慢性的な便秘に悩む方が多い現代、食物繊維不足が指摘されています。そんな中、豊富な水溶性食物繊維「β-グルカン」を含む“オーツ麦(オートミール)”が注目の的です。最新の研究では、β-グルカンが「便通改善」だけでなく「腸内環境の健全化」にも寄与する可能性が示唆されています。本記事では、オーツ麦β-グルカンの実力や研究からわかってきたメカニズムをわかりやすく解説します。 

オーツ麦β-グルカンとは?

β-グルカンは、水溶性食物繊維の一種です。特にオーツ麦(オートミール)や大麦に多く含まれており、腸内で水分を吸収してゲル状になる特徴があります。また、善玉菌のエサとして作用する「プレバイオティクス効果」も期待されています(*1)。つまり、β-グルカンは便のかさ増しと腸内細菌のサポートという“二重のアプローチ”で、便秘と腸内フローラ改善の両面に働きかけられるのです。

便秘改善へのメカニズム 

1. ゲル化による排便促進 

オーツ麦に含まれるβ-グルカンは、水分を含むと粘性の高いゲル状になり、便のかさや柔らかさを保ちます。その結果、便がスムーズに腸内を移動できるようになり、排便回数が増えたり、下剤への依存度が低下するなど、便秘解消に有効な結果が示されています。ある臨床試験では、高齢者食にオーツ麦ふすまを12週間加えたところ、被験者の約59%が下剤を中止できたとの報告があります(*1)。これは、対照群が8%しか下剤を中止できなかったことと比べても、オーツ麦由来の食物繊維が便秘対策として有用であることを示す好例です。 

2. 生活の質(QOL)の向上 

便秘解消は単に“出る・出ない”の問題にとどまらず、“生活の質(QOL)”にも影響します。先の臨床試験では、下剤が不要となった被験者だけでなく、体重維持や体調面での安定なども同時に確認されています(*1)。便秘改善がもたらす日常生活の快適さは想像以上に大きく、継続的にオーツ麦を摂取する意義は高いと考えられます。 

腸内細菌叢への好影響

1. 善玉菌を増やす「プレバイオティクス効果」

β-グルカンは、大腸まで届いて善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸など)の産生を促します。これら短鎖脂肪酸には、腸管の蠕動運動を活発化させる、腸粘膜を保護するなどの働きがあるとされ、腸内環境全体を良好に保つ鍵を握っています(*2)。 
例えば、炎症性腸疾患の寛解期患者を対象とした研究では、オーツ麦ふすまを取り入れた群で、酪酸のレベルが上昇し、消化器症状の悪化が抑えられたとの報告があります(*2)。善玉菌が短鎖脂肪酸を作り出すことで、腸内細菌叢のバランスが整い、結果的に便通を安定させる一助となっている可能性があります。 

2. 善玉菌(アッカーマンシア菌・ビフィズス菌)の増加 

さらに、オーツ麦由来のβ-グルカンは、アッカーマンシア菌やビフィズス菌などの有益菌を増やすことでも知られています(*3)。アッカーマンシア菌AuB.は腸の粘膜層に生息し、腸管バリア機能の維持や代謝改善に関与する菌として近年注目を集めています。これら“善玉菌の増殖を選択的に促す”ことで、便秘だけでなく、腸漏れ(リーキーガット)や慢性炎症などを含む広い範囲の健康リスクを軽減できる可能性が示されています。 

オーツ麦を生活に取り入れるコツ

オーツ麦の“腸活効果”を得るためには、毎日の食事に無理なく取り入れることがポイントです。 

  1. 白米と一緒に炊飯する、スープに混ぜる 
    白米と一緒に炊飯することで、普段のご飯に自然にプラスでき、継続しやすくなります。他にも、白米の代わりやスープに混ぜて手軽に摂取できます。β-グルカンを効率よく摂るには、調理時に水分をしっかり含ませるのがコツです。 
  2. シリアル・グラノーラとして
    牛乳やヨーグルトと一緒に食べれば、腸活食材を組み合わせた相乗効果も期待できます。ナッツや果物などと組み合わせると栄養バランスもアップ。 
  3. スムージーやドリンクに混ぜる
    時間がないときでも、粉砕したオートミールをスムージーに加えるだけで手軽に摂取可能です。食物繊維を増やしたい人にとって便利な方法です。

なお、食事全体のバランスや水分摂取も大切。塩分・糖分の多い食事が続けば、いくらオーツ麦を摂っても効果が得にくい場合もあります。便秘や腸内環境の悩みが強い方は、専門家に相談しながら継続的に取り入れてみましょう。

まとめ

オーツ麦に含まれるβ-グルカンは、物理的な排便サポート(便のかさ増しや軟化)と、腸内細菌叢のバランスを整えるという二重のメカニズムで、便秘に悩む方にとって心強い存在と言えそうです。さらに、短鎖脂肪酸の産生や善玉菌の増殖といった腸内フローラ改善の働きは、全身の健康を支える基本でもあります。 
「オーツ麦は味気ない」というイメージがあるかもしれませんが、調理法や他の食材との組み合わせ次第でバリエーション豊かに楽しめます。日々の食事に少しずつ取り入れ、継続して摂ることで、腸から健康を底上げしてみてはいかがでしょうか。 

引用文献

*1: Sturtzel, B., & Elmadfa, I. (2009). Use of oat-fiber instead of laxative treatment in a geriatric hospital: A controlled study. Journal of Nutrition, Health & Aging, 13(2), 136-139. doi: 10.1007/s12603-009-0020-2 

*2: Nyman, M., Nguyen, T. D., Wikman, O., Hjortswang, H., & Hallert, C. (2020). Oat bran increased fecal butyrate and prevented gastrointestinal symptoms in patients with quiescent ulcerative colitis: A randomized controlled trial. Crohn’s & Colitis 360, 2(1), otaa005. doi: 10.1093/crocol/otaa005 

*3: Xu, D. et al. (2021). The prebiotic effects of oats on blood lipids, gut microbiota, and short-chain fatty acids in mildly hypercholesterolemic subjects compared with rice: a randomized, controlled trial. Frontiers in Immunology, 12, 787797. doi: 10.3389/fimmu.2021.787797