最近なんだか眠りが浅い気がする…。ちゃんと8時間寝ているはずなのに、熟睡した気がしない。

伊藤大樹 | AuB株式会社 CS/事業企画
大学卒業後、ディスカウントストアに新卒入社。その後2020年にAuBに中途で入社し、フードテック事業の立ち上げ間もない頃からサイト運営やマーケティング領域などで様々に関わり、事業の成長を牽引。現在はCSの観点から日々お客様との接点づくりと、そこから生まれるコミュニケーションを社内に循環させることに注力している。

どうしました?そんな浮かない顔して。

安部 翔悟 | AuB株式会社 コンテンツプロデューサー
1993年生まれ、神奈川県出身。大手ラジオ局のプロデューサーとして番組制作やアライアンスセールスに従事。その後、スタートアップの経営や、キャリア支援サービスの事業責任者などに従事し、AuBへ入社。現在はコンテンツマネージャーや事業開発担当を勤めている。花粉症に悩む、1児の父。

最近睡眠の質が良くなくて。ベッドや枕が原因なのかな〜。

睡眠の質は、腸内環境等にも左右されると言われていますし、もしかしたら別の要因かもしれないですよ。

え?腸内環境?いくら免疫や代謝に腸内で共生している小さな微生物が関与していることが明らかになっているとはいえ、睡眠は流石に…

冨士川さんに聞いてみましょうか!冨士川さん!

どうしました?お昼ご飯の話ですか?これから食べます?

冨士川凛太郎 | AuB株式会社 取締役兼研究統括責任者
1980年生まれ、熊本県出身。2008年、豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2016年からAuBの立ち上げに参画。これまで40競技950人以上のアスリートの腸内細菌を検査し、その腸内細菌データを元に人々のベストコンディションを実現させるための研究に取り組む。

お昼ご飯なんてどうでもいいんですよ。

・・・。(えー、お腹すいたのに…)

睡眠の質に腸内環境が影響しているかもしれないと伺ったのですが、本当なのでしょうか?

本当です。米国のミズーリ大学の研究チームが、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」に腸内細菌が関与していることを発見したニュースが話題になりました。

※参照:Fecal microbiota transplantation from mice exposed to chronic intermittent hypoxia elicits sleep disturbances in naïve mice

閉塞性睡眠時無呼吸症候群?

OSAとも呼ばれる閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道が、睡眠中に狭くなる、または完全に閉じてしまい酸欠が起こり、睡眠が分断される状態のことを言います。実は、世界中で10億人以上の人が経験していると言われているんですよ。

10億人!?世界の人口が約80億人ということは、12%~13%の人が経験しているということになりますよね。

はい、それくらい睡眠に関するトラブルの中ではメジャーなものです。

ちなみに、どんな研究結果だったのでしょうか?

この研究結果は、ジャーナル誌の「Experimental Neurology」で公表したものなのですが、腸内マイクロバイオームの環境が変化することにより、糖尿病・高血圧・認知機能障害などの合併症を引き起こす可能性が、マウスを使った実験によって確認されたんです。

ちょ、ちょっと難しいのでもう少し簡単に解説して欲しいです・・・。

睡眠時無呼吸症候群は、言葉の通り睡眠中に何度も無呼吸を引き起こす病気なわけですが、無呼吸になると身体はどうなると思います?

んー。身体に酸素が行き渡らなくなる?

正解です。身体全体に必要な酸素が行き渡らなくなると、低酸素状態に陥ります。つまり、心血管機能にダメージが蓄積されると考えられているのです。

心血管機能にダメージが蓄積されるとどうなるんですか?

高血圧や不整脈、心筋梗塞、糖尿病、認知機能障害などを引き起こすリスクがあります。実際、上記疾病は、睡眠時無呼吸症候群の患者が併発する典型的な合併症に挙げられます。

与える影響が大きくリスクしかないことは分かったのですが、腸内環境との結びつきがいまいちよくわかりません。

すみません、長く説明しすぎました。結論を言うと、実験の分析結果によれば、間欠的低酸素症マウスの腸内では、プレボテラ、デスルホビブリオ、ラクノスピレース科などの嫌気性菌が増加していたようなのです。

嫌気性菌…。

もう少し詳細を言わせてください。この実験では、間欠的低酸素症のマウスと普通の酸素濃度の部屋で育てられたマウスの両方の腸内細菌が採取されたのですが、普通の酸素濃度で育てられたマウスに、間欠的低酸素症マウスの腸内細菌を移植し、移植されたマウスの行動を3日間観察したところ…

この流れ的に…。

もうお察しですよね。間欠的低酸素マウスの便を移植されたマウスのほうは、睡眠時無呼吸症候群のような睡眠パターンを示すようになったんです。具体的には、全体的な睡眠時間が増加し、通常の覚醒時間帯の睡眠回数が多くなったようです。

どう言うことですか?

この結果は覚醒時間における眠気の増加を示しています。つまり、腸内細菌叢の組成変化が、睡眠に影響を及ぼしたことが示唆されていると言うわけです。

これ、結構大きな発見ですよね。

おっしゃる通りです。この研究論文の著者であるミズーリ大学医学科のデーヴィッド・ゴザル博士自身も「これは間欠的低酸素に曝露されたマウスから糞便微生物叢を移植されたマウスの睡眠を評価した初めての研究です」と述べている通り、睡眠というすべての人が直面するものにおける腸内環境の重要性を示すものですからね。

腸内環境を整えることが、睡眠障害を伏せる1つの手段になり得るということですよね。

はい。もう少し詳細にいうならば、腸内マイクロバイオーム、または腸内微生物叢で作られる代謝物を操作することによって、睡眠時無呼吸症候群の予防や、合併症を緩和できる可能性が高まってきたと言えるということです。