酸味があって個性的な風味のする微炭酸が特徴のコンブチャは、古くからある発酵ドリンクです。近年はノンアルコールや腸活などの文脈で注目を集めています。
創業100年以上の大泉工場が手がける「_SHIP」は、“未来を醸す発酵スパークリングティー”としてコンブチャを広めるべく活動しているブランド。ブルワーの門田 元さんと広報の高橋 まどかさんに、立ち上げの経緯やコンブチャの魅力をお聞きしながら、発酵を通じた社会や自分らしさを考えます。
本記事は前後編でお届けし、後編では「_SHIP」のこれからをうかがいました。
前編はこちら:コンブチャを醸す理由【前編】|様々な壁を乗り越えてきた「_SHIP」の挑戦
お話をうかがったブルワーの門田 元さん(右)広報の高橋 まどかさん(左)
ワークショップを通じてファンを醸していく
ボトルの後ろにあるのは、コンブチャに欠かせないスコビーが大きく育ったもの。
ーーコンブチャの魅力を直接伝えるために、具体的にどんなことをされていますか?
高橋:2021年の10月から月に一度、自宅でコンブチャを作るワークショップをはじめました。西麻布のショップや醸造所のある川口で開催していて、自分の手で作ることの楽しさなどを感じていただいてます。コンブチャのことを知れば、より身近に感じてもらえると思います。
門田:コンブチャは菌株を分けていく文化がありますし、まだ小さなブランドですから会える人には会って伝えている形ですね。菌株を分けるのは、ぬか床を分けるのと似ている気がします。自分が愛でているものを人に分けたり、反対に人からもらう関係は、人間関係にとても親密な繋がりを生み出すと考えます。
その体験がコンブチャでは、目に見えない微生物たちによる発酵の力で導かれているんです。それを追体験できるから、味だけではないコンブチャの魅力や感動も広がっていくのだろうなとも感じています。
ーー実際にお会いして伝えると、グッと奥深く好きになってもらえるイメージがあります。
高橋:活動を通じて、好きになってくれた皆さんの力を借りながら、ファンを作っていくことが必要だと感じています。いいものって誰かに伝えたくなりますよね。私たちのいいものをきちんと口で伝えていく、そして参加した人が周りの方に言いたくなるように取り組んでいきたいです。
門田:たぶん、パッケージやブランディングなど、「これからどう伝えるか」をいくらでもお話できます。一方でマーケティング戦略や効果効能で語ることを抜きにして、「発酵は当たり前のものだと、徐々に認知されていくんだろう」と肌で感じている部分があります。
自身の内部を見つめる菌体験 | 発酵は生きること
ーーそれはどういう部分で感じているのでしょうか?
門田:コンブチャが面白いのは、保存容器の蓋をあけて、空気に触れながら発酵させているところです。私は「私たちの暮らしの中で、その呼吸や空気中に存在するあらゆるものと一緒に発酵させた、こんなに自然なものだから、健やかさにつながるに違いない」と考えています。
ある意味では、「当たり前すぎて発酵という言葉もなくなるのかも」とすら考えます。生きること自体が発酵というか……。
ーー「発酵とは何か?」の話になってきます。自分が生きていることと重ね合わせると、本当は誰にとっても身近なものなのですね。
門田:「ホモ・ファーベル」という言葉があって、それは人間の本質はモノをつくることや、その創造性であるという考え方です。人間はモノをつくる動物であって、現代人が手を動かしてなさすぎると捉えることもできます。
コンブチャをはじめ、納豆、ぬか漬けなどを自分の手で作って、菌のバトンリレーを目の当たりにすることで初めてわかることがあります。少し放っておくと腐って、体で起こってることを疑似体験すると、排泄物のにおいや色が違うことが何か。発酵食品が教えてくれます。
こうした体験をしてないと、いいものも悪いものもわからずに、体内に取り込んでしまうことにも繋がります。
あらゆるドリンクのその先へ | サブタイトルとして寄り添う存在に
ーー「_SHIP」をきっかけにこれから発酵を体感してくださる人が増えると、貴社の「素敵な環境を創造する」が実現していくのでしょうね。
高橋:多くの方に発酵や菌との暮らしを体験をしてもらうためにも、健康や発酵に興味のある方だけでなく、もっと幅広い層にもアプローチしていきます。
例えば、運動をしている方ですね。ワークアウトのあとはもちろん、ヨガ、サウナなど、汗をかいた後に飲むイメージで、自然と持っていきたくなるような存在にしたいです。
2022年7月には、ブランド名も「KOMBUCHA SHIP」から「_SHIP」に変更しました。これをきっかけに、ボトルデザインやサイズも一新し、コンパクトで日常に馴染みやすく、いつでもそばに置いてもらえるようになったんですよ。
門田:固定概念は取りはらって、色々な形で楽しんでもらいたいです。
ーー「_SHIP」にはどんな意味が込められているんですか?
高橋:Craftsmanshipや、Friendshipのように、違う言葉と合わせることで有機的な繋がりを生み出し、さまざまな場所でコミュニティのハブとなる存在にしたいとの想いが込められています。
門田:アンダーバーは語らずもがなです。パソコンのファイル名で”_〇〇”とサブタイトルをつけることがありますよね。「_SHIP」はメインがあってこそのサブテーマ。ラベルも実はパッケージの裏面に見えるデザインにしています。私たちは黒子のポジションで、みなさんが主人公です。だからこそ、ありのままに自分を表現している人へ届けていきたいですね。
ーー今後の展開について教えてください。
門田:今後はPOP UPやイベント出店などで露出を増やすほか、コンブチャを知ってもらうために色々な企業さんとコラボレーションしていく予定です。だれかの背中を借りながら、新しいことにもチャレンジできればと考えています。
コンブチャ自体は海外での認知がありますし、今後もっと広げていけるはずです。さらに、「_SHIP」のコンブチャは「あらゆるドリンクのその先へ」と向かうメッセージを付与できると思います。発酵は菌の働きによって一歩先のものが生まれますし、そこに魅力や未来性を感じます。
ーー今後のご活躍を楽しみにしています!ありがとうございました。
■ 門田 元(かどた はじめ)
株式会社大泉工場 _SHIP KOMBUCHA 醸造担当
1989年生まれ、京都府出身。2009年ファッションの専門学校を卒業後、ファッションブランドでのアシスタント勤務を経て、醗酵技術を使用する本藍染めを習得するために京都の工房に入る。着物を中心に、有名アパレルブランドの染色を行う。2018年から当社KOMBUCHA事業に参画。目に見えない微生物のチカラが生み出す感動体験を、生地ではなく人の心に染めるべく、日々コンブチャを研究中。コンブチャの次にメガネ集めが好き。
■ 高橋 まどか(たかはし まどか)
株式会社大泉工場 広報担当
1998年生まれ、大泉工場が本社を置く埼玉県川口市出身。学生時代には栄養士の資格を取得し、スポーツコミュニティの運営に携わる。食と健康への強い関心と「繋がりを生み出し、ファンを増やす」というPRへの憧れから、2021年に入社。大泉工場ファンを増やす、地元川口を盛り上げるべく日々奮闘中。趣味は、ランニング、トレイルランニング、食べること。
公式サイト:https://oks-kombuchaship.com/
Instagram:https://www.instagram.com/_ship_kombucha/
Twitter:https://twitter.com/_SHIP_kombucha
Facebook:https://www.facebook.com/kombuchaship/
(撮影 : 栗原美穂)