千葉県出身。お茶の水女子大学卒業後管理栄養士国家試験合格。生活習慣病専門クリニック勤務を経て、2013年に筑波大学大学院にて博士(医学)を取得。私立大学にて「子どもの食と栄養」等の講義を担当する中で、自身も独学で保育士資格を取得した。論文や学会で成果発表する傍ら、市民講座や小中学校での講演会も多数行った。現在はフリーランスとして、商品開発や食堂メニューの監修、オンライン栄養指導などを行っている。
「妊娠中って何を食べたら良いんだろう…赤ちゃんはちゃんと元気に育つかな」
「私の食生活で、赤ちゃんが食物アレルギーになったらどうしよう」
「ママ友が腸活って言ってたけど、赤ちゃんにも良さそう…!」
妊娠中や授乳中は、ママが食べたものが赤ちゃんの栄養になるので、考えすぎてしまうママさんも多いのではないでしょうか。
でも大丈夫。厚生労働省が勧めているのは、ママが「自分自身の健康づくり」のために、バランスが取れた食事です(*1)。
そこで今回は、妊娠中や授乳中のママが元気になれるための食事バランスの整え方や腸活をお伝えします!実は、ママの食事と赤ちゃんの食物アレルギーには関連があるということもわかってきているんですよ◎
妊娠中や授乳中はママが元気になれる食事をとろう
厚生労働省は、食事バランスを整えるコツとして、次の4点を紹介しています。
①「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
主食は、からだを動かすエネルギーになるもの。ごはん、パン、麺など、炭水化物を多く含む食品・料理があてはまります。
ご飯ならお茶碗しっかり一杯、パンなら8枚切りを2枚、100g入りの乾麺なら3/5束程度は、ぜひ食べるようにしましょう。
一度にたくさん食べられなければ、おやつ用に小さなおにぎりにしたり、ふかし芋などの芋類を組み合わせたりするのもおすすめですよ。
②不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
副菜とは、主に野菜やきのこ類を使った料理をいいます。野菜でいろいろな種類のビタミンやミネラル、食物繊維をとり、体の調子を整えましょう。
一回の食事で、生の状態で両手のひら一杯分くらいの野菜が目安。なんでもスープにすれば手っ取り早く、水分もとれるし、体もあたたまるのでオススメです。さらに、そのまま食べられるトマトやフルーツを常備しておけばバッチリです。
参考:バナナは栄養素たっぷりで腸活にも期待大!健康効果を高める食べ方は?
葉酸というビタミンについては、妊娠前からのサプリメント活用もすすめられています。
③「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に
主菜は、肉、魚、卵、大豆など、タンパク質を多く含む食品・料理です。毎食とろうとすると、実は結構難しいですよね。
そのまま食べられる納豆や豆腐を冷蔵庫に入れておく、レンジでスクランブルエッグを作るなど、なるべく手間をかけずに食べられるものを用意したいところです。
調理が大変なら、便利家電の活用もおすすめです。私は、焼き物はオーブン、炒め物と煮物には自動調理器を使っており、コンロを使うことはめったにありません。火のそばにいなくて済むのは気楽ですよ!
④乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に
日本人の女性はカルシウムが不足しがち。妊娠中、授乳中にも大切な栄養素なので意識してとりましょう。
パンにチーズを載せて焼く、ご飯にしらすをかける、おやつにヨーグルトを食べるなど、今の生活にプラスアルファできる食べ方が楽ちんです。
⑤ママがアレルゲンを避けることは赤ちゃんの食物アレルギーの発症予防にはならない
「赤ちゃんには食物アレルギーになってほしくない…ママが妊娠中からアレルギーの原因になりそうな食べ物を避ければいいのかな?」
赤ちゃんを心配しての行動ですが、実はこれはNG。
ママが特定の食べ物を避けることが子どもの食物アレルギー予防にならないことは、アレルギー診断ガイドラインではっきりと言われています(*2)。むしろ、ママの食事内容が偏ることの方がよくありません。
やはりまずは、ママ自身が健康になれる食生活を実践しましょう!
妊娠中や授乳中におすすめな腸活食材
ママの健康的な食習慣に、とり入れたいのは腸活です。これまでに、妊娠後期や授乳中にママがプロバイオティクスをとることで、赤ちゃんの湿疹リスクが下がるなどの報告もあり、腸活の重要性はますます高まっています(*3)。
また、腸内細菌のバランスが悪いと、メンタルヘルスにも影響する(*4)そう。妊娠・授乳期間は女性のホルモンバランスの影響でメンタルが不安定になりやすいので、選ぶ食材をちょっと意識して、腸活してみてはいかがでしょうか。
ただし、食物アレルギー発症を予防する十分なエビデンスはないこと、乳児湿疹の原因がママのプロバイオティクス不足ではない、というところも合わせて覚えてくださいね!
プロバイオティクス
プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌など、体に良い影響を与える細菌のこと。
ヨーグルトやぬか漬け、キムチなどの発酵食品に含まれます。
参考:プロバイオティクスとは?期待できる効果と、摂り方のポイントを紹介
そのため、ヨーグルトや発酵食品でもある味噌を使った味噌汁を食べることは、腸活だけでなく上でお伝えしたバランスの良い食生活にもつながります。
おすすめレシピ:【管理栄養士考案】お味噌を使った野菜たっぷりミネストローネ
プレバイオティクス
プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサになり身体によい影響を与える食品のことで、オリゴ糖や食物繊維をいいます。
野菜や果物にはオリゴ糖と食物繊維の両方を含むことが多いので、野菜をとることを意識すれば自然とプレバイオティクスをとれますよ。
参考:プレバイオティクスとは?その役割とプロバイオティクスとの関係性
また、実は母乳には、HMO(ヒト母乳オリゴ糖)という特別なオリゴ糖が含まれています(*5)。
HMOはヒトの母乳にしか含まれず、赤ちゃんの腸内ビフィズス菌を増やすという重要な役割があるのです。母乳が、赤ちゃんにとってはプレバイオティクスになるのですね。
粉ミルクには他のオリゴ糖が添加され、赤ちゃんのビフィズス菌を増やそうと頑張っていますよ!HMO添加ミルクも世界中で研究開発が進められ、少しずつ製品化もされているので乞うご期待ですね。
いろいろなものを食べて、腸内細菌の多様性を育てよう!
いろいろな食材を食べると、栄養のバランスもとれるうえに、腸内細菌にも多様性がうまれるので良いこと尽くし!
食事バランスを整えるために、「主食」「主菜」「副菜」がそろっているかをチェックしてみましょう。
主菜が足りない時用に「納豆」、副菜が足りない時用に「プチトマト」など、調理しなくても食べられる食材を冷蔵庫に入れておくと手軽にバランスがとれて便利ですよ。
赤ちゃんの栄養には、まずはママの体づくりから。腸活も意識しつつ、無理のない範囲でいろいろ食べてみてくださいね。