最近よく「啓太さんってメンタルが強いんですね」と言われることが多いのだけれど、メンタルの強さって生まれ持った才能的なものなのだろうか…
鈴木啓太 | AuB株式会社 代表取締役
1981年生まれ、静岡県出身。小学生よりサッカーをはじめ、中学校時代は全国制覇を成し遂げ、高校はサッカー強豪校・東海大翔洋高校へ進学。2000年に浦和レッズに加入後、日本代表でも活躍した元トップアスリート。2015年10月中にAuBを設立。2015年に現役を引退し、AuB代表取締役に就任。経営者でもあり、2児の父としても奮闘中。
(ん?なんか啓太さんが悩んでる。話を聞きたいところだけど、ちょっと今は忙しいからあとでにしよ)
冨士川凛太郎 | AuB株式会社 取締役兼研究統括責任者
1980年生まれ、熊本県出身。2008年、豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2016年からAuBの立ち上げに参画。これまで40競技950人以上のアスリートの腸内細菌を検査し、その腸内細菌データを元に人々のベストコンディションを実現させるための研究に取り組む。
冨士川さん、今僕が悩み事をしていたことに気づきましたね?
(ば、バレてた…)どうされましたか啓太さん…
ありがたいことに起業に至った背景などを取り上げていただくことが多いのですが、その度にいつも「啓太さんはメンタルが強いんですね」とおっしゃっていただけて、嬉しい気持ちもある一方、自分自身ではメンタルが強い自覚はないんですよね。
いや、啓太さんはメンタル強いと思いますけどね。
それで、メンタルの強さって生まれ持った才能的なものなのか、はたまた後天的に努力して身につくものなのか気になって。
メンタルヘルスの領域や心身医学の領域は、専門の先生に聞いた方が良いのでここでお伝えすることは避けますが、”腸”の領域においては、後天的にメンタルが強くなることはあります!
え?どういうことですか?腸を鍛えたらメンタルが強くなるということですか?
腸内環境を”整えたら”ですね。精神状態と腸内環境については幅広い研究がされていて、腸内環境が良いほど精神的に不調を起こしにくいことが分かっています。
※参照:Diet and the Microbiota–Gut–Brain Axis: Sowing the Seeds of Good Mental Health
例えばメンタル不調=うつなどが想起されると思うのですが、うつとの相関も見られているのでしょうか?
はい、例えばうつ病患者はビフィズス菌が少なく、IBS(過敏性腸症候群)とも相関があるという報告があります。
※参照:うつ病の人の腸内細菌を調べたら… 調査から見えること
おお。確か、腸内細菌の多様性が高いと、育児ストレスからの回復も早いといった報告もありませんでしたっけ?
あります。あとは、「体育会系は根性がある」というふうに言われることも多く、運動している人はメンタルが強いというイメージもあるかと思いますが、そもそも運動したくなるかどうかも腸内細菌次第という報告もあるんです。
※参照:「運動したい」という意欲を腸内細菌が高める? マウスでの研究から見えた人間への応用可能性
となると、運動しているからメンタルが強いよりも前に、腸内環境が整っているから運動したくなるという大前提があるってことですね。
はい。そう考えると、啓太さんがメンタルが強いのも納得というか、必然なんですよね。腸活が流行るよりも前の幼少期から、腸を整えているわけですから。
メンタルを強くする土台を整えていると言った方がしっくりきます。腸ケアで土台を整えて、スポーツや経営といったヒリヒリする場面での場数を踏むことで、ちょっとしたことで気持ちが揺らぐ場面は無くなってきたなと。
その表現いいですね。
ちなみに、メンタル系の話をする時は「幸せホルモン」が必ず出てくると思うのですが、幸せホルモンのうちの1つであるセロトニンは、腸内でも生成されるんですよね?
はい。8割以上が腸内細菌によって作られているとも言われています。
※参照:The Relationship Between the Serotonin Metabolism, Gut-Microbiota and the Gut-Brain Axis
セロトニンを増やすための具体的なアクションを知ることができれば効率がいいのかなと思ったのですが、いかがですか?
腸活視点で言えば、プロバイオティクスの摂取、つまり乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌などの生きた菌を摂取することが有効だということが報告されています。また、トリプトファンの摂取も有効だという報告があるので、チーズ、ナッツ、赤肉、鶏肉、魚、レンズ豆なども効果的です。
※参照:Circadian Levels of Serotonin in Plasma and Brain after Oral Administration of Tryptophan in Rats
トリプトファン…?
あまり聞きなれない言葉だと思うのですが、トリプトファンとは必須アミノ酸の一種で、セロトニンを作り出す唯一のアミノ酸と言われています。また、セロトニンだけでなく眠りを促す効果のある「メラトニン」のもとにもなると言われているんです。
めっちゃ大事じゃないですか!
そうなんです。なので、腸ケアや日々の食事を通してメンタルを強くする。啓太さんの言葉で言うなら、強いメンタルの土台を作ることは可能なんです。
「メンタルは才能だから…」「メンタルの強さは遺伝だから…」と諦めてはいけないってことですね。
ですし、今メンタルが強いと思われている人や、自分自身でそう感じている人でも、腸内環境が乱れてしまえばメンタル不調に陥る可能性があるので、気を抜かないでほしいですね。
間違いない。