昨今、アルツハイマー治療薬が厚労省で承認されたことが話題になりました。

高齢化に伴い、2025年には65歳以上の5.4人に1人が認知症患者になると言われている状況の中では、非常に嬉しいニュースです。しかし、保険が適応されなかった場合、薬の処方には年間数百万近い費用がかかると言われており、決して誰しもができる治療ではないと予想されています。

一方、認知症と腸内細菌の関係についても多数研究が進められています。腸活をすることで認知症のリスクを軽減できる可能性も高まってきており注目されている中で、腸ケアのプロフェッショナルであるAuB研究統括の冨士川に話を伺います。

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少子高齢化の日本においては、認知症に対するアプローチが急務と言われていますが、最近では新薬の開発がやはり活発になってきているのでしょうか?

はい。最近では、日本のエーザイ社と米のバイオジェン社が開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が正式に承認されたことが話題になりました。

具体的にどのような効果が期待されるのでしょうか?

レカネマブはアルツハイマー病患者の脳内に蓄積する「アミロイドベータ」というたんぱく質を除去するように設計されているようで、治験段階では病気の進行速度を27%緩やかにする効果が確認されているという発表がなされています。

これは世界、特に日本においては非常に頼もしいニュースだと思うのですが、冨士川さんの見解を教えてください。

大前提、人類にとっていい薬が増えるのは非常に素晴らしいニュースだと思います。でも…

でも?

「薬が発明されたから、それ以外やらなくていいや」となってしまうのは非常に危険です。

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それはどういった観点からなのでしょうか?

大きく2つあります。1つ目は価格面。

確かに、価格はいくらくらいなのでしょうか?

今回の新薬「レカネマブ」の価格について、中央社会保険医療協議会は、患者1人当たり年間およそ298万円と設定し、保険適用の対象とすることを決めたことが、先日ニュースになっています。

参照:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231213/k10014286581000.html

お、保険適応になったんですね。よかった。

よかったですよね。これは非常に喜ばしいことです。ただ、この薬を使用できるのは認知症を発症する前段階の方です。具体的には「軽度認知障害」の人や、アルツハイマー病発症後早い段階の人。

どれくらいの人が今だと対象になるんですかね?

現状だと、年間で最大3万2000人の使用が見込まれているそうです。

3万2000人…意外と少ない?

そうなんです。あくまでこのレカネマブが使えるのはアルツハイマー病の患者で、脳にアミロイドβという異常なたんぱく質がたまっていることが確認できた人に限られます。認知症の専門医によれば、認知症患者全体の1割未満のようです。

1割か…。

もちろんここからさらに新薬の開発が進んだりすれば状況は変わってきますが、その場合今度は保険が適応されない可能性もあります。

保険が適応されないと、しんどいですね。

そうなんです。ちょっと現実的ではありません。2つ目は副作用です。

やはり薬の話題になるとどうしても懸念に上がりますよね。

今回のケースでも、およそ10人に1人の割合で脳がむくんだり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されたという報告が出ているようです。

そう聞くと怖いですね。

もちろん、どんな薬でも怖い部分だけを切り取ってしまうとキリがありませんが、こういった注意点も理解した上で上手に活用していかなければいけません。

病院で治療するとなると、通院も大変ですしね。

おっしゃる通りです。今回のレカネマブは点滴で投与する薬です。一度治療を始めると2週間に1度、原則1年半の間点滴を受けることになりますので、負担は大きいですよね。もちろんそれで治療が上手くいけば良いわけですが。

そういう意味だと、やはり認知症になる前にいかに予防できるかが鍵になるわけですよね。

そうですね。薬とインナーケアはよく対比で考えられがちですが、私はそうは思いません。薬に頼るフェーズと防ぐことに注力するフェーズは違いますから。

認知症に関しても、なってしまった後は薬に頼ることは大事。でも大前提、ならないためにインナーケアを通して予防することが大事ってことですよね。

その通りです。少し大袈裟な表現になってしまうかもしれませんが、認知症になってから年間400万円払うよりも、日頃から腸ケアを続けて認知症予防に努めてほしいです。

腸内細菌の変化は軽度認知障害になるリスクを5倍高めるという研究も明らかになっていますが、あまり知られていませんもんね。

※参照:https://www.mainichi.co.jp/ninchishou/topics/2021_08_1.html

アルツハイマー病は15~20年かけて徐々に進行すると言われていますから、早めに腸ケアすることにデメリットは1つもないんですよ。

※参照:https://40ninchi-risk.org/theme/theme-1/

ということは、60代・70代前半あたりで発症すると思われがちですが、40代にはすでに始まっている可能性があると言うことですよね。

そういうことです。発症リスクをできるだけ軽減する取り組みは、早いに越したことはありません。30代からは特に必須と言っても良いです。

僕自身も30代なので、身が引き締まります…