夏から秋にかけて店頭に並ぶいちじく。乾燥させたドライいちじくは生薬として使われることもあるほど、栄養価の高い果物として知られています。

小ぶりなサイズで、切るだけで手軽に食べられるため「仕事や勉強の合間に、少し小腹を満たしたい」「朝ごはんのデザートに、体に良い果物が食べたい」といったときにいちじくはおすすめの果物です。そこで今回はいちじくに含まれる栄養素と期待できる効果のほか、おすすめの食べ方や注意点についてご紹介します。

いちじくってどんな果物?

いちじくってどんな果物?

いちじくは夏から秋にかけて旬を迎える果物です。特徴的なのは切ったときの断面で、濃い紫色や黄緑色をした果皮に沿って白い果肉があり、中心部に向かって赤くなります。

いちじくは一見すると花をつけずに実がなるように見えますが、実際は中央部分の赤いツブツブした部分が花。花が咲いても外からは見えないため、漢字で「無花果」と書くようになったといわれています。

いちじくに含まれる栄養素と期待できる効果

生のいちじくはほとんどが水分ですが、栄養素もたっぷり含まれています。ここでは美容や女性の健康にうれしい、いちじくの栄養素について見ていきましょう。

ペクチン

ペクチン

いちじくには水溶性食物繊維のペクチンが豊富に含まれているのが特徴です。(*1)いちじくの可食部100gあたり、ペクチンを含む水溶性食物繊維は700mg含まれています。ペクチンは下記のような効果が期待できるといわれています。(*2)

・腸内細菌のエサになる

ペクチンはビフィズス菌や乳酸菌といったプロバイオティクスのエサになるプレバイオティクスです。プレバイオティクスには腸内細菌の多様性を高める有益な菌の活動を促し、増殖させる働きがあります。

プロバイオティクスとプレバイオティクスをいっしょにとることで腸内細菌の多様性が増し、理想的な腸内環境を作ることができます。

・コレステロール値のコントロール

ペクチンはコレステロール値のコントロール・改善を助けます。健康診断でLDL(悪玉)コレステロールの値が悪かった…普段から脂っこいものをよく食べる…という方はいちじくをおやつに取り入れてみると良いでしょう。(*3)

アントシアニン

アントシアニン

アントシアニンは強い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種です。ペクチンと同様にプロバイオティクスといっしょに摂ると、よりその効果が高まり腸内フローラの多様性を促進してくれます。(*4)

カリウム

カリウム

ミネラルの一種であるカリウムはいちじくの可食部100gあたり170mg含まれています。

カリウムの代表的な働きといえば、ナトリウムを排出すること。塩分をとりすぎたときにいちじくを食べることで排出を促進することができます。味の濃い料理を食べた日や、ちょっと足や指が浮腫んでいるな…と感じた時には積極的にカリウムを摂るようにしましょう。

鉄分

鉄分

鉄分はいちじくの可食部100gあたり0.3mg含まれています。

鉄分が不足すると、赤血球の中のヘモグロビンが減り、酸素の供給が不足して「鉄欠乏性貧血」を引き起こします。鉄分を多く含むいちじくはこうした貧血に伴う不調の改善のほか、体の成長や神経発達にも役立ちます。

カルシウム

カルシウム

ミネラルの一種であるカルシウムはいちじくの可食部100gあたり26mg含まれています。

カルシウムのほとんどは骨や歯を形成するのに使われ、一部は血液を凝固させて出血を予防したり、神経を安定させたりします。成長期の子どもの骨の成長や、加齢とともにリスクが高まる骨粗鬆症を予防する上でも欠かせないため、年齢にかかわらず積極的にとりたい栄養素です。

マグネシウム

マグネシウム

マグネシウムはミネラルの一種で、いちじくの可食部100gあたり14mg含まれています。

マグネシウムはカルシウムやリンとともに骨量の減少を抑制する効果が期待できます。また、体温や血圧を正常な状態に保つ働きなども期待できます。

植物性エストロゲン

植物性エストロゲン

いちじくには女性ホルモンのエストロゲンと化学構造が似ている植物性エストロゲンが含まれています。

植物性エストロゲンの有効性・安全性は今なお研究段階であるものの、骨粗しょう症、乳がん、前立腺がんの予防効果が期待されています。(*5)

フィシン

フィシン

フィシンはたんぱく質分解酵素であるプロテアーゼの一種です。たんぱく質を細かく分解し、小腸からの吸収を助けるため、消化吸収が良くなることで胃もたれなどの予防効果が期待できます。

生いちじくとドライいちじくの栄養素の違い

生いちじくも食べやすいですが、いちじくを乾燥させると水分が抜けて栄養素が凝縮され、より効率的に栄養素をとることが可能となります。生いちじくとドライいちじくの栄養素をまとめました。

生いちじくとドライいちじくの主な栄養素比較表

栄養素生いちじく(100gあたり)ドライいちじく(100gあたり)
エネルギー57kcal272kcal
水溶性食物繊維0.7g3.4g
カリウム170mg840mg
鉄分0.3mg1.7mg
カルシウム26mg190mg
マグネシウム14mg67mg
※文部科学省「食品成分データベース

ほとんどの栄養素がドライいちじくになることで凝縮され、少量でも成分を多くとることができるようになります。ただし、糖質やカロリーが生いちじくよりも高くなるため、食べすぎには注意が必要です。

いちじくを食べる際の注意点

いちじくを食べる際の注意点

いちじくに含まれるフィシンは加熱に弱い栄養素であるため、フィシンの持つ胃もたれなどの予防効果を期待したい場合はできるだけ熱を加えずに食べるのがおすすめです。

また、ドライいちじくにすると保存性が高まるため、ストックしておいてヨーグルトに混ぜるなど食べ方も工夫しやすくなりますが、量をとりすぎて糖分過多・カロリー過多にならないよう気をつけましょう。

適量のいちじくは間食やデザートに◎

適量のいちじくは間食やデザートに◎

いちじくは水溶性食物繊維をはじめ、体に良い栄養素がたっぷり含まれる果物。小腹がすいたときなど、おやつ代わりに食べるのがおすすめです。

理想的な腸内環境作りや便通の改善など腸活の手助けをしてくれるほか、特に女性にうれしい効果も期待できるので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

引用

*1:果物、e-ヘルスネット(厚生労働省)

*2:Pascale, N., Gu, F. and Larsen, N. et al. (2022) The Potential of Pectins to Modulate the Human Gut Microbiota Evaluated by In Vitro Fermentation: A Systematic Review. Nutrients., 14(17):3629.

*3:Cerda, J.J., Robbins, F.L., Burgin, C.W. et al. (1988) The effects of grapefruit pectin on patients at risk for coronary heart disease without altering diet or lifestyle. Clin. Cardiol., 11(9), 589-94.

*4:Verediano, T.A., Stampini, Duarte. and Martino, H. et al. (2021) Effects of Anthocyanin on Intestinal Health: A Systematic Review. Nutrients, 13(4):1331.

*5:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A、農林水産省