・2023年6月7日(水)開催
・タイトル:「忙しい日常を”笑顔”で乗り切るために」スポーツメンタルアドバイザー木村好珠さんが伝授する体調管理の極意
・登壇:木村好珠氏(産業医・スポーツメンタルアドバイザー)
・モデレータ:鈴木啓太(AuB株式会社 代表取締役)

仕事、プライベート、家庭の時間。あらゆる場所で求められるのが、メンタル(思考)を整えることではないでしょうか。自分の心に寄り添って、日々を過ごしていますか?これまでgoodcho live nowでは、「ご機嫌」をキーワードにした体調管理方法について、さまざまなゲストを招いてお話して参りました。

そして、今回はそのご機嫌であるために欠かせないメンタルについて、産業医・スポーツメンタルアドバイザー木村好珠さんをゲストにお迎えしてウェビナーを開催しました。その様子を一部抜粋してお届けいたします。(当日の様子は参加者限定で全ての様子をアーカイブ配信しております。)

自分の感情を理解することから始めるメンタルの整理

木村先生、今日はよろしくお願いいたします!先生には、以前私のYouTubeチャンネルに出ていただきましたね。

よろしくお願します!私の周りでも、この動画はすごい反響がありましたね。

あまりメンタルについて語る動画って、伸びない傾向にあるんですけど、この動画は「観ました!」っていう嬉しいお声をたくさん聞きましたね。

そうなんですね!よかったです。

でもあの動画では、さわり部分だけになってしまって真髄(本質的なところ)をまだ話せていなかったなと感じていて。

そうですね。

なので今日はもっと深い部分についてお話できればと思っています。

まず、今日のテーマは「「忙しい日常を”笑顔”で乗り切るために」スポーツメンタルアドバイザー木村好珠さんが伝授する体調管理の極意」なのですが、その前に……

メンタルという言葉の定義が、一般の人からしてみると曖昧なところがあると思うのですが、今回の場合はどうでしょう?

海外だと「メンタル=思考」ですね。自分の状況を判断して考えて行動すること=思考で、その判断が冷静にできればメンタルは整っていると言われます。

なるほど。

一方で、日本だと他人の状況判断も求められるので、自分のまず感情に向き合いましょうということで、思考と感情の組み合わせが大切という風に言っています。

確かに、僕自身も他人の状況判断もしながら自分の思考をする場面が多いです。ぜひ、そんなメンタルについて、今日はたくさんお話できればと思っています。よろしくお願いします!

よろしくお願いします!

テーマ①アスリートの事例から学ぶ常にトップパフォーマンスを出し続ける選手の共通項とは?

共通項……あるのかなと思いつつ。先生の中で感じる、特にメンタル・思考について、トップパフォーマンスを出し続ける選手の共通項はありますか?

成長を楽しめる選手!

おお!成長を楽しめる

そう、成長を楽しむことが一番。あとは、自分のスポーツのことを常に考えるということも大切だと思います。

サッカーもピッチの中の90分で完結しないですよね。食事、日常生活、みんなで練習する以外の時間での、体との向き合い方も大切です。

なので、スポーツ(自分の取り組み)に対してどれだけ真剣に向き合っていられるかということも共通項だと思います。

なるほど。

やっぱり、楽しむということは、成長する上で一番の近道だと思うんです。

楽しいと思ったら、やる気も出るし、意欲が湧くじゃないですか。

今の日本人って、意欲がない人が多いなと思っていて。結局、与えられたことをやるのは得意だけど、自分から意欲的に何かをすることができにくい社会だと思うんです。

社会の構図として、ですか?

はい。

自分で、これを目標にしよう!と決めた時、そのためにはどうすればいいんだろうと考えて、試行錯誤して、成長できる過程を楽しめることっていうのは、常に自分の中での再現がないんですよね。

それはどうしてですか?

