監修者
広瀬歩美 | 管理栄養士、博士(医学)

千葉県出身。お茶の水女子大学卒業後管理栄養士国家試験合格。生活習慣病専門クリニック勤務を経て、2013年に筑波大学大学院にて博士(医学)を取得。私立大学にて「子どもの食と栄養」等の講義を担当する中で、自身も独学で保育士資格を取得した。論文や学会で成果発表する傍ら、市民講座や小中学校での講演会も多数行った。現在はフリーランスとして、商品開発や食堂メニューの監修、オンライン栄養指導などを行っている。

「子どもが元気に成長するために食事はどう工夫すべき?」

「うちの子は牛乳があまり好きではないので、カルシウム不足が気になる!」

「あまり外で遊ばせてあげられないけど、大丈夫かしら…」

子どもの健康を願うパパ・ママは、普段の食事や生活習慣がこれで合っているのか、不安になる人も多いのではないでしょうか。元気に成長することや、見た目もちゃんと大きくなる(身長が伸びるなど)のかどうか、ついつい気になってしまいますよね。

例えば、身長は遺伝的要因が大きいですが、普段の食生活も大切です。さらに、心と体の健やかな成長にとって、食事からの栄養は欠かせません。

特に、骨の成長に関わる「カルシウム」「ビタミンD」は、子ども全体で不足しがちなので意識して摂りたい栄養素です。

そうはいっても、忙しい毎日の中でガラッと食生活を変えるのはなかなか難しいところ。そこで今回は、ちょっとした工夫でカルシウムやビタミンDを手軽に摂れる方法をご紹介します。

強い骨を作ろう!不足しがちなカルシウムとビタミンDを摂取するポイント

身長が伸びる(体が大きくなる)ためには、骨の成長が必要不可欠です。そんな骨の成長には、カルシウムだけでなくたんぱく質、リン、ビタミンD、ビタミンKなど多くの栄養素が関わっています。

その中でも特に不足しやすいのが、上述した通り「カルシウム」と「ビタミンD」です。

カルシウム:骨の主成分になる

カルシウム:骨の主成分になる

カルシウムは、骨の主成分になるとても大切な栄養素です。

しかし現在、子どもたちのカルシウム摂取量は、「日本人の食事摂取基準」で推奨されている量に足りておらず、大人も不足しているといわれています。

表:カルシウム推奨量と実際の摂取量

推奨されている量(*1)実際に摂っている量(*2)
男児1-2歳: 450mg3-7歳: 600mg1-6歳: 446mg
女児1-2歳: 400mg3-7歳: 550mg1-6歳: 391mg

骨の健康や身長の伸びに欠かせないカルシウムを今までよりもちょっと多く取り入れる工夫としては、次の方法がおすすめです。

ご飯に小魚を混ぜる

ご飯に小魚を混ぜる

朝のおにぎりや夜のご飯に、しらすや桜えびなど骨ごと食べられる魚を混ぜてみましょう。たとえばしらす干しなら、大さじ1杯で約15mgのカルシウムを摂取できます。しらすは昆布と、桜えびはチーズなどと混ぜても美味しいですよ。

食パンにはジャムよりチーズ

食パンにはジャムよりチーズ

スライスチーズ1枚には、約100mgのカルシウムが含まれています。食パンにのせて焼く、ハムとサンドイッチにするなどがおすすめ。すでに甘いパンに慣れているお子さんなら、1/4サイズに切って少しずつ試してみてくださいね。

ジュースをココアに変える

ジュースをココアに変える

カルシウムの摂取量を増やすのにもっとも手っ取り早い方法は、乳製品を増やすこと。今よりコップ1杯分(子ども用100ml)牛乳を増やすだけで、約110mgのカルシウムを摂取できます。普段のジュースを牛乳で使ったココアに変えてみてはいかがでしょうか。

ビタミンD

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進し、骨の成長を助けます。食事以外では日光にあたることでも作られますが、昔より外遊びが減っていることもあり、不足しがちな栄養素です。

3,624人の日本人4歳児の血中ビタミンD濃度と、2歳および4歳時点の身長と体重を比較した研究(*3)では、全体の約4人に1人がビタミンD不足(血中ビタミンD濃度が20ng/ml未満)、100人に1人がビタミンD欠乏(血中ビタミンD濃度が10ng/ml未満)でした。

さらに、ビタミンD不足のない子どもが年間約8cm身長が伸びていたのに対し、ビタミンD欠乏の子の身長の伸びは約7.4cmに満たなかったそうです。

ビタミンDの欠乏は、弱い骨ができる「くる病(骨軟化症)」の原因にもなるので、食事からもしっかりとりたいですね。

ビタミンDを多く含むのは、きのこや魚、卵。摂取量を増やすポイントをお伝えします!

