咳や鼻水など、発熱以外にも呼吸器に症状が出る風邪が流行りやすい冬。なかでも猛威を振るうのが、インフルエンザです。インフルエンザにより、かかった本人のつらさや医療費の負担はもちろんのこと、会社や学校で欠勤・欠席者が増えることで、生産性も大きく低下します。関西大学宮本勝浩名誉教授による試算では、インフルエンザによるマイナスの経済効果はなんと約6,628億円だそう!(*1)
厚生労働省は、インフルエンザ総合対策として次のように感染防止について述べています(以下、厚生労働省ホームページより抜粋引用(*2))。
- インフルエンザをはじめとする感染症の予防には、「手洗い」「マスクの着用を含む咳(せき)エチケット」などが有効。
- インフルエンザワクチンには、発症をある程度抑える効果や、重症化を予防する効果があり、特に高齢者や基礎疾患のある方など、罹患すると重症化する可能性が高い方には効果が高いと考えられます。
それでも毎年流行するインフルエンザを筆頭とした風邪症候群。日常的にできることがないかと考えるあなたにおすすめしたいのが、腸活です。最近、インフルエンザにならない体づくりとして、「プロバイオティクスの摂取が有効である」という報告が多数されています。
そこでこの記事では、科学的根拠に基づいた「腸活とインフルエンザ予防」についてお伝えします。
プロバイオティクスの摂取がインフルエンザ予防に有効!
「腸内フローラのバランスを改善することで、人の健康に好影響を与える微生物」をプロバイオティクスといいます。動物実験において、プロバイオティクスを投与したマウスでは、投与していないマウスに比べてインフルエンザに感染させた際の症状軽快が早かったことや、生存率が高くなりました(*3)。
さらに、健康な幼児や成人を対象とし、プロバイオティクスである乳酸菌やビフィズス菌を投与したいくつかの臨床研究において、呼吸器疾患が減ることや、病気の期間短縮、インフルエンザ予防効果なども示されました(*3)。このメカニズムには、プロバイオティクスの摂取によって、病原体やウイルスなどの異物を排除するIgA抗体が増えることが理由の一つとして考えられています。免疫の7割もが腸で働くと言われているからです。
つまり、腸内環境を整え免疫細胞を適切に向上させておくことは、「ウイルスが入ったとしても発症しない」「発症しても重症化しない」など、寒さに負けない体づくりが期待できるのです。
参考:【病気にならない体づくりは腸から】病原菌やウィルスから身体を守る「免疫力」の重要性
冬におすすめなプロバイオティクスの摂り方
プロバイオティクスの代表的な例に「乳酸菌」と「ビフィズス菌」があります。サプリメントでも摂取できますが、「ヨーグルト」「ぬか漬け」「キムチ」などの発酵食品からも手軽に摂取できます!
ただ、これらの食品は冷たいので、暑い夏には食べやすくても、冬にはちょっとつらい日もありますよね。そこで、冬にプロバイオティクスを美味しく食べるコツをご紹介します。
- ヨーグルト
「キッチンペーパーを敷いたザルにヨーグルトをのせて数時間置くと、水切りヨーグルトができます。水分が減り体積が小さくなるので、パクッと食べやすくなりますよ。腸内細菌のエサとなるオリゴ糖を甘味に加えれば、クリームチーズのような味わいで美味しいです。水切りの際は必ず、下に受け皿を置きましょう。残った液体(ホエイ)にもたんぱく質などの栄養があるので、スープに使ったり、めんつゆをまぜてドレッシングにしたりと、ぜひ捨てずに活用するのがおすすめです。 - ぬか漬け
冬のぬか漬けは小皿に盛らず、温かい料理に加えるのがおすすめです。たとえば、お茶漬けや雑炊にのせたり、食べる直前にスープに加えるなどです。ぬか漬けに塩分があるので、料理自体は少し薄めに作るのがコツ。刻んで温野菜に混ぜれば、ドレッシング不要で野菜を摂れます。 - キムチ
冬のキムチといえば、やはりキムチ鍋がおすすめです。キムチに含まれる乳酸菌は、加熱によって死菌になることがありますが、死菌であっても腸内環境に良い影響を与えることが分かっているのでご安心くださいね。仕上げにさらに後乗せすることで、生きた乳酸菌を取り入れる工夫をしてみてはいかがでしょうか。鍋にはたっぷりの野菜やきのこを入れると、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスを同時に摂ることができるので、腸活効果がさらにアップします。
プロバイオティクスを取り入れて、風邪に負けない体づくりをしよう
プロバイオティクスの摂取は、腸内環境を整え免疫力を高めることを通して、インフルエンザや風邪の予防に役立つとされています。また、温かい料理そのものが体を温める効果があり、寒い冬にぴったりの健康対策となります。キムチ鍋やぬか漬けを使ったスープなど、工夫次第でプロバイオティクスを美味しく温かく取り入れることができます。発酵食品によるプロバイオティクスと、野菜などからのプレバイオティクスの両方を積極的に取り入れながら、寒さに負けない健康な体づくりを目指しましょう。
引用文献
*1: 関西大学プレスリリース.宮本勝浩 関西大学名誉教授が推定 「インフルエンザによるマイナスの経済効果」は 6,628 億 263 万円