なぜかというと、結果が出るまでには時間がかかってしまうから。

自分の中で、「もっと上がある」「目標がどんどん立てられる」と考えることが大事で、結果だけを見ちゃうと、時間がかかるし見えにくい。

結果だけでなく、成長の過程を自分で見れる人じゃないと、途中で辛くなったり頑張れていないな〜……と、感じてしまう。100か0かの思考になってしまうんですよね。

うんうん。

例え0.1kmであっても、成長できたと思えて、楽しむことができれば、自信もつきますし、もっと成長しよう・頑張ろうと思える。さらに頑張るためにはどうする?と、思考もできますよね。感情と思考をうまく使える、といいますか。

なるほど。

なので私は、自分でどんどん目標を立てられて、それに対する楽しみも生まれて、いいサイクルができてくる人が、トップパフォーマンスを出し続けられると思うんです。

これはまさに本質ですね。

あと、僕は目的をどう設定するかも大切だと思うんです。あくまでもこれは持論ですが、目的は答えがないものを設定すべき。

そして、目標=理想に近づくための手段。そして、手段(目標)にはいろんなものがありますよね?目標は明確なものにして、成長するための方法として取り組む。

楽しむとか幸せとかって、その人にしか答えがないものなので、成長しながらその過程を楽しみ続けられたら、そりゃ最高ですよね。

でも人って手段と目的が逆になる時があるじゃないですか。これが人と比べたり、結果だけにフォーカスするようになると起こる気がします。

確かに。人と比べるといえば……

私は成長を楽しめるタイプなんですけど、実は自分の元々の評価が低いからだと思っているんですよ。「私なんて〜」で生きていたりします。

え、意外です。それって、自分の理想と現実のギャップから生まれるものなんですか?

理想は高いと思います。ただ、自分が「できない」ことを認められているのかな、と。

足りてない自分を認められているんですね。

意外と、みなさん自己評価が高いんですよね。

なるほどなるほど!

あと、やっぱり「これができない!」って認めることって、結構大変。そして、「どうせ」ってなっちゃうことが多い。そこが、私にはないんだと思います。あんまり「どうせ」って思わない。

「どうせ」というよりは、「今はまだ」みたいな感じですね。

そうですね。今はまだできないけど、できるようになりたいなって思う。なので、親友に褒められる時は、自己評価が低いのに、できるようになろう!ともがくのがすごいって言われますね(笑)

ぼく、こういう話を聞くと安心するんですよ。

というのも、僕もそうでして。

え、そうなんですか!

うん。理想の自分と、今の自分にはもちろん差がある。これが人生だと思うんですよ。できないことをできるようにしていくこと。

あと僕ちょっと変なことを言いますが…

え、なんでしょう。

時間は未来から過去に流れていると思うんです。要するに、過去・現在・未来に流れているのではなく、未来から時間はやってきているんだと思っていて。

なぜかというと、例えば、今日カレーが食べたい!と思った時、今の自分は材料を買いに行くわけですよね。それって、未来の自分から今の自分に聞かれていること。

それを踏まえると、理想の自分を今の自分と仮定して考えた方がいい。それが思考だと思っています。

なるほど。

将来の自分だったら、こんなハードルを乗り越えられるでしょうと。それが楽しみにもなりますよね。そんな勘違いから、僕はサッカー選手になったんですけど(笑)

(笑)
確かに、できると思うからやるんですよね。

そうそう。

私、今の自分に自信があるわけじゃないですけど、努力することには自信があるんですよね。

いいですね。それはわかりやすい言葉で言うと「信念」ですよね。方程式のような、誰かが証明できることって信じるって言わないじゃないですか。一方で僕らが今話していることは「信じる」ことで、それって自分にしかわからないことですよね。だから僕は、なんでもやりたいなって思うんです。

うーん、なるほど。なんで将来の自分に「できる」という自信があるか、わからないですがありますね。根拠がないですが……!

テーマ②「忙しいビジネスパーソンはいますぐこれをやるべき」産業医として、今の時代に最適なコンディション管理方法とは?

今の時代に最適なコンディション管理方法のようなもの、あったら教えていただきたいのですが、どうでしょう?

