腸内細菌のエサとなって腸内細菌のパワーを引き出してくれる食物繊維。野菜や玄米などの穀類、海藻類に含まれ、「健康に良さそう」「腸活」「血糖値の急上昇を抑える」などのイメージがあるのではないでしょうか。

その通り、食物繊維は便通を改善して腸内環境を整える働きがあり、腸活とは切っても切り離せない栄養素です。そんな食物繊維ですが、実は死亡リスクとも関係していることが研究で明らかにされています。

そこで今回は、食物繊維についてや死亡リスクの関係について解説し、おすすめの食物繊維の摂取方法についてご紹介します。

食物繊維とは?

野菜

食物繊維は炭水化物に分類され、小腸で消化・吸収されずに大腸へと届けられる栄養素です。(*1)この食物繊維は①水溶性食物繊維と②不溶性食物繊維の2種類に分類され、それぞれ特有の健康効果を持ちます。

①水溶性食物繊維

野菜や果物(りんごや柑橘類)、海藻類、ごぼうや菊芋などに含まれる。血糖値の急上昇抑制、腸内細菌による発酵を受けて腸内環境を改善する、など。

②不溶性食物繊維

穀類や根菜類、豆類、甲殻類の殻などに含まれる。腸の動きを刺激して排便を促す、など。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、食物繊維の摂取目標量は成人(18~64歳)の男性が21g以上、女性が18g以上と定められています。(*2)

食物繊維の摂取量が死亡リスクと関係していた

食事会の風景

健康的なカラダ作りに欠かせない栄養素である食物繊維ですが、最近の研究で「死亡リスク」にも関係することが明らかになりました。

海外の論文で、一日の食物繊維摂取量が24〜29gで死亡リスクが低下するという報告がありました。(*3)また、日本人を対象にした研究でも、豆類や野菜類,果物類由来の食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低く、食物繊維の摂取量が少ないと、糖尿病、癌、感染症などさまざまな疾病に影響があることが明らかになっています 。(*4)

食物繊維の働きは多岐に渡りますが、全身への健康効果が合わさって死亡リスクを低下させているのかもしれませんね。

日本人の食物繊維摂取量

和風のお弁当

従来、日本の食文化である和食は野菜や穀類、豆類を使ったものが多く、食物繊維の豊富な食事が食卓に並んでいました。ところが、食の欧米化に伴い、お肉中心の高脂質で野菜もこれまでより少ない食卓へと変化しています。また、多様な働き方によって食事に時間をかけることができず、外食の頻度も増加傾向に。このような時代の変化から、食事から食物繊維を豊富に含む食材を取り入れる頻度が減っています。

実際に、18歳以上の日本人の食物繊維の摂取量の中央値は、1950年には一日20gを超えていましたが、 2015年には 15g以下、2020年には 13.7g/日と減少傾向にあり、5〜10g(バナナに換算すると5〜10本分)も足りていないのが現状です。(*1)

食物繊維を手軽に摂るには?

玄米

付き合いで外食が続く、食事に時間をかけられない…など、さまざまな要因で食物繊維が不足している現代。そんな時でも、手軽に食物繊維を補うためには以下を意識してみましょう。

・主食を選ぶときは茶色いものを選ぶ

白米よりも玄米やもち麦、雑穀入りのもの、白いパンよりも茶色い全粒粉やライ麦のパンを選ぶようにしましょう。精製度の低い穀類には、精製によって失われる食物繊維が残っており、比較的取り入れやすい形で摂取できます。

・乾物を常備し、スープに加える

切り干し大根や干し椎茸、乾燥ひじきや乾燥わかめなど、乾物の状態で保存できるものを家に常備しておくのもおすすめ。お味噌汁やインスタントラーメンなどの汁物に加えて放置しておくだけで食べられて、そこまで手間もかかりません。

・外食ではプラス一品で野菜たっぷりな副菜を

コンビニでご飯を買うときは、野菜を使った惣菜やパウチ商品を、居酒屋などの外食ではきんぴらごぼうやおひたしのような副菜をプラスしてみましょう。お酒のつまみにもGOODです。

まとめ | 日々の食事で食物繊維を意識してみよう!

ほうれん草

食物繊維というと野菜たっぷりのサラダをイメージして、「準備に手間がかかる…」とハードル高く思われる方も多いのではないでしょうか。

しかし、今回紹介したような手軽に取り入れられる方法や、最近だと食物繊維入りのおやつ・ドリンク・サプリメントなども販売されているので、手軽に手に入れることができます。

カラダのさまざまな健康に関与し、また最近の研究で死亡リスクも下げる要因であることがわかった食物繊維。日々の食生活の中に取り入れやすい形でプラスして、ヘルシーなカラダを一緒に作りましょう!

引用

*1:食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット

*2:日本人の食事摂取基準 2020年版

*3:Reynolds, A. et al. (2019) Carbohydrat equality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet. 393:434-445

*4:Katagiri, R. et al. (2020) Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality : the Japan  Public Health Center-based prospective study. Am. J. Clin. Nutr., 1:1027-1035