹にいろんなものが入っていたら、腸内細菌がそちらの消化・吸収に使われてしまう可能性があるからです。 

とはいえ、飲み続けることが大切だと思っているので、結局のところ食前に飲み忘れた場合には、気が付いたときにのみ、継続することを大切にしてください、と伝えています。 

ーーーちなみに、腸を整える方法にはどんなものがありますか? 

大久保:例えば便秘とか下痢って、ストレスや食事内容、病気、薬の副作用など、いろんな不調の重なりで起こりますよね。そういう時は、食事バランスを整えること、排便を促すために腹筋を鍛えること、ストレスを緩和する漢方薬に頼るなど腸だけにアプローチするよりも改善に繋がるんじゃないかなと思います。 

ーーー確かに、便秘・下痢でお悩みの方に話を聞くと、いろんなインサイトが見えてきますが、「これも原因なんだ!」という発見はたまにあります。 

大久保:そうですよね。便秘薬ばっかり飲んでたら便秘が慢性化してしまうし、それであれば違う部分の問題からケアする必要がある。 

身体全体を整えていくことを目標としている予防医学では、その根幹となるものがやっぱり腸です。身体の中に自分の細胞よりも多い数の腸内細菌が存在するんであれば、そこときちんと連携を取るべきなので、腸の方は大事にしてほしいと思っています。 

ーーーまさにその通りだと思います。いくらいいものを摂っても、そのコアとなる腸(土台)が整っていないと意味がないですよね。 

大久保:もちろん、よほどきついのであれば直接下痢や便秘を改善するために薬を活用してもいいと思います。ですが基本は、他の原因を漢方薬で潰していってあげることが⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠腸活になるんじゃないかなと思います。 
 

ーーーいや、納得です。すごく勉強になりました。ありがとうございます! 

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▶︎【漢方の基本のき】体の根本をケアするために欠かせない漢方のルーツや正しい使われ方は?【漢方薬剤師・大久保愛先生】 

▶︎【漢方を使うタイミングは?】自分の体調のセルフチェック方法や、栄養素との関係について【漢方薬剤師・大久保愛先生】 

大久保愛 
食薬の第一人者、薬剤師、漢方カウンセラー、国際中医師、日本初の国際中医美容師、薬膳料理研究家、作家、アイカ製薬代表取締役、腸内細菌検査協会理事。未病を治す専門家としてAI漢方・食薬相談システム『CrowdSalon』開発や『食薬アドバイザー』資格養成、商品開発、企業コンサルティングなどに携わる。著書『心がバテない食薬習慣』は発売1カ月で7万部突破のベストセラーに。著書多数。https://crowdsalon.com/