まず、根本は食事と睡眠。どの時代も変わらずに言います。良い食事を摂るもそうですし、食事の時は携帯を見ない。携帯はあまり良くないと思っているので(もちろん使いますが)食事を食べている時くらいは見ないでほしいですね。

うん。同感。

何を食べるか、も大切。

コンビニ食でもいいと思いますが、お惣菜(野菜)などもしっかり混ぜて、食事の気をつかいましょう。

あとは、腸内細菌については昔から考えています。納豆と豆腐は毎日食べてますよ。

いいですね。腸内環境を整える食事。

うつ病の人とそうでない人の食事を比較すると、腸内細菌叢って全然違うんですよね(*)。腸はセロトニン(幸せホルモン)が生まれる場所でもあるので、腸活は意識するようにしています。あと、間食はナッツを持ち歩いていますね。

* Winter, G., Hart, R. A., Charlesworth, R. P. G., & Sharpley, C. F. (2018). Gut microbiome and depression: What we know and what we need to know. Reviews in the Neurosciences, 29(6), 629–643.

なるほど。さすがです!

あとは、睡眠。

睡眠も、ちゃんと室内環境を整えて、7時間前後寝るようにしましょうと伝えています。あとは、忙しい時ほど寝ましょう、と。

おお、忙しい時ほど寝ましょう

忙しい時って、必ず睡眠時間から削っちゃうんです。そうじゃなくて、寝ましょうということですね。

僕もアスリートだった時は、食事と睡眠、当たり前に気を遣っていたんですけど、引退後普通に生活してると、そこまで疲れないんですよね。だからある時、睡眠時間を削ったことがあって。

どうでしたか?

もう思考がぐちゃぐちゃ。いい時と悪い時の波が激しくなりましたし、自律神経もおかしくなっちゃう。

そう、メンタルにも睡眠って絶対大切なので、寝てほしいなと思います。

ただ、ビジネスパーソンだと、睡眠を削ってもやりたいことがたくさんあるじゃないですか。仮に睡眠時間が短かったとして、その中でできることって何かありますか?

まず20分お昼寝してください。NASAの研究でも、昼間の20分の睡眠が午後のパフォーマンスを上げると報告しています。

あと、朝はセロトニンの材料であるトリプトファン(乳製品やバナナなど)を摂りましょうって伝えますね。それとデジタルデトックス。

いや〜僕それすごい大事だと思っています。スマホをベッドサイドに持っていくな。

わかる、見ちゃいますもん。他の部屋に置く、歩かないと届かない位置に置く。
勉強している間に①机の上に置いておく、②ポケットに入れておく、で分けてみると、そこまで集中度が変わらないらしいんです。なので、遠くに置いて、集中できるようにする。

わかる、僕もスマホが机の上にあると集中できないかも。

つまり、先ほど食事・睡眠が大切とおっしゃられていましたが、こういうシーンの時は自分の手の届かないところにスマホを置くな、ということですよね。

はい、その通りです。

いや、これ結構難易度高くなっている気がしますが、これをやった方がより生産性が上がる可能性が高いですよね。

高いですね。あと、これは職業によると思うんですけど、私は大体携帯の通知をオフにしています

おお!通知オフ!じゃあ、自分が見るタイミングの時にだけ、見るって感じですね。

左右されたくないんですよね。置いて、3分後とかに通知が鳴るとイライラしちゃう。また鳴った……と、何度も繰り返すのが嫌なんです。違うことに集中したいのに、思考が途切れてしまうのが苦手です。だから、基本通知オフです。

もしかしたら、結果を出す人はこうなのかもしれないですね。集中をどうやって作るのか。

外からのアクションにリアクションしてしまうってことは、集中を続ける上では良くないですもんね。

だから、アスリートもそうですが、自分のペースに持っていったもの勝ちじゃないですか。そう考えた時、導き出された方法が、「通知オフ」です。

確かに、ちょっと騙されたと思ってやってみてほしいですね。だってかなりの時間を持って行かれていますもんね……。

以前スタジアムに携帯を忘れたことがあったんですが、駅のホームで気づくぐらい、携帯を見てないんですよね。結局あったんですけど、私の手元に届いたのが2日後。めちゃくちゃ最高でした。

え、最高だったんですか!

