「歯磨きをしているのに虫歯や歯周病が気になる」「腸活をしているのに効果が実感できない」そんな悩みを抱えていませんか?実は、これらの問題は密接に関連していることが最新の研究で明らかになってきました。
口の中の健康と腸の健康は深く結びついており、適切な口腔ケアが腸内環境の改善につながることが分かってきました。丁寧な歯磨きを心がけることで、虫歯や歯周病の予防だけでなく、腸の健康も同時に改善できる可能性が広がっているのです。
毎日の歯磨きを見直してみませんか?この記事では、口腔ケアと腸活の新しい関係性について、最新の研究結果をもとにわかりやすく解説していきましょう。
口の中と腸の中の細菌は密接につながっている

人間の口の中には、約700種類以上もの細菌が住んでいます。これらの細菌は唾液や舌、歯ぐき、頬の内側など、様々な場所で生活しているのです(*1)。
これらの細菌の多くは、私たちの健康を支える良い働きをしています。一方、腸の中にも多くの細菌が住んでおり、食べ物の消化や栄養の吸収を助けたり、免疫力を高めたりする重要な役割を担っているのです。
最近の研究では、口の中と腸の中の細菌が密接につながっていることが明らかになってきました。特に、口の中の細菌の状態が腸内環境に大きな影響を与えることが分かってきたのです。
歯の健康が腸の健康に影響を与える

歯周病などで口の中が不健康な状態になると、それが腸内環境にも悪影響を及ぼすことが分かってきました。口腔内の悪玉菌が、唾液と一緒に飲み込まれて腸まで到達し、そこで炎症を引き起こす可能性があるのです(*2)。
通常は胃酸や胆汁の働きによって、口から腸への細菌の移動は制限されています。しかし、赤ちゃんや高齢者、体の調子が悪いときには、この防御機能が弱まり、細菌が移動しやすくなることがあるでしょう。
興味深い研究結果として、抗菌性マウスウォッシュの使用が腸内細菌叢に大きな影響を与えることが報告されています(*3)。高脂肪・高糖質の食事(西洋型食事)を摂取しているマウスでは、マウスウォッシュの使用により口腔内環境が乱れ、腸内細菌の多様性が低下し、脂質やタンパク質の吸収にも影響が見られたのです。
このような研究は、口腔ケア製品の使用方法にも示唆を与えています。殺菌効果の強い製品を頻繁に使用することは、腸内環境にも影響を及ぼす可能性があることを示唆しているのです。
口から腸への細菌の移動について

私たちが普段何気なく飲み込んでいる唾液には、実はたくさんの細菌が含まれています(*2)。健康な人の場合、胃酸や胆汁の働きによって、これらの細菌の多くは腸まで到達する前に無害化されます。
加齢や胃酸の分泌を抑制する薬の使用による影響で胃酸が少なくなったりすると、口の中の細菌が腸まで届きやすくなります(*2)。そのため、口の中の健康管理が腸の健康にも大きく影響するという仕組みが明らかになってきたのです。
唾液の重要な役割
唾液は、単に食べ物を飲み込みやすくするだけではありません。実は、病気の原因となる細菌やウイルスから体を守る重要な働きをしているのです。
特に、唾液に含まれる免疫物質(IgA)は、悪い細菌やウイルスにくっついて、それらが体の中に入り込むのを防いでいます。この免疫物質が少ない人は、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
効果的な口のケアと腸の健康を保つ方法
丁寧な歯磨きは、歯周病の原因となる悪い細菌の増殖を防ぎ、健康的な口内環境を保つのに役立ちます。これにより、悪い細菌が腸に移動するのを防ぎ、結果として腸の健康維持にもつながっていくのです。
とりわけ起床直後の歯磨きは重要で、就寝中は唾液の分泌量が減少するため、細菌が増殖しやすくなります。そのため朝は口腔内の細菌が一番多いため、歯磨きをせずに朝食を食べたり水を飲むことは腸に口腔内細菌が流れ込むリスクが高くなると考えられます。
歯磨き後の味覚変化が気になる方は水のみでのブラッシングや、味覚変化しにくい歯磨き粉を選ぶのがおすすめです。
口腔ケアと腸活を組み合わせた健康管理のコツ

効果的な健康管理には、口腔ケアと腸活の両方に気を配ることが重要です。
腸の健康のためには、ヨーグルト、味噌、キムチなどの発酵食品や野菜、果物、全粒穀物などの食物繊維を十分に摂取することが大切です。最新の研究によると、食物繊維の摂取により腸内の短鎖脂肪酸が増加し、それが口腔内の免疫力増加につながったと報告されています(*4)。そのため腸ケアは口腔ケアにつながると考えられます。
十分な水分摂取も重要なポイントとなります。適切な水分補給により唾液の分泌が促され、口腔内の自浄作用が高まることが期待できます。また、水分は腸の働きも助け、便秘の予防にも期待できます。
まとめ:毎日の小さな習慣が大きな健康効果を生む
口腔ケアと腸活は、互いに密接に関連し合い、相乗効果を生み出すことが最新の研究で明らかになってきました( *2)。適切な歯磨きの習慣と、バランスの取れた食事を心がけることで、口腔内と腸内の両方の環境を健康に保つことができるのです。
今日からでも始められる具体的な行動として、朝一番に歯磨きをすることや、食物繊維が豊富な食品を意識的に選ぶことから始めてみましょう。
これらの小さな習慣の積み重ねが、やがて大きな健康効果につながっていくことでしょう。
引用文献
*1: Kolenbrander PE, et al. (2006) Bacterial interactions and successions during plaque development. Periodontol 2000.
*2:Kitamoto S, Nagao-Kitamoto H, Hein R, Schmidt TM, Kamada N. (2020) The Bacterial Connection between the Oral Cavity and the Gut Diseases. J Dent Res.
*3:Antibacterial mouthwash alters gut microbiome, reducing nutrient absorption and fat accumulation in Western diet-fed mice. Scientific Reports volume 14, Article number: 4025 (2024)
*4:Yamamoto Y, et al. (2020) Faster Short-Chain Fatty Acid Absorption from the Cecum Following Polydextrose Ingestion Increases the Salivary Immunoglobulin A Flow Rate in Rats. Nutrients.