極端な食事制限やハードな運動で体重を減らし、体型を変えようとするダイエットは体への負担が大きい上にリバウンドしがち。そうすると、筋肉量が落ちて代謝も低下するので、「ダイエットをやめるとすぐ太る」と感じる人も多いのではないでしょうか?

そこで注目されているのが、腸内環境を整えることでダイエット効果を引き出し、太りにくい体をつくる「腸活」です。そこで、腸活とダイエットの関係や、具体的な腸活の取り組み方をご紹介します。

腸活とは?

腸活とは?

腸活とは、バランスのとれた食事や適度な運動によって腸内環境を整え、良好な状態を維持すること。

従来、腸は食べ物の分解と消化吸収をする臓器として認識されてきました。しかし、最近のさまざまな研究によって、腸内環境と健康、美容、ダイエットが深い関係にあることがわかってきています。

腸の主な働き

腸の主な働き

腸の主な働きについて整理しておきましょう。腸の主な働きとしては、次の4つが挙げられます。

  •  食べた物の消化・吸収
  •  水分吸収・排便
  •  免疫機能を高める
  •  栄養素の産生

腸の働きは多岐にわたっており、健やかな生活を送るにあたって重要な役割を果たします。腸活で腸内細菌のバランスを整え、良い腸内環境を作ることができれば、健康や美容にも良い効果をもたらすでしょう!

良い腸内環境とはどういうもの?

良い腸内環境とはどういうもの?

私たちの腸には、約1,000種類、100兆個もの腸内細菌が生息する「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」、またの名を「腸内フローラ」が形成されています。

一般的に、腸内フローラは、ビフィズス菌、乳酸菌など体に良い影響を与える「善玉菌」、大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌など体に良くない物質を作り出す「悪玉菌」、善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さない「日和見菌」の3つから形成されているといわれています*。

そのため、腸活で腸内の環境を良くするには、悪玉菌を減らして善玉菌を増やすこと、日和見菌を善玉菌の味方につけることが重要だとされてきました(*1)

しかし、近年では、

善玉菌、悪玉菌、日和見菌といった分類をせず、腸内フローラを形成する菌が多様であることを重視する

という考え方が主流になりつつあります。

なぜなら、悪玉菌と呼ばれる菌も体にとっては必要不可欠で、従来は悪玉菌の代表格だった大腸菌でさえ、種類によっては腸にとって有益なことがわかってきたから。

腸内フローラには多様な細菌が関わっており、一つひとつが複雑に絡み合い、絶妙なバランスをとりながら体への作用を調整しています。研究が進んだ今も、どの菌の何がどのように影響するか、明らかになっていないことが少なくありません。

そのため、腸活においても、いわゆる善玉菌だけに注目するのではなく、多様な菌がそれぞれの特性を発揮しながら共存している状態を目指すことが大切です。

腸活でダイエットできるのは「短鎖脂肪酸」のおかげ

良い腸内環境をつくる腸活を行うことで、腸内細菌の多様性が上がり、良い腸内環境をつくり出すことができます。すると、腸内細菌がオリゴ糖や食物繊維といったエサ(プレバイオティクス)を食べて生み出す「短鎖脂肪酸」が増加するのです。

ダイエットのカギになるのが、この短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸には免疫調整や、カルシウムやマグネシウム、鉄などの吸収促進、大腸がんの抑制といった働きをするほか、脂肪の蓄積やエネルギー代謝をコントロールして肥満になりにくくする役目も果たしています。(*2)

ダイエットに役立つ短鎖脂肪酸の働きは、大きく下記の2つがあります。

食欲を抑制する

食欲を抑制する

短鎖脂肪酸が腸管内分泌細胞にあるGPR41という受容体が結びつくと、食欲を抑制するホルモンの分泌を促すことがわかっています。(*3)

脂肪の吸収を抑える

脂肪の吸収を抑える

短鎖脂肪酸が白色脂肪細胞にあるGPR43と呼ばれる受容体を介して、インスリンシグナルを抑制し、脂肪の蓄積を抑えることがわかっています。(*4)

実際に、やせている人の腸内フローラを調べると、短鎖脂肪酸を産生する良い菌が多い傾向があります。短鎖脂肪酸を産生するのは、いわゆる「やせ菌」と呼ばれる腸内細菌。ビフィズス菌や酪酸菌などが該当します。