大体のものはPCやiPadで見れるんですけど、LINEは見れない状態。わざわざPCを出すのもWi-Fiが繋がっているところじゃないですか。だから、電子機器を触る機会がすごく少なくて、めちゃくちゃよかったです。

なるほど。(僕も集中力を高める方法として、不必要な通知をオフにしよう……!)

テーマ③コンディション管理のプロフェッショナルがプライベートで実践する体調管理マイルール

先生は結構激務だと思いますが、何か体調管理のマイルールはありますか?

いくつかあるんですが、そもそも私は自分にめちゃくちゃ甘いです。できないことはできないって思っちゃう。人間の時間は限られていますよね。

なので、例えば選手のメンタルを診ることには時間をかけたい。でも、学生時代にはできていた料理を今はやれてないんですよね。でもそれはいいやって割り切っています。外食が続いても、AuBの商品などを飲んでいたら、OK!っていう感じで。

サプリメント飲んだり、人の力を借りたり…….自分がやりたいことができるのであればいいっていう感じです。ここはいいやって思うところには、異常に自分に甘いです。

なるほど。まずはありがとうございます。なんだか、マネージメント思考ですね。他にはありますか?

朝起きた時に、自分の体調が何%だろうって点数をつけます。

おお!点数をつける。仮に95%だったとしたら、どんな感じなんですか?

95%だったら、めちゃくちゃ勉強します。パーセンテージによって自分がどのくらいできるかを考えるんです。世の中の人ってルーティンで毎日同じように決めているけど、自分のパーセンテージによってパフォーマンスが変わると思うんです。

95%の日は1時間でできることも、30%の時は3〜4時間かかってしまう。だから、自分で、自分がどういう状態だろうとしっかり見てあげる。

うーん、なるほど。

例えばこれから梅雨の時期ですよね。そういう時、自分が40〜50%くらいかもしれない。それだったら今日は最低限これだけはやろうと決めて、それが出来た時や一歩前に進めた時は自分を褒められます。最低限の基準を決めるために、朝自分と向き合います。

それ、僕もやろう。というか、僕もそうかもしれない。今日調子悪いかな?って思ったら、あんまり無理しないけど、調子良いなって思ったらガンガン行きます。点数つけるって、良いですね。

はい、おすすめです。そうすると過剰な無理をしなくなるんですよね。元々予定って入ってるじゃないですか。その空いた時間に例えば独学するとする。調子がいい時はできるけど、調子悪い時に無理やりやっちゃうと、本来やるべきことにも支障が出ちゃうんですよね。それは絶対もったいないから、休める時は休もうと決めます。

なるほど。これは別に精神科医が伝える崇高なことではなく、今からすぐに実践できることだと思います。点数つけてみる、絶対僕もやります。

はい!ぜひやってみてください!

いや〜勉強になりました、ありがとうございました!

ありがとうございました!

編集後記

普段、実は意外と自分のメンタルと向き合う時間を取れていないことが多いと思います。私自身もそうでして、どうしても仕事を始めると優先順位が変わってしまいます。しかしながら、やはりメンタルを整えることはある意味一番最初にやるべきスキルだと、今回のお話を聞いて感じました。成長の過程を楽しむ、というところにもハッとしまして、これまでの自身を振り返ると、楽しむことが欠けていたように感じます。まずは1ミリでも成長できた自分を褒める、そんな自分に向き合って、日々を楽しんでいこうと思います。

セミナー最後のQ&Aタイムでは、「前向きになれる方法はありますか?」など、木村好珠さんだからこそ聞けるメンタルに関するご質問をたくさんいただきました。

今回ご登壇いただいた木村好珠さんの書かれた本をご紹介します。

「メンタル弱いままたのしく生きてく」サンマーク出版 (2022/12/19)
▶︎https://amzn.asia/d/4CzzTKY

ぜひ、気になる方はご覧ください。

木村さんの言われていた、デジタルデトックス、自分の体調の数値化は、これからの生活で習慣化させていきたいと思いました。皆さんもぜひ、実践してみてください!