監修者
広瀬歩美 | 管理栄養士、博士(医学)

千葉県出身。お茶の水女子大学卒業後管理栄養士国家試験合格。生活習慣病専門クリニック勤務を経て、2013年に筑波大学大学院にて博士(医学)を取得。私立大学にて「子どもの食と栄養」等の講義を担当する中で、自身も独学で保育士資格を取得した。論文や学会で成果発表する傍ら、市民講座や小中学校での講演会も多数行った。現在はフリーランスとして、商品開発や食堂メニューの監修、オンライン栄養指導などを行っている。

「子どもが偏食、野菜嫌いで食べてくれない…」

「嫌がってダラダラ食べるので、いつまでも食事が終わらない」

「育児書に書いてある「これで野菜嫌いを克服!」は全然効果がない」

子どもが野菜を好き嫌いをする姿を見ると「どうしてパクパク食べてくれないんだろう……。」と、悩みますよね。でも大丈夫、悩んでいるのは、あなただけではありません。

実は、2〜6歳児をもつ保護者の8割以上が子どもの食事に何らかの悩みを抱えています。(*1)

親としては、忙しい中で一生懸命に用意した食事を残されると、心配もありガッカリ・イライラしてしまいますよね。でも、思い切って子どもの目線になると、見える景色が変わるかもしれません。

そこで今回は、管理栄養士で保育士、2人の男児の母でもある筆者が、子どもの野菜嫌いの理由と、おすすめの工夫をお伝えします。

動画でも解説しています!▼

子どもの頃に野菜嫌いでも大丈夫

子どもの頃に野菜嫌いでも大丈夫

実は、子どもの頃に野菜嫌いでもほとんどのケースは心配ありません。

多くの人は、子どもの頃は好き嫌いがあっても、成長にしたがって食べられるものが自然と増えていくのです。

小さい頃は食べられなかった野菜を、大人になったら好きになっていたというのはよくある話ですよね!

小学生の給食に関する調査(*2)では、給食を「いつも残す」と回答した生徒は全学年を通して5.5%、一番少ない学年になると「いつも残す」のは100人中わずか0.6人でした。

反対に、「いつも残さず食べる」のは、小学1年生では30%でしたが、6年生では65%、80%を超える学年もありました。

そのため、目の前のお子さんがちょっと偏食気味でも、肌ツヤよく活発で、身長も体重も成長曲線に沿っているなら、基本的には大丈夫です。

大切なのは、子どもが「食事は楽しい」と思えること。厚生労働省発行の「保育所における食育に関する指針」のタイトルは、「楽しく食べる子どもに」です。「好き嫌いがない子ども」ではありません。
我が子が「楽しく食べる子ども」になるには、親が「好き嫌いがあってもまぁいっか」と気楽に構えるのが良いのかもしれません。

野菜嫌いの理由と工夫

野菜嫌いの理由と工夫

そうはいっても、食べられるなら食べてほしいのがお野菜。野菜に多いビタミン類や食物繊維は、身体の調子を整えるのに大切な栄養素です。

ここでは、「子どもの野菜嫌い」の代表的な理由と、その対策をご紹介します。

「苦い」「酸っぱい」は本能的に嫌い

「苦い」「酸っぱい」は本能的に嫌い

味覚は、「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」の5つが基本です。

その中で、人間は本能的に「甘味」「塩味」「うま味」は好き、「酸味」「苦味」は嫌いだと感じます。

なぜなら「甘味は炭水化物」、「塩味はミネラル」「うま味はアミノ酸(たんぱく質)」を表す一方で、「酸味」や「苦味」は腐敗や毒などの危険のサイン。本能的に警戒レベルが上がってしまうのです。

そのため、大人に比べて食の経験が圧倒的に少ない子どもが、苦い野菜が嫌いなのは当然なのかもしれません。

「あぁ、この子はちゃんと味覚が発達して、苦い野菜を避けられるようになったのね」と、まずは肯定的に受け止めてみると、ちょっと気が楽になるかも。その上で、次に詳しくお伝えする「食べ慣れ」を目指して、定期的に食卓に登場させましょう。

食べ慣れないものは怖い

食べ慣れないものは怖い

大人でも、初めて食べるものはちょっと緊張しますよね。

それが初めての環境ならなおさらドキドキしたり、反対に信頼できる人のおすすめだったら安心して食べられたり。

実は、ヒトを含む動物は新しい食べ物を怖がる傾向にあることや、ママの恐怖や好き嫌いが子どもにも関係することが科学的にも示されています。(*3)

まだ幼い子どもにとっては、毎日が新しい食べ物との出会いです。そのため今は、嫌いでも見慣れる、食べ慣れることを目指しましょう。

食べないからと食卓に出さないのではなく、できれば調理法を変えて定期的に出し、大人が美味しそうに食べる姿を見せましょう!

