千葉県出身。お茶の水女子大学卒業後管理栄養士国家試験合格。生活習慣病専門クリニック勤務を経て、2013年に筑波大学大学院にて博士(医学)を取得。私立大学にて「子どもの食と栄養」等の講義を担当する中で、自身も独学で保育士資格を取得した。論文や学会で成果発表する傍ら、市民講座や小中学校での講演会も多数行った。現在はフリーランスとして、商品開発や食堂メニューの監修、オンライン栄養指導などを行っている。
「離乳食で初めて食べた食材で、食物アレルギーを起こさないか心配」
「新しい食材を食べさせる時は、どう気をつけたらいいの?」
生後5カ月近くになると、そろそろ気になってくるのが離乳食。
保育園入園を控えた赤ちゃんがいるパパママは、園に提出しないといけない「食べさせた食材チェックリスト」の多さに驚いたのではないでしょうか。
今まで母乳やミルクだけで大きくなってきた赤ちゃんに、食べ物を与えるのは嬉しい反面、ちょっと心配もありますよね。そこで今回は、新しい食材を与える際のポイントを管理栄養士が解説します。
離乳食で新しい食材を与える種類や量は?
赤ちゃんに新しい食材にチャレンジさせる際に気になるのは、食物アレルギーですよね。
食物アレルギーを予防する食事はありませんので、アレルギーは「起こさないように」よりも「もし起きても大丈夫な状態を整える」と考えたほうが良さそうです。
新しい食材は1日1種類まで
新しい食材は1日に1種類まで、なるべく新鮮な食材を充分に加熱してから与えましょう。
初めての食材を何種類も同時に与えない理由は、アレルギーが起きた際の原因をわかりやすくするため。
アレルギーが起きた際、初めて口にした食材が1種類なら、すぐに原因を特定できるので安心ですね。
新しい食材は1さじから
初めて食べるものは、1さじからはじめましょう。
「1さじって離乳食用スプーンで一口?それとも小さじ1?」と疑問に思いますよね。
でも、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」(*1)では、1さじの量をきっちりと伝えているわけではありませんので、「ほんの少し」の意味でとらえて良さそうです。
たとえば、食物アレルギーの原因になりにくい野菜などは離乳食用スプーンで3口くらい(小さじ1)、反対に鶏卵・牛乳・小麦などは、耳かき程度のほんのちょっとから始めてみてはいかがでしょうか。
赤ちゃんの様子を見て、少しずつ増やしてみてくださいね。
最初は、赤ちゃんが喜んでも小さじ1で終わりにし、2回目以降にひとさじずつ量を増やしましょう。アレルギーは、2回目以降に食べた際に起きる場合もありますので、様子を見て少しずつ量を増やしてくださいね。
ちょっとしか与えない段階での離乳食の準備は、とても面倒。そこでおすすめなのは、炊飯器の活用。
通常通りにセットしたお米の上に、赤ちゃんにあげる分だけの食材をアルミやお茶パックにくるんでポンと置くだけで、柔らかく火が通ります。あとはすり潰したり切ったりするだけなのでとても楽ちんですよ!
食べ慣れてきたら、多めに作って冷凍したり、離乳食用の冷凍キューブを活用したりすると便利です。
もちろん、すでに食べている食材なら、ベビーフードだって使って大丈夫ですよ。
食物アレルギーを起こしやすい食材は?
消費者庁の支援を受けて平成29年に行われたモニタリング調査によると、食物アレルギーの新規発症の原因となった食材は、0歳では鶏卵、牛乳、小麦の順に多い結果となりました(*2)。
1歳以降では、魚卵、木の実、果物などが食物アレルギーの発症原因となっているようです。これらの食材を与える際は、特に気をつけるほうがいいですね。
離乳食で新しい食品を与えるタイミングは?
新しい食材を与えるときは、そのタイミングにも気を配ると安心です。
体調や機嫌のいい時にしよう
新しい食材は、赤ちゃんの体調や機嫌がいい時にチャレンジしましょう。
体調や機嫌がいい時なら、離乳食を食べた後に具合/機嫌が悪くなったという変化に気がつきやすいからです。反対に、すでにお腹が下っていたり機嫌が悪かったりすると、その後の症状が「もともとなのか」「離乳食によるものなのか」わかりにくいので、元気になるのを待ちましょう。
離乳食は、「食べ進めないと」とあせりますよね。
我が家の次男は、1歳になる頃に体調不良が続きなかなか牛乳を飲ませられず、私もあせったり保育園に申し訳なく思ったりしたこともありました(1歳からは牛乳が出る)。
でも、この記事を書くまでそんなことはすっかり忘れていましたし、長い人生でほんのちょっと食べるのが遅くなっても、全く発育に影響しないので大丈夫ですよ!
なるべく平日の午前中にしよう
新しい食材を与えるタイミングは、平日の昼間がおすすめです(*3)。理由は、何かあった際、病院がやっていればすぐに駆け込めるから。
アレルギーは時間が経ってから症状が出ることもあるので、なるべく午前中、もっと言うなら週の前半に試してみるのが安心です。
近隣の小児科の診療時刻はチェックしておきましょう!
私も子どもたちに最初に卵を与えた時はドキドキし、外出用できるよう身だしなみを整えて机の上に保険証を用意しておきました(笑)
保育園入園を控えているお子さんの場合は、鶏卵、牛乳、小麦は月齢が達しているなら、時間にゆとりのある入園前に試してみるのがおすすめです。
仕事復帰後はなかなかゆっくり平日に時間が取れなくなりますし、赤ちゃんがたくさん病気をもらってくるので、体調万全!という日が少なくなります……。
離乳食は赤ちゃんの腸活も意識してみよう
離乳食をはじめた頃は、水分や食物繊維の不足から便秘がちになる赤ちゃんも(*4)。
ちょうど離乳食が始まる時期は、お母さんからもらった免疫が弱まるころ。
アレルギーに関係する免疫細胞の7割は腸にいるので、元気な時には積極的に離乳食にも腸活を取り入れてみましょう。
離乳食初期から食べられるプレバイオティクスは、さつまいもやにんじん、りんごなどが甘味もあっておすすめです。
離乳食に取り入れやすいプロバイオティクスには、納豆、ヨーグルト、味噌などがあり、いずれも使えるのは中期(7〜8カ月)です。
新しい食材は未知との出会い。楽しもう!
離乳食ではじめての食材を食べさせることは、赤ちゃんにとっては未知との出会いです。
「おいしい!」という顔をしたり、「べぇ〜」と吐き出したり、どんな姿もとっても可愛い思い出になるはず。
ご紹介したポイントさえおさえて、あとはたくさん赤ちゃんに新しい出会いを与えてあげてくださいね。
引用
*1: 厚生労働省.授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)
*2:
*3: 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 免疫アレルギー疾患等政策研究事業(免疫アレルギー疾患政策研究分野.厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017