きのこを天日干しにする

きのこを天日干しにする

お天気がいい日に、ザルにのせたきのこをベランダで1〜3日間干しましょう。たったそれだけで、ビタミンDがアップします。干したきのこは、そのままスープの具にすれば、出汁もとれるので一石二鳥です。

骨が取られた魚を選ぶ

骨が取られた魚を選ぶ

できれば週に何日かは魚も食べたいところですが、価格面や、骨や皮などの生ごみが増えるのでなかなか難しいという方も多いはず。ですが、魚の中でも特にビタミンDが多いのは、比較的安価な鮭(シャケ)なのです。また最近では、鮭やサバ、カレイなど、骨がすでに取られた切り身も売られています。

少しずつ使えるように小さなサイズで冷凍されているものや、すでに味つけされていてレンジでチンするだけで食べられるものもありますので、ぜひ試してみてくださいね。カルシウムが豊富なしらす干しや桜エビもおすすめですよ!

卵は黄身にビタミンDを含む

卵は黄身にビタミンDを含む

ゆで卵なら白身を好む子が多いですが、ビタミンDを含むのは黄身です。卵焼きを作るのが面倒くさい方は、レンジで作るスクランブルエッグがおすすめ。卵を耐熱皿に入れ、20秒ずつ混ぜながら加熱すれば、たった1分で完成します。

子どもの身長は伸ばせるの?栄養素についての注意点

「これを飲めば(食べれば)背が伸びる!」というようなメッセージ付きの商品はたくさんあり、手軽で試したくもなります。しかし、「背を伸ばす」ためだけに働く栄養素は、残念ながらありません。

大切なのは「子どもの心身の成長に必要なカロリー・栄養素をまんべんなくとること」です。

サプリメントの摂取はあり?

サプリメントの摂取はあり?

日本小児内分泌学会は、カルシウム・鉄・ビタミンDを含むサプリメントに対し『「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解』として、次のように発表しています(*4)。

“栄養要素の不足がない場合には、これらの栄養機能食品を投与しても成長促進するという科学的なデータはありません。また多量に摂れば健康を損なう恐れがある一方で、成長が促進するという客観的なデータがありません。”

日本小児内分泌学会『「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解』(2013年3月29日公表)

つまり、すでに足りている栄養素を、さらにサプリメントで追加しても、背を伸ばす効果はありません。

特にビタミンDはサプリメントによる過剰摂取も起こり得るので、注意が必要です。

反対に、アレルギーや好き嫌いなどの理由で特定の栄養素の摂取が不足しそうな場合は、サプリメントに頼ってみるのもありでしょう。気になる場合は、かかりつけの小児科で相談してみてくださいね。

生活習慣を整えることが基本

生活習慣を整えることが基本

子どもの成長には、成長ホルモンが関わっています。そのため、ホルモンをつくる・分泌するための栄養摂取や、睡眠時間をたっぷりとることもとても大切です。積極的に摂りたい栄養素はこちらの記事でご紹介しています。

参考:子どもが積極的に摂りたい栄養素7選!子どもの成長を一緒に楽しもう!

また、外でたっぷり遊ぶことも大切です。ビタミンDが作られるだけでなく、体を動かすことで筋肉がついたり食欲が湧いたり寝つきがよくなったりと、いいことがたくさんありますよ。

ちょっとした工夫で子どもの健やかな成長を支えよう

ちょっとした工夫が子どもの健やかな成長を支える

骨に良い食事や生活習慣を送ることは、骨だけでなく子どもの成長全体にとって良いものとなります。

今回ご紹介したカルシウムやビタミンDを補う工夫も、それによってたんぱく質や鉄など、他の栄養素だって補えます。

「もうちょっと栄養素をとれるようにしたいな」と感じたら、ぜひ本記事を参考にちょっとした工夫をしてみてくださいね。

よく食べよく寝てよく遊び、元気に生活して大きく育ちますように。

引用

*1:厚生労働省. 日本人の食事摂取基準 2020年版

*2:厚生労働省. 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要

*3:Impaired Height Growth Associated with Vitamin D Deficiency in Young Children from the Japan Environment and Children’s Study

*4:日本小児内分泌学会「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解(2013年3月29日公表)