あなたはいつ、お風呂に入りますか?帰宅してすぐ、寝る前、はたまた出かける前など、タイミングは人それぞれかと思います。

湯船に浸かると、心がホッとして、凝り固まった疲れが取れていくような気がしますよね。実はこれは気のせいではなく、入浴が疲労回復に良いことは、科学的にもきちんと証明されているのです。

そこでこの記事では、すこやかな毎日を送る手助けとなる、お風呂の有効性や入浴方法をお伝えします!

入浴温度によって自律神経への影響が違う

入浴が疲労回復に役立つ効果のひとつに、「入浴の温度によって、自律神経系に異なる影響を与えることができる」ということがあります(*1)。

私たちの体は、血液が体内を循環し、お腹に食べ物が入れば自然と消化を行うなど、さまざまな生命活動をしています。これらの「私たちの意思とは無関係に行われる体の働き」を調節しているのが、自律神経です。

自律神経には、アクティブな場面(オンのとき)で優位になる「交感神経」と、リラックスする場面(オフのとき)に優位になる「副交感神経」があります。体内のオンとオフの切り替えがスムーズにいくことで、生活リズムが整いすこやかな毎日を送れるようになります。

1日の終わりにはぬるめのお湯

1日の終わりには、40℃前後のぬるめのお湯に浸かるのがおすすめです。
成人男性を対象とした研究では、38°Cの温水に浸かることで、副交感神経活動がわずかに増加することが観察されました(*1)。副交感神経の活動が刺激されることで、リラックス効果がもたらされます。10-20分ほど、ゆったりと浸かるのがおすすめです。

これから活動する時は熱めのお湯

反対に、朝など「これから活動する」というシーンでは、42℃程度の熱めのお湯に短時間浸かるのがおすすめです。先ほどと同じ研究において、熱いお湯に浸かることで、交感神経が活発になることや、心拍数の上昇が確認されました(*1)。交感神経が活発になることによって、活動を始める準備が整います。入浴時間は5分以下と短めにするのが望ましいでしょう。

入浴で血の巡りが促進されて疲れがとれる

ここでは、どうして入浴により疲れがとれるのかをご説明します。

まず、温かいお湯に浸かると、体温が上昇したり(*2)、水圧が全身に均等にかかることで血流が中心部に集まったり(*3)し、血液が体の中を巡る動きが促進されます。すると、次のような理由から疲労回復効果が期待できます(*2)。

酸素や栄養分が体の隅々まで行き渡る

体が温まると血管は拡張します。血の巡りがよくなると、体の隅々まで酸素や栄養が届くようになり、これによって疲労回復が促進されるとされています。

筋肉のこりやむくみが改善される

体が温まり血の巡りが良くなることで、代謝が活性化します。それにより、筋肉の疲労や痛みが軽減される効果が期待できます。

新陳代謝が促進される

血流量が増えることで、老廃物を体の外に出す働きが促進されます。それにより、疲労回復や、精神的リフレッシュが得られる可能性があります。また、体温が上がり酸素や栄養素が体の隅々に行き渡ることで、体を修復する働きも促進されます(*3)。

入浴の際に気をつけたいこと

「お風呂に入ると余計に疲れる」と感じている方は、もしかしたら入り方に工夫が必要かもしれません。入浴による疲労回復効果を最大限に引き出すためには、次のことに気を配ってみてください。

入浴前後に水分補給をする

お湯に浸かっていると気づきにくいですが、入浴では汗をかきます。入浴の前後にコップ一杯の水を飲み、脱水や熱中症を予防しましょう。

入浴時間や温度の調整

リラックスしたい・ゆっくり眠りたいという時に熱い湯に浸かると、交感神経が刺激されて逆効果になります。また、長すぎる入浴時間は、脱水や熱中症にもつながります。自身の心身の健康状態に合わせて、入浴時間や温度を調整しましょう。

浴室と脱衣所の温度差に気をつける

特に冬場、寒い脱衣所と熱いお風呂という急激な温度変化により、血圧が大きく変動し血管や心臓に大きく負担がかかる「ヒートショック」という状態が起こりやすくなります。脱衣所に簡易的な暖房を置いて温めるなどし、なるべく浴室と室温の差を小さくする工夫をしましょう。
また、湯に浸かる前にシャワーやかけ湯をする、湯船からはゆっくり立ち上がるなど、血圧を急変動させないよう意識するのがおすすめです。

入浴効果を高める方法

ここでは、入浴をよりリラックスした空間にするためにおすすめの方法をご紹介します。

半身浴・部分浴をする

全身浴では息苦しさを感じる方、よりリラックスしたい方には半身浴がおすすめです。
冬場など、半身浴では温まらないと感じる場合には、浴槽で濡らした(温めた)タオルを肩にかけながら入浴すると良いでしょう。
どうしてもお風呂に入る気分になれないという時は、浴槽に半分程度お湯をはり足湯をするだけでも、体が温まります。

アイマスクをする

浴槽で濡らした(温めた)タオルを目にかけるのもおすすめです。目の周りが集中的に温められ、緊張が和らぎます。目の疲れにはもちろんのこと、リラックスできますよ。

入浴剤を使う

リラックスしたバスタイムの演出には、入浴剤の使用もおすすめです。
実は入浴剤とは、厚生労働省によって効果・効能が認められた医薬部外品のことであり、それ以外には、保湿やスキンケアなどを目的とした入浴化粧料や、単に色や香りなどを楽しめる雑貨に大別されます。
入浴に疲労回復を期待する場合は、効果の視点で医薬部外品の入浴剤を選ぶのもいいですし、好きな色や香りを選んでリラックスするのもおすすめです。

入浴でリラックスして疲れを取ろう

現代社会では、忙しさに加えて、つい寝る直前までスマホ画面を見てしまうなど刺激が多く、なかなかリラックスする時間が取れません。入浴のひとときにちょっとした工夫をし、リラックスして疲れが取れる環境にしてみてはいかがでしょうか。

引用文献

*1:Kataoka, Y, et al. The change of hemodynamics and heart rate variability on bathing by the gap of water temperature.Biomed Pharmacother. 2005 Oct:59 Suppl 1:S92-9.

*2:Goto Y, et al.Physical and Mental Effects of Bathing: A Randomized Intervention Study.Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Jun 7:2018:9521086. 

*3:Meyer K , et al. Aquatic therapies in patients with compromised left ventricular function and heart failure. Clin Invest Med. 2008;31(2):E90-7.