腸内には多様な細菌が存在し、私たちの健康状態にさまざまな影響を与えています。中でも、健康に有益な作用がある細菌をプロバイオティクスといい、ビフィズス菌や乳酸菌がよく知られています。
そこで今回は、ビフィズス菌の働きや腸内でのビフィズス菌の増やし方、乳酸菌との違いについてお話します。
ビフィズス菌とは?
腸内にはさまざまな菌が存在しており、中でもビフィズス菌は人の健康にとって良い働きをする菌のひとつとして知られています。
ビフィズス菌にもさまざまな菌の種類があり、人の腸内にも数種類のビフィズス菌が存在しています。また、赤ちゃんの腸内にも、ビフィズス菌が多く存在しており、離乳期を迎える頃から少しずつ数が減っていきます。
さらに、健康な大人であれば一定のビフィズス菌を腸内に保持していますが、高齢期になるとその数はさらにどんどん減少する傾向にあります。
参考:腸内環境は年齢とともに変化する?*食・生活習慣が鍵を握る
ビフィズス菌にはどんな効果が期待できる?
では、ビフィズス菌が体に与える影響には、どのようなものがあるのでしょうか。主な効果として、下記の4つが挙げられます。
①お腹の調子を整える(整腸作用)
②病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑える
③免疫を調節する
④うつ病のリスクを下げる
①お腹の調子を整える(整腸作用)
ビフィズス菌は、体に悪影響をおよぼす菌の増殖を抑制して、有用な菌を増やす乳酸や酢酸などの有機酸を腸内で産生します。その結果、腸内環境が整い、腸内細菌叢のバランスを整えます。(*1,2)
②病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑える
ビフィズス菌をはじめとしたプロバイオティクスには、腸管関連疾患や感染症の予防効果があることがわかっています。また、ビフィズス菌を含む多様な細菌で構成された腸内細菌叢は、体に有害な菌の増殖を抑制します。(*3)
③免疫機能を調節する
アレルギーを持つ子どもと健康な子どもの腸内細菌叢を比較すると、アレルギーを持つ子どものほうがビフィズス菌の存在が少なく、症状が重い子どもほど、よりビフィズス菌の存在が少ないという報告があります。(*4)
そこで、アトピー性皮膚炎の子供にビフィズス菌を投与したところ、症状が改善されたことが明らかになりました。ほかにも、花粉症予防効果や抗ガン効果など、さまざまな免疫調節作用が認められています。(*5)
④うつ病のリスクを下げる
うつ病の患者は、精神的な問題を抱えていない人に比べて腸内でのビフィズス菌の存在が少ないことが明らかになっています。(*5)このことから、ビフィズス菌をはじめとした体に良い影響を与える菌は、精神面にもメリットがあるといえます。
乳酸菌とビフィズス菌は何が違う?
体に良い影響を与える菌としてよく知られている、乳酸菌とビフィズス菌。整腸作用や免疫の活性化といった有益な働きをする点は共通していますが、学術的に見るとこの2つは異なる菌に分類されます。(*3)
そんな乳酸菌とビフィズス菌の大きな違いは、酸素への強さです。(*6)
乳酸菌はある程度酸素があっても生きていくことができますが、ビフィズス菌は酸素がある場所では生きていけません。そのため、腸の中でも酸素がほとんどない大腸にビフィズス菌は存在し、乳酸菌は酸素がわずかながらある小腸にも存在します。また、食品でも同様で、乳酸菌は発酵食品や野菜、果物などあらゆるところに存在しますが、ビフィズス菌は酸素に弱いことからほとんど存在せず、密閉されたヨーグルトなどの限られた場所に存在します。
また、ビフィズス菌の腸内での割合は、乳酸菌の1,000倍以上ということもわかっています。
ビフィズス菌を腸内で増やす方法
ビフィズス菌を増やすには、大きく「外から摂取する方法」と「腸内にいるビフィズス菌を増やす方法」があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビフィズス菌を外から摂取する
ビフィズス菌は、健康に良い効果をもたらす生きた微生物「プロバイオティクス」のひとつです。
ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスを食べ物からとったとき、生きたまま腸に到達する菌の割合は1~10%程で、多くは胃酸で死んでしまいます。また、体内に一定期間存在できたとしても、棲みつくことはありません。死んだ菌であっても腸内細菌叢のバランスを整える効果はあるため、毎日継続的に摂取して補い続けることが重要です。ビフィズス菌入りのヨーグルトなどはありますが、先ほども述べたように基本的に食品にはあまり存在しないため、サプリメントで摂取するなどで取り入れましょう。
参考:腸内細菌の多様性は日々の食事から!おすすめの最強食材を解説します
プレバイオティクスを摂取して腸内のビフィズス菌を増やす
もうひとつは、「プレバイオティクス」をとる方法です。プレバイオティクスは、消化・吸収されずに大腸に届き、ビフィズス菌をはじめとした腸内に存在する健康に良い働きをもつ菌を増やす、健康を害するリスクがある菌の増殖を抑えるなどの働きをもつ食品成分です。
オリゴ糖や食物繊維が代表的なプレバイオティクスで、野菜類、果物類、豆類などに含まれていることが多いです。大豆、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナといった食材はオリゴ糖を多く含んでいるため、上手に食事に取り入れることをおすすめします。(*2)
また、プロバイオティクスと、そのエサになるプレバイオティクスを組み合わせたものを「シンバイオティクス」と呼びます。(*7)体に良い菌を補給(プロバイオティクス)しつつ、良い菌を育てる(プレバイオティクス)ことで、双方の機能がより効果的に働き、健康に好影響を与えるといわれているのです。
年齢とともに減少するビフィズス菌を意識しよう
プロバイオティクスのひとつであるビフィズス菌は、人の体や心に有用な作用があります。最近では、認知機能の衰えや脳萎縮の進行を抑制するなど脳の機能に影響を与えたり、ストレス反応を緩和したりする効果もあることが明らかになっています。
高齢化が進む社会において、人が健康寿命をのばすために欠かせない菌だといえるでしょう。
ビフィズス菌は高齢になると減少していくため、プロバイオティクス・プレバイオティクスを日々積極的にとることが大切です。また健康と深くかかわる腸内細菌の多様性を保つためにも、普段の食事を工夫して、腸活を楽しみましょう!
参考文献
*1:ビフィズス菌はヒトの腸管内でどのようなはたらきをしているのでしょうか。 | 腸内細菌学会
*4:宮内 浩文(2006)ビフィズス菌による感染防御と免疫調節作用、ミルクサイエンス、55(4)、243-252