「僕はこれ嫌だけど、大好きなママやパパがおいしそうに食べているということは、いいものなんだな。」と、子どもが思えたらいいですね。

また、野菜を食べやすくする工夫もしてみましょう。

●苦味が強い野菜は一度茹でてから調理する
●肉や魚などのたんぱく質と一緒にすると食べやすい

(例:ピーマンの肉詰め、ナスのミートグラタン、焼肉のレタス巻き)

ただし、これらの方法で、「すぐに野菜大好きに!」とはなりません。昨日は美味しく食べたのに今日は全く食べない、なんてことはよくあるので、あまり気にしないようにしましょう。

それでも、楽しかった!という経験は子どもの記憶に残ります。楽しい経験を積み重ねたら、大人になる頃には野菜も食べられるようになる可能性は増えますよ。

嫌な経験をすると嫌いになる

嫌な経験をすると嫌いになる

私たちは食べ物にまつわる嫌な経験をすると、その食べ物自体を嫌いになります。

「好きな食べ物だったのに、あたって(食べすぎて)吐いたら、それ以来食べられなくなった」という話はよく聞きますよね。

克服のための脳メカニズムは、その解明も進んでいる(*4)ほど、有名な現象です。

子どもの場合、「見た目がいや」「匂いがいや」「噛みきれなかった」「歯に挟まったことがある」など、大人からすると「それで!?」という、ささいな理由が「嫌な経験」にカウントされていることも。

対策としては、嫌な理由を減らし、楽しい経験を増やしましょう。

●グラタンやチャーハンなど、子どもが好きな見た目に変えてみる。

参考:【管理栄養士考案】子どもに人気のメニューで腸活!「根菜たっぷり豆乳みそグラタン」

ただし、子どもに隠して入れる「だまし討ち」はNG!親への信頼をなくすうえに、好きな食べ物さえ嫌いになる「嫌な経験」になってしまうかも。

●調理前に一度ゆでる。匂いが減ったり、噛みやすくなったりします。

●食べやすい大きさに切る。

●一緒に料理する、外で食べるなど、その食材にまつわる楽しい経験を増やす。

お友達と一緒にたこ焼きパーティー!など、楽しくて思わず食べちゃうような環境作りもおすすめです。

野菜が嫌いでも大丈夫!野菜に楽しい記憶をくっつけよう

野菜が嫌いでも大丈夫!野菜に楽しい記憶をくっつけよう

ここまでお伝えしたことのポイントをまとめます。

●子どもが野菜を嫌いなのは自然なこと。好きになれるように、見慣れ、食べ慣れさせてあげよう。

●嫌な理由を取り除き、非日常で食べる機会を作ろう。(それでも食べないこともよくある。でも楽しい記憶は残る)

●楽しく食べることが大切。嫌いな野菜でも、楽しい記憶をつくってあげよう。

あなたが子どもの好き嫌いに悩んでしまうのは、子どもの成長を誰よりも願っているからです。

だからこそ、子どもの「今」の心の成長に目を向けて、「野菜が嫌いでも大丈夫。でも、食事の場を好きになれるように」意識してみてくださいね。

引用

*1:厚生労働省. 平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要

*2: 木口智美、石原由香、多田由紀、古庄律、内藤信、日田安寿美、川野因. 小学校給食における喫食時間と残食率の関連性の検討. 日本栄養士会雑誌. 2012; 55(5):35-42

*3:淀川尚子、徳永淳也、丸谷美紀、波多野浩道. 母子の食物新奇性恐怖と食生活コミュニケーションが 野菜摂取におよぼす影響. 民族衛生. 2016;82(5):183‒202

*4: Hiroki Toyoda. CB1 cannabinoid receptor-mediated plasticity of GABAergic synapses in the mouse insular cortex. Scientific Reports. 2020;10:7187.