腸内環境は毎日の体の調子だけでなく、運動にも深く関係しているんだとか。
「ランニングや筋トレをしているけど、もっと体づくりの面で効率をアップさせたい…」
「運動時にはプロテインを欠かさず飲んでいるけど、筋肉の付きが悪い…」
という方はぜひ、腸内環境もケアしてみて。
今回は、運動と腸内環境の関係についてお話いたします。
運動と腸内細菌の多様性
運動の効率アップやパフォーマンスの向上は、私たちの「腸内細菌の多様性」と関連があることがわかってきました。
例えば、ある研究では腸内細菌の多様性はタンパク質や私たちがタンパク質を食べることで産生される尿素(副産物)と正の相関があるという結果が報告されています(*1)。
つまり、食事と運動が腸内細菌の多様性を促進する手助けをしてくれるということ。
三大栄養素のひとつであるタンパク質(プロテイン)は、筋トレやスポーツをしている人だけではなくどんな人にとっても重要な栄養素です。タンパク質を含め食事全体のバランスをとりつつ、運動も取り入れることは腸内環境の多様性を高めるために必要不可欠なのです。
参考:腸内細菌の多様性について
たんぱく質の過剰摂取で腸内環境が悪化する?
十分なタンパク質の摂取、運動と腸内細菌の多様性に関連があるとはいえ、食べ過ぎは禁物です。
タンパク質の消化能力は、年齢やその時の体の状態などによって異なります。また、腸内での過剰なタンパク質代謝により腸内細菌がアンモニアをはじめとした体にとってあまりよくない物質を生産する可能性も。
激しい腹痛や腹部膨張感、排便衝動、おならの匂いなどが気になりだした場合は、もしかしたらタンパク質の摂りすぎが原因かもしれません(*2)。
そのため、腸に変化が現れた場合はタンパク質摂取量を見直しつつ、経過を観察しながら調整していくことが大切です。
持久力が欲しい人は短鎖脂肪酸が必要
運動の中でも大事な力のひとつが「持久力」ではないでしょうか。
そんな持久力をつけたい方には、「短鎖脂肪酸」も意識することをおすすめします。
短鎖脂肪酸は大腸において腸内細菌が食物繊維などを発酵・生産するものであり、腸内の粘膜を刺激して腸菅のバリア機能の保護、脂質代謝の改善、免疫機能の調節などの働きを持ちます(*3)。
また、アスリートには短鎖脂肪酸が多いという報告もあり、持久力を要する長時間の運動に短鎖脂肪酸は不可欠でしょう(*4)。
そんな短鎖脂肪酸を増やすにも、腸内細菌の多様性が大切なので、良い食事バランスや運動が必要不可欠です。
運動や筋トレと合わせる食事のポイント
「ジムにいって筋トレをしているのに、なかなか筋肉がつかない…」
という方は、ぜひ体づくりや腸活視点から、食事内容も一緒に見直してみましょう。
三大栄養素のバランスが取れた食事を摂る
運動や体づくりと合わせて腸活に取り組む上で、欠かせないのはやはり食事です。
まず、体づくりのためには1日の食事で三大栄養素のバランスが良いものにしましょう。
ダイエットをかねて糖質を極端に減らす方法もありますが、体を動かす唯一のエネルギー源である糖質をカットしてしまうと筋肉が付きづらく、持久力も落ちてしまいます。
また、先で述べたように運動・筋トレ=タンパク質というイメージもありますが、過剰なタンパク質摂取も避けるようにしましょう。
腸に良い食材を取り入れる
運動の効率を上げるためにも、腸内細菌の多様性を高める腸活が重要です。三大栄養素のバランスを良いものにしつつ、腸活を意識した食事を摂りましょう。
▼腸活におすすめな食事
プロバイオティクス:人にとって有益な作用をもつ生きた微生物。発酵食品などがこれにあたります。味噌、ヨーグルト、漬物(ぬか漬け、キムチ)など。
プレバイオティクス:人に有益な作用をもたらす細菌のエサとなる成分(食物繊維やオリゴ糖など)。果物や野菜、海藻類、穀類、はちみつなど。
また、おすすめはこれらふたつを別々に摂るのではなく、一緒に摂りましょう。
参考:腸内細菌の多様性は日々の食事から!おすすめの最強食材を解説します
運動や筋トレのパフォーマンスを上げたいなら腸活もぜひ
日々の健康を意識して行っている人も多い筋トレや運動。
腸内環境を良くすることで、運動効果の向上を助けてくれます。ぜひ、運動だけでなくバランスの良い食事や腸活を日々の生活に取り入れて、ヘルシーな毎日を過ごしましょう!
引用
*3:北本勝ひこ、春田伸、丸山潤一、後藤慶一、尾花望、齋藤勝晴(2018)食と微生物の辞典、朝倉書店
*4:Barton, W., Penney, N.C., Cronin, O. and Garcia-Perez, I. et al. (2018) The microbiome of professional athletes differs from that of more sedentary subjects in composition and particularly at the functional metabolic level. Gut. 67(4):625-633.