千葉県出身。お茶の水女子大学卒業後管理栄養士国家試験合格。生活習慣病専門クリニック勤務を経て、2013年に筑波大学大学院にて博士(医学)を取得。私立大学にて「子どもの食と栄養」等の講義を担当する中で、自身も独学で保育士資格を取得した。論文や学会で成果発表する傍ら、市民講座や小中学校での講演会も多数行った。現在はフリーランスとして、商品開発や食堂メニューの監修、オンライン栄養指導などを行っている。
「妊娠中(産後)の便秘、しんどい!」
妊娠中や産後は、実はママのマイナートラブルはたくさん!ママ自身も周囲も赤ちゃんのことばかり気にしていて、ママの身体のケアはつい後回しになりがちですよね。
実は便秘に悩む妊婦さん、産婦さんはたくさんいます。そこで、今回は、産前産後の便秘と腸活についてお伝えします。
産前の便秘は大丈夫なの?対策方法は?
妊娠初期で、つわりがまだあるのに、便秘でお腹が膨れてつらいです。排便の頻度も減っているのですが、大丈夫でしょうか?
妊娠中は、食べ物の量や質、水分、運動、腸内環境のどれをとっても、便秘になりやすくなります。たくさんの妊婦さんが便秘で悩んでいることなので、安心してくださいね。遠慮せずにかかりつけのお医者さんへ相談しましょう。
妊娠中は便秘になりやすい
実際、妊産婦を対象としたアンケートでは、77.6%のママが妊娠期に「排便困難感」を、74.5%が「排便回数・量の減少」を感じると回答しています(*1)。
便秘治療の基本は「規則正しい生活習慣」「運動」「食物繊維をとる」など言われていますが(*2)、正直、妊娠中には難しいことも多いのが現状です。
妊娠初期は、具合が悪くて横になっていることが多くなり、逆に夜には目が冴えてしまうこともしばしば。中期以降は、お腹が重くて寝る体勢もしんどくて、まともにぐっすり眠れるなんてことはありません。誰に相談しても「赤ちゃんが生まれたら睡眠不足になるから、今から準備しているのよ〜」としか言われないですしね……。規則正しい生活習慣とは程遠い睡眠の質、しんどいですよね(涙)。
そして、忘れてほしくないのが、食事量が減ればうんちの量も減るということ。
食物繊維が多いものを摂れば便通が改善するとはいえ、つわりの時期に食べやすいご飯は口当たりの良く、繊維質が少ないものが多いので、うんちにはなりにくいです。
また、嘔吐により水分量が減ったり、安静にして活動量が減ったりすることも便秘になりやすい理由です。
しかも妊娠中は『赤ちゃんが出ちゃうんじゃないか』と怖くて、なかなかお腹に力を入れられないんですよね……。
極め付けは、妊娠中はホルモンや腸内細菌叢も変化すること。
だからこそ、「妊娠中は便秘になって当然」という意識でいつつ、可能な範囲で腸活を意識してみてはいかがでしょうか。
内部リンク>妊娠も腸内細菌の多様性に関わる?妊婦さんの腸活のすすめ
妊娠初期に食べやすい腸活食材
口当たりが良く食べやすい腸活食材は、柑橘系やベリー系など甘味と酸味がある果物や、ヨーグルトをジップ付きの袋に入れて凍らせたものなど。
食べづわりの場合は、食事を小分けにして少しずつ食べましょう。
実は私の妊娠初期は、無性にフライドポテトが食べたくなりました(笑)。
重宝した腸活食材は、みかんです。手でむけるし、一個を食べ切れなくてもそのままテーブルに置いておけるので、ちょこちょこ食べていました。いよかんなどの場合は、底の部分だけでも皮ごと食べると食物繊維がとれますよ!
