腸から体を元気にする「腸活」が、テレビに取り上げられる機会が増えています。なかでも「酪酸」や、酪酸を作り出す「酪酸菌」も注目を集めています。

参考:新たな腸活?酪酸菌を増やして腸内環境を改善しよう

しかし、「酪酸」や「酪酸菌」というキーワードは聞いたことがあっても、「普段の食生活でどのように増やせばいいのだろう」と、疑問に思う方も多いでしょう。

そこで本記事では、酪酸・酪酸菌を取り入れる食事方法を紹介します。最後に、おすすめレシピも紹介しているので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

酪酸・酪酸菌とは?

酪酸・酪酸菌とは?

酪酸とは、腸内に届いた食物繊維を分解・発酵することで生成される短鎖脂肪酸の1つです。(*1)短鎖脂肪酸には、酪酸以外にも酢酸やプロピオン酸が含まれます。

腸内で生成された酪酸は、大腸が水分やミネラルを吸収する働きを促進します。大腸の粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーの、60%〜80%が酪酸でまかなわれているため、大腸が正常にはたらくためには、酪酸が欠かせません。

また酪酸菌とは、酪酸を作り出す腸内細菌の総称です。酢酸やプロピオン酸は酪酸菌以外の細菌でも生成できますが、酪酸は酪酸菌だけが作り出します。そのため、大腸を正常に働かせるためには、唯一酪酸を作り出せる酪酸菌の存在が不可欠です。

酪酸の持つ健康効果

酪酸の持つ健康効果

酪酸には、有害な菌の増殖を抑制して、免疫を調節する機能があります。(*2)これは、腸内環境を整えることで、風邪や感染症、花粉症やアレルギーなどから、わたしたちの身を守ってくれているのです。

また酪酸には、肥満を予防する効果も期待できます。(*3)腸内でホルモン分泌を介して、エネルギー消費量を増やすため、ダイエットにも嬉しい成分です。

酪酸菌を腸内で増やすにはどうする?

酪酸菌を腸内で増やすにはどうする?

大腸の正常な働きを促すことで、腸から健康を助ける酪酸。しかし、酪酸を作り出せるのは酪酸菌だけです。腸から健康を目指すには、酪酸菌を腸内で増やす心がけをしましょう。

では、どのようにして腸内で酪酸菌を増やせばいいのでしょうか?

酪酸菌は食材から摂りづらい

酪酸の恩恵を受けるためには、酪酸菌を積極的に摂りたいところですが、実は酪酸菌は酸素が苦手。そのため、空気に触れる食材には、酪酸菌がほとんど生息していません。

また、酪酸菌はぬか漬けの底部分(空気の触れない部分)にいるといわれていますが、そもそもぬか漬けはぬかを洗い流して食べるため取り入れにくい細菌です。

そのため、酪酸菌は食品から摂取するのではなく、腸の中で増やすことを意識しましょう

酪酸菌が好むご飯は”水溶性食物繊維”!

酪酸菌が好むご飯は”水溶性食物繊維”!

酪酸菌を腸内で増やすには、食物繊維を取り入れましょう。食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類がありますが、特に意識して取り入れたいのが、「水溶性食物繊維」です。

水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサとなる成分で、酪酸菌の大好物◎
酪酸菌の大好物である水溶性食物繊維を取り入れて、酪酸菌を腸内で増やしましょう。

【水溶性食物繊維が含まれる食材】

海藻類・野菜・果物・穀類・豆類など

【おすすめの食事の工夫】

  • サラダに海藻類をトッピングする
  • ご飯を炊くときに大麦やもち麦を混ぜる 
  • ヨーグルトに果物をトッピングする 
  • ねばねば系の野菜を取り入れる(山芋やオクラなど)
  • オートミールでスイーツを作る

参考記事:新たな腸活?酪酸菌を増やして腸内環境を改善しよう

おすすめレシピ

おすすめレシピ

最後に、管理栄養士考案の酪酸菌を増やす効果が期待できる、おすすめレシピを3つ紹介します。家族で美味しく腸活を進めるのに、おすすめのレシピです。ぜひおうちで作ってみてください。

①「サーモンのカルパッチョ~もち麦ドレッシング~」

1つ目は、サーモンのカルパッチョです。「切る・まぜる・盛り付ける」の簡単3ステップで、美味しい腸活メニューが出来上がりますよ◎

このメニューではもち麦が使われており、水溶性食物繊維が豊富に含まれているので、腸内環境を良好に保つ効果が期待できます。さらに、サーモンに含まれる「オメガ3脂肪酸」も一緒に摂取して、腸内環境のバランスを整えましょう。

参考記事:【管理栄養士考案】美腸の秋♪旬の食材にもち麦プラスでお手軽腸活「サーモンのカルパッチョ~もち麦ドレッシング~」

②やわらかオートミールハンバーグ

2つ目は、オートミールハンバーグです。オートミールとは、食物繊維が豊富に含まれている穀類の1種。最近では、ダイエット食としても注目されています。

またきのこを具材にした、旨味のあるソースで食物繊維をプラス◎子どもから大人まで、みんなが大好きなハンバーグで腸活を実践しましょう。

参考記事:【管理栄養士考案】やわらかオートミールハンバーグで秋を楽しむ

③秋刀魚と雑穀米の炊き込み飯

3つ目は、秋刀魚と雑穀米の炊き込み飯です。秋刀魚には「オメガ3脂肪酸」が含まれており、腸の免疫を刺激したり血中コレステロール値を下げたりと、健康に嬉しい効果が期待できます。

また秋刀魚には、白いご飯の組み合わせが美味しいですが、腸活を意識するなら、雑穀をプラスして雑穀米で食べましょう。雑穀米には食物繊維が含まれており、便の量を増やしてお通じをよくする働きがあります。

秋刀魚の旬である秋に、おすすめしたい一品です。旬の食材を楽しみながら、腸活を取り入れてみましょう。

参考記事:【管理栄養士考案】秋のイチ押し腸活飯 | 秋刀魚と雑穀米の炊き込み飯

まとめ|酪酸菌を増やす、キーワードは食物繊維!

まとめ|酪酸菌を増やす、キーワードは食物繊維!

酪酸の生成に必要な酪酸菌は、食材から摂取することは難しいものの、日々の食事で食物繊維を取り入れることで確実に増えます。特に酪酸菌の大好物である「水溶性食物繊維」を、意識して取り入れてみてください。

また酪酸菌のほかにも、腸を整えてくれる細菌は数多く存在します。どのような腸内細菌があり、どのような方法で取り入れると効果があるのか、調べてみるのもおすすめです。

参考:腸内細菌の基本を徹底解説*腸活で健康の土台を作ろう

腸活を意識した生活を実践して、腸から健康を目指しましょう。

引用

*1:Schönfeld, P. and Wojtczak, L. (2016) Short- and medium-chain fatty acids in energy metabolism: the cellular perspective. J Lipid Res. 57(6):943-54.

*2:Vital, M., Karch, A. and Pieper, D.H. (2017) Colonic Butyrate-Producing Communities in Humans: an Overview Using Omics Data. mSystems, 2(6):e00130-17. 

*3:Coppola, S., Avagliano, C. and Calignano, A. et al. (2021) The Protective Role of Butyrate against Obesity and Obesity-Related Diseases. Molecules,  26(3):682.