米麹で作る甘酒は、私たちの健康に良い腸内細菌を増やすエサ:オリゴ糖が多く含まれていて、ビタミンも豊富。そのため飲む点滴ともいわれ、腸活をはじめ健康や美容のために愛飲している方も多いドリンクです。その健康効果や文化的な背景に着目した、「米麹・甘酒専門店 MURO」が神楽坂にあります。運営元である株式会社コラゾンの代表取締役 大村智則さんに、なぜ甘酒専門店を開いたのか、甘酒が持つ幅広い可能性について教えていただきました。

甘酒専門店へ転身。アスリートが通う理由がヒントに

▲「米麹・甘酒専門店 MURO」は神楽坂に店を構え、甘酒、塩麹などの麹を使用した調味料、麹パウダーなどを揃えています。神楽坂は、江戸時代には江戸城の外堀にあたり、武家屋敷が並び、かつて米・味噌・醤油・酒などの食材が集まる荷揚げ地でもありました。

ーー米麹・甘酒専門店をオープンさせた経緯をうかがえますか。

大村:当社はコラゾンという会社名で、スペイン語で心という意味です。21世紀のはじめ、2001年に立ち上げて「科学の進歩で生活は便利になったけど、心は豊かになったか?」を自問自答しながら、事業を展開してきました。

食器や観葉植物などを取り扱う生活雑貨のセレクトショップ「のレン」を運営しており、生活者の皆さんが本当の豊かさを見つけられるようなお店を全国各地のものづくりをする職人さんと一緒に作っています。「MURO」をオープンさせたのは、2017年。当初は味噌や醤油、お酢なども扱う発酵食品の専門店でした。

実は、麹や甘酒にフォーカスしたのは、オープン後なのです。

ーーなぜ、麹や甘酒の専門店にしたのですか?

大村:お店自体が広くないので、発酵調味料を幅広く取り扱うことに壁を感じていました。そんな中で、近隣の有名なボクシングジムのボクサーや運動施設に通う水泳選手など、アスリートが甘酒を目的にお店に通ってくれていることがわかったんです。

アスリートは、遠征などでいつもと違う環境においてもコンディションを整えなければならず、腸内環境を整えることも重要視しています。よくよく考えると、甘酒は必須アミノ酸が含まれていて、持久力向上にも貢献することも研究でわかってきていて*、アスリートにはもってこいのドリンクなんですよね。

加えてスタッフが甘酒を飲みはじめて、健康面での改善が見られました。便通の改善や、冬に流行する風邪やインフルエンザでダウンするスタッフが格段に減るなど、目に見えて効果があったんです。これだと思い、米麹・甘酒の専門店に舵を切りました。

腸を整えウェルビーイングな暮らしをサポート

ーー麹に注目しはじめたのは、この頃からなのでしょうか?

大村:いえ、実は米麹・甘酒の専門店にする以前から、麹には底知れない力があると考えていました。私自身、海外に行く機会が多く、長期滞在するときやハードなスケジュールで動いているときに、味噌汁を飲むと内側から元気が湧いてくるような感覚を体感したことがあります。

オープン当初に取り扱っていた味噌、醤油、お酢などは麹を使った伝統的な調味料です。店名のムロも、醸造蔵にある麹を作る麹室や、食材を保管する室(むろ)が由来で、当初より麹に注目したお店でした。

ーー大村さんは、以前から体感をもって麹の良さを感じていらっしゃったのですね。

大村:甘酒にサポートしてもらって、健康診断の数値を改善した経験もあります。先ほど少し話をしましたが、お店のスタッフもそれぞれが「甘酒があったから助かった」という経験をもっています。

ーーみなさんが、甘酒や麹をどのように取り入れて、効果を感じていらっしゃるのか教えてください。

大村:子どもをもつスタッフは、みそ作りなどもおこなっていての食育の一環としても発酵を取り入れていると聞きます。普段は甘酒を豆乳で割ったり、りんごの甘酒にしたりして日々飲んでいて、体調がピンチなときも甘酒だけは飲めるそうです。