妊娠中期〜後期におすすめの腸活食材
つわりがおさまる中期以降は、体重管理が大変になってくる時期。
野菜類、海藻類、豆類、根菜類などを積極的に取り入れると、腸活だけでなくカロリー管理にもなるのでおすすめです。
一方で、この時期は外食などが楽しめるラストチャンス。外食は炭水化物が多くなりがちなので、そのあとの食事では上記の食材を多めに取り入れて調整しましょう。こまめに歩くことで、体重管理や腸への良い刺激にもなりますよ。
私は週末にひじきや切り干し大根、きのこの煮物などをたくさん作り、平日の昼食として仕事に持っていきました。お弁当まで作るのは大変だったので、コンビニで調達したおにぎりやおかずと組み合わせていましたよ!
産後も便秘ケアや予防が大切
産後、痔になってしまい、トイレに行くと激痛です。さらに便秘がちで本当に辛いです。恥ずかしいのですが、病院で相談していいのでしょうか。
妊娠出産で痔になるなんて、誰も教えてくれませんでしたよね!でも実はよくあることなので、恥ずかしがらず病院で相談しましょう。1カ月検診を利用しても大丈夫ですよ。
実は、産後も便秘になりやすい
産後は、ホルモンの関係や、骨盤底筋の損傷、会陰切開・帝王切開の跡の痛み、大きくなったお腹による圧迫や出産時のいきみなどによる痔など、便秘になりやすい要素がたくさんあります(*3)。
前述のアンケートでも、産後1カ月でも、64.4%が「排便困難感」を、55.2%が「排便回数・量の減少」を感じていました(*1)。
産後は、妊娠中よりさらに規則正しい生活習慣とはほど遠くなりますから……。睡眠不足でフラフラな状態に加え、授乳によりママの体からは栄養も水分も不足しやすくなります。
新生児のうちは「ちゃんと息しているかな?」、寝返りするようになれば「毛布を顔にかけちゃって窒息しないだろうか」などと、心配で心配でゆっくりトイレに入れないという心理的な問題も。
動き出したら後追いや事故が心配になり、ゆっくりトイレに入れない状況は、残念ながら数年続きます。
私は子どもが2歳頃までは、トイレ中もドアを開けっぱなしにするのが習慣になっていました(笑)
そのため、産後も便秘になりやすいことを前提として、可能な範囲で腸活を取り入れていきましょう。
産後の食事と腸活
産後は赤ちゃんのお世話が中心になり、ママ自身の食事がままならないことも多いですよね。
簡単に用意できるものや買ったものは、どうしても炭水化物が中心になりがちです。
そのまま食べられる豆腐や納豆は腸活にも良いですし、調理済みの冷凍肉・魚などもストックしてすぐに食べられるようにしておくのがおすすめです。
食物繊維を手軽に摂る工夫としては、冷凍のカット野菜・根菜をドバッと入れたスープや、輪切りにしたさつまいもをたくさん茹でておくと楽ちんですよ!
授乳をしていると、とてもお腹がすきますよね。甘いお菓子の代わりに、さつまいもやヨーグルト、皮を剥く手間が少ない果物ななどの腸活食材を取り入れてみてはいかがでしょう。
内部リンク>母乳の質は赤ちゃんの腸内細菌に影響する?出産前からできる腸活も紹介
妊娠〜産後も、ママ自身のケアも大切に
妊娠から産後にかけては、ママの食事も「おなかの子のために」「赤ちゃんのために」と自分のためではなくなってしまいがち。でも、ママが心も身体も元気でいることが、笑顔でいるために大切です。
腸活食材だけで便秘予防・解消は難しいかもしれませんが、体重コントロールやビタミン・ミネラルの補給など他にも良い面はたくさんあります。ぜひ、無理のない範囲で腸活(おなかケア)をしてみてくださいね!
引用:
*1: 新川 治子妊娠末期から産後1年までの妊娠によるマイナートラブルの変化. 日本助産学会誌2021 年 35 巻 1 号 p. 36-47