最近メディアやニュース、雑誌で「腸活が体に良い」ということを頻繁に言われるようになりました。腸活が体に良い影響を与えてくれることは確かで、すべての人に取り組んでほしい体調管理法のひとつであると言えるでしょう。
そんな腸内環境が乱れてしまうと、体にどのような影響を与えるか知っていますか?
腸内環境の乱れは「ディスバイオシス(dysbiosis)」と呼ばれます。そこで、ディスバイオシスの症状や原因について解説します。
腸内環境の乱れと不調
ディスバイオシスで招く不調①便秘
腸内環境が何らかの乱れることでどのような症状を招くかをご紹介できたらと思います。もっとも顕著なものといえば、お腹をくだしてしまうことと、お通じが悪くなってしまうことが挙げられます。このメカニズムについては、以下のようなことが考えられます(*1)。
①水分を吸収されやすいものから、水分が腸管内啌に移動する
②腸に炎症が起こり、多量の滲出液(組織と組織の間にある液)が腸管内啌に排出される
③消化管粘膜の分泌異常
④腸管運動の異常
大腸には1000種類、100兆個以上の腸内細菌が生息していること、またうんちのおよそ半分が腸内細菌でできているので、腸内環境が乱れるとダイレクトに便に影響します。
ディスバイオシスで招く不調②肌荒れ
もうひとつ、腸内環境が乱れることで起きる身近な症状をご紹介します。それは、肌荒れ。腸内環境が乱れると、肌荒れが起こるといわれています(*2)。
具体的には、腸内の悪い細菌が産出したフェノール類が血液を介して皮膚に蓄積し、皮膚細胞の分化に変調をもたらすため。これによってくすみや乾燥を引き起こすといわれています。
また、アレルギーとの関連性も指摘されています。
北ヨーロッパの研究所では、アレルギーを抱えるお子さんと、そうでないお子さんの腸内細菌を比較したところ、アレルギーを抱える子どもの腸内にはLactobacillus(ラクトバシラス)が少なかったことがわかりました(*3)。
Lactobacillusは代表的な乳酸菌で、発酵食品や、人や動物の口腔や腸管などに常在していて、健康に関わる菌として注目されているものです。
ディスバイオシスで招く不調③自律神経の乱れ
そして最後に、便やお肌のコンディションと違い、自分でも自覚しづらい症状をご紹介します。それは、自律神経の乱れ。
短鎖脂肪酸はセロトニンをつくり血液中に放出するクロム親和性細胞を促すことが明らかになっていますが、腸内環境が乱れて、彼らが分泌したセロトニンが副交感神経に属する迷走神経末端レセプターと結合し、延髄へ情報を伝達することで自律神経系に影響を与えることがわかっているとも言われています(*4)。
また、腸内細菌が脳機能にまで影響を与えるメカニズムが明らかになりつつあり、パーキンソン病などの脳疾患、うつ病などの神経・精神疾患においても、腸内環境の研究が欠かせなくなりつつあるといいます(*5)。
まとめ|腸の不調を起こさないために日常生活を振り返ろう
腸内環境と脳の関係によって起こる症状は、便やお肌のコンディションと違って自覚しづらいからこそ、腸内環境を乱さない生活を習慣化しましょう。
そのためには、まずは日々の生活習慣を見直してみることが必要です。食事のバランスや運動、睡眠などを見直してみて、改善できるところから少しずつ始めてみましょうね。
引用
*1:石藏文信(2013)ストレスは腸にくる、財団法人パブリックヘルスリサーチセンターストレス科学研究所編、ストレスアンドヘルスケア
*2:飯塚量子(2011)腸内細菌が皮膚生理に及ぼす影響、腸内細菌学雑誌、25(2)、105-106
*5:須藤信行,脳の機能に関する腸内フローラと「脳腸相関」HEALTHIST242,2017年,pp2-5
(記事協力:土屋友美、管理栄養士・健康運動指導士)