冬至(とうじ)とは、1年間で最も太陽が出ている時間が短い日で、2024年は12月21日(土)です。日本では、冬至と言えば、かぼちゃに並び柚子湯(ゆず湯)が欠かせません。
柚子湯は、江戸時代の銭湯で、冬至=「湯治(とうじ:温泉の効能で健康回復をすること)」、ゆず=「融通(ゆうずう)がきく」の語呂合わせで始まったと言われています。
他にも、「冬至を境に日が長くなる(=運気が上昇する)ことから、体を清めて運を呼び込む」「実るまでに長い年月を要する柚子にかけて「長年の苦労が報われますように」という願いが込められている」などの由来があるとされています。
いずれにせよ、柚子湯に込められた願いは「心と体を温かくし、健康で過ごしたい」ということ。
柚子湯には本当にその効果があるのかを、現代科学に基づき解説します。

柑橘系の香りにはリラックス効果がある可能性

柚子と同じく柑橘系のグレープフルーツを用いた研究では、グレープフルーツの香りを嗅ぐことで精神的な不安を軽減してリラックス効果が認められたという報告があります。(*1)
この研究では、健康な20歳から40歳代の女性4名を対象に、ストレス(作業による精神負荷)をかけた後にグレープフルーツの香りを嗅がせて、前後の心理状態と脳波の測定をしました。
その結果、自己申告による心理状態は、ストレスにより一時的に不安が高まりましたが、香りを嗅いだ後に不安が減少しました。また、グレープフルーツの香りを嗅いだ後はα波が増えており、リラックスを招く傾向が認められたのです。
このことより、ストレスがかかった状態でグレープフルーツの香りを嗅ぐことが、リラックスにつながる可能性が示されました。

入浴自体に疲労回復効果がある

湯治が今でも広く認識されているように、「お風呂=疲労回復」というイメージがありますよね。実際に、入浴は科学的にも疲労回復効果が認められています。
体が温まると、血管は拡張します。血の巡りがよくなると、体の隅々まで酸素や栄養が届くようになり疲労、筋肉のコリなどの回復が促されるとされています。
さらに、40℃前後のぬるめの湯に浸かると、副交感神経が優位になることでリラックス効果がもたらされます。
入浴の効果やポイントは、こちらの記事で詳しく紹介しています。

柚子湯のやり方と注意点

柚子湯のやり方に決まった型はありません。やりやすい方法で大丈夫ですが、ポイントは「香り」がよく出るようにすることです。マウスを用いた研究によると、柚子やグレープフルーツなど柑橘系に含まれる「リモネン」という成分に抗不安効果がある可能性が報告されています。(*2)

柚子湯のやり方

  • 丸ごと:湯船にプカプカ浮く黄色い柚子は、見た目も可愛くて癒やされます。ただ、丸ごとの柚子は香りを感じにくいため、爪楊枝などで小さく穴を開けたり、皮に切り込みを入れたりするといいでしょう。また、つい握って感触も楽しんでしまいますが、潰れた時に種や皮・果肉等が配管に詰まらないよう気をつけましょう。
  • カットする:柚子を半分やスライスにすることで、果汁も香りも十分に楽しめます。しかし、前述したように、種や皮、果肉が配管に詰まるのを防ぐために、ネットに入れることをおすすめします。
  • 皮だけ:料理にも広く使われているように、柚子は皮だけでも十分に香りを楽しめます。お茶やだしを詰めるパックを使うと便利です。

柚子湯の注意点

  • 柚子の成分により肌がピリピリする場合がありますので、肌の弱い方や、小さなお子様は特に気をつけましょう。なるべく果汁を入れないことや、湯船から出たあとにシャワーを浴びることをおすすめします。
  • 浴槽が汚れたり配管が詰まったりしないよう、追い焚き機能は使わず、入浴後はすぐに浴槽を洗いましょう。

柑橘系の入浴剤でも大丈夫?

冬至の柚子湯を楽しみたいけれど生の柚子を使うのは大変……という方は、手軽に柑橘系のバスアイテムを使ってみてはいかがでしょうか。
実は上でご紹介した2つの研究も、ひとつはグレープフルーツから抽出した精油を、ひとつはアロマバス(芳香湯浴)を利用しています。
入浴剤とは、厚生労働省によって効果・効能が認められた医薬部外品のことを言い、他には保湿やスキンケアなどを目的とした入浴化粧料や、単に色や香りなどを楽しめる雑貨などがあります。
どのタイプでも、柚子の香りを活かした商品がでていますので、ぜひお好みで選んでみてくださいね。

まとめ

柚子湯の風習は、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期だからこそ、お風呂でリラックスして疲労を回復し、体調を整えたいという願いがあったのかもしれません。
夜の時間が長い時期だからこそ、柚子の香りでゆったりとリラックスできる時間を満喫できたら嬉しいですね。

引用文献

*1: 「精神負荷に対するグレープフルーツの香りの効果」2000 山梨医大紀要

*2: 「アロマバス(芳香湯浴)における水難溶性テルベン炭化水素およびエステル成分の優先的マウス皮膚吸収と組成変動について」(2000 Aroma Research)