腸活ダイエットの実践方法

腸活でダイエット効果のある短鎖脂肪酸を生み出すには、短鎖脂肪酸を作る菌を食事からとり、さらにそのエサとなる食品成分をとることが重要です。加えて、食事のとり方や睡眠の質などを意識して、さらにダイエット効果を高めましょう。

ここからは、具体的な腸活の方法を5つご紹介します。

①プロバイオティクスとプレバイオティクスをいっしょにとる

①プロバイオティクスとプレバイオティクスをいっしょにとる

食事では、有用な生きた菌である便秘の解消などに有用である「プロバイオティクス」と、腸内に元々存在する良い菌のエサになって菌を増やす作用がある「プレバイオティクス」をいっしょにとるようにしましょう

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プロバイオティクス:ヨーグルト、ぬか漬け、キムチなどビフィズス菌や乳酸菌を含む食べ物

プレバイオティクス:芋、豆、海藻、きのこなど、オリゴ糖や食物繊維を多く含む食べ物

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プロバイオティクスは生きて腸に届きますが、長期的に棲みつくことはないので、毎日継続してとることが大切です。

また、プレバイオティクスの代表的な成分である食物繊維には、消化・吸収をゆるやかにすることで肥満の原因になる食後の急激な血糖値上昇を抑える効果があります。

一日の最初にとる食事(ファーストミール)で食物繊維を多く摂ると、次の食事(セカンドミール)の後の血糖値上昇にも影響を及ぼす「セカンドミール効果」があることから、野菜や豆類は朝食に取り入れるのがおすすめです

②腸のぜん動運動を促す運動をする

②腸のぜん動運動を促す運動をする

おなかの調子を良好に保つために、適度な運動で腸のぜん動運動を促すことも大切です。激しい運動をする必要はありません。

以下のような運動が効果的です。

  • ウォーキングなどの有酸素運動
  • おなか周りを緩めるストレッチ
  • おなかを膨らませたりへこませたりしてインナーマッスルを鍛える
  • 体幹トレーニング など。

③良い睡眠をとる

③良い睡眠をとる

睡眠の質と腸内細菌には密接な関係があり、不規則な睡眠や短時間睡眠は腸内細菌に悪影響を及ぼします。湯船につかってゆっくり体を温めると、リラックス効果でスムーズな入眠につながります。

睡眠中に冷えて安眠が途切れるのを防ぐため、腹巻きをして寝るのも◎。(*5)

④腸にダメージを与えないようにする

④腸にダメージを与えないようにする

健康的なダイエットを考えたとき、思い浮かぶのがタンパク質源である肉やプロテイン飲料を摂取することではないでしょうか。

確かに、タンパク質は体づくりに欠かせませんが、摂りすぎは摂取カロリーが増える上、腸にダメージを与える可能性があります。プロテイン飲料は飲むタイミングと摂取目安量に注意し、食事から摂るタンパク質はお肉だけに偏らないようバランス良くとりましょう。

⑤よく噛んで食べ、腹八分目でやめる

⑤よく噛んで食べ、腹八分目でやめる

よく噛んで食べると、タンパク質や炭水化物が小腸できちんと吸収されて、有益な腸内細菌のエサである食物繊維だけが大腸に届きます。その結果として、良い菌を増やすことにつながるのです。

よく「一口30回咀嚼するといい」といわれますが、咀嚼して口の中で食べ物がドロドロになったタイミングで飲み込むことを意識するといいでしょう。

たくさん噛むことで満腹中枢が刺激されて食欲が満たされ、少ない量でも満足できるので、腸の健康のために理想とされる「腹八分目」も実現しやすくなります。

まずは2週間!腸活でダイエットや身体作りを楽しもう

腸活を始めると、だいたい2週間程で便やおならの悪臭が消えたり、便通が良くなったりといった変化が見えてきます。まずは2週間、生活習慣の改善に取り組み、腸活でダイエットを成功させましょう。

引用

*1:乳酸菌の健康機能

*2:プレバイオティクスか ら大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果

*3:あなたのその食欲、腸内細菌が影響しているかも?

*4:The SCFA Receptor GPR43 and Energy Metabolism

*5:睡眠と腸内細菌叢