ペットの食事に発酵食を取り入れるスタッフもおり、その方は旅行のときに胃腸を整えるため、甘酒は必ず持っていくと話していましたね。

胃腸の大きな病気を患った家族の食を甘酒が支えたという話も聞きます。病気で食べられるものが減ると、気力も失ってしまうものです。体が辛いときも、甘酒はおいしく飲めるというのは非常に重要です。

ーーそう聞くと、「麹ってすごい」と改めて感じます。

大村:お店では「毎日、麹」を推奨していて、甘酒や調味料から麹を毎日少しでも摂る食生活を提案しています。腸内環境が脳の働きと深く関係していることもあり、腸が整えば身体と心が新陳代謝をするように巡る状態でいられ、ウェルビーイングな暮らしをサポートできると考えています。

ーーお客さまの反応はいかがでしょう?

大村:お客さまは健康、美容に気を遣っていらっしゃる方が多く、アスリートはもちろん、ヨガ講師やお子様をお持ちの方もいらっしゃいます。甘酒の味が苦手で飲めない方も、当社オリジナル甘酒は「これは飲める」とリピートして続けてくださっていますね。出産祝いや快気祝いなどのギフトに選ばれる方もいらっしゃいます。

麹で活動する人を応援する

▲上品な甘みでさらりと飲めるオリジナル商品「A amasake」

ーーオリジナルの甘酒について教えてください。

大村:当社オリジナルの甘酒は「神楽坂甘酒」や「すっきり甘酒」など複数種類ありまして、素材や産地にこだわったものを揃えています。

中でも人気なのは、構想から6年をかけて開発した「A amasake」です。大分県のぶんご銘醸と金沢工業大学の協力を得て開発し、麹菌や米はどういったものがいいのか、飲み口や後味などにもこだわって試行錯誤を繰り返しました。腸内環境を整えるレジスタントプロテインが一般的な甘酒に比べて6倍も入っていて、おいしさと機能性を兼ね備えています。

興味深いのは、多くのアスリートが「これは本当に良い」と喜んでくださっていることです。プロの方は若い頃から食事管理をしていて、体がセンサーのように研ぎ澄まされていることから、体にいいものは味わうだけでわかるというんです。

ーーすごいですね。

大村:球団に所属している野球選手などとも繋がりがあり、皆さんから色んなご意見をいただきます。まだ、麹や甘酒は未研究の部分も多く、可能性はどんどん広がっていくでしょう。科学的な分野だけでなく、海外からの麹への注目も集まっていますし、これからの展開が楽しみですね。

ーー今後、新しい取り組みや新商品の開発のご予定はありますか。

大村:乾燥麹パウダーなど利便性が高く、より暮らしに取り入れやすいものも検討中です。今後も、甘酒のように健康的に活動する人を応援する商品を開発していく予定です。

ーー日本の伝統文化と最新の科学を甘酒で繋いでいく、貴社の取り組みは素晴らしいですね。今後の活動に期待が高まります。ありがとうございました


大村智則(おおむら・とものり)
株式会社コラゾン 代表取締役。大学卒業後、大手電機メーカー、消費財メーカーにて、マーケティングに携わる。2001年に株式会社コラゾンを創立、国内の手作り職人の道具を扱う専門店をスタート。2017年麹室(こうじむろ)から生まれる発酵食品を扱う、「米麹・甘酒専門店 MURO」をオープン。発酵飲料・食品を通じて心と身体の健康をサポートすることをビジョンに活動中。

米麹・甘酒専門店 MURO 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1丁目12番地6号
株式会社コラゾン  コーポレートサイト http://www.corazon.jp/
米麹・甘酒専門店  MURO  ウェブサイト   https://koujiamasake.jp/
暮らしの道具店  のレン  神楽坂  ウェブサイト http://www.noren-net.jp/

撮影 : 栗原美穂