御節(おせち)料理とは、節日(節句)に作られる料理のこと。 節日のうち最も重要なのが正月であることから、正月料理を指すようになりました。新年に年神様をお迎えし、お供えしたおせち料理を家族で分け合うことで、その年の幸せを願ったと言われています。 
おせち料理は、「祝い肴」「口取り」「焼き物」「酢の物」「煮しめ(煮物)」の5つに分けられ、20〜30種類ほどの品数が一般的です。色とりどりのお料理が詰められた重箱は、見るだけで幸せを感じますよね。
そんなおせち料理には、腸に良い食材が使われていたり、ちょっとした工夫でさらに腸が喜ぶ工夫ができます!新しい年の始まりに、おせち料理を楽しみながら腸活してみませんか?

祝い肴(いわいざかな)

祝い肴は、お祝いの場にふさわしい酒の肴として用意される、おせちに必須の三種類の料理です。関東では黒豆・数の子・田作り、関西では黒豆・数の子・たたきごぼうを用意することが多いです。一の重に詰められます。

料理に込められた意味

  • 黒豆:健康・勤勉、邪気払い
    「まめ(健康で勤勉なこと)」に通じる言葉遊びから、健康で元気に一年を過ごせるようにとの願いが込められています。また、黒豆の黒々とした輝きには、邪気を払う力があるとも考えられています。
  • 数の子:子孫繁栄
    ニシンには、一腹に卵がたくさんできる様子から、新しい命が増え、家族が繁栄するようにという願いが込められています。
  • 田作り:豊作
    田作りとは、小魚(イワシなど)を乾燥させて甘辛く調理した料理です。かつてイワシを田畑の肥料として使用していたことにちなみ、豊作を祈願する意味が込められています。
  • たたきごぼう:長寿、安定、開運
    たたきごぼうとは、ごぼうを叩いて味を染み込ませた料理です。ごぼうは土に深く根を張る植物であることから、家族や暮らしがしっかりと地に足をつけて安定するよう願われています。

腸活ポイント

黒豆やごぼうは、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスである「食物繊維」や「オリゴ糖」を多く含む食品です。さらに、甘く煮る際には、砂糖の代わりにオリゴ糖を使うのもおすすめです!

口取り

口取りとは「口取り肴」の略称で、おもてなしの際にお吸い物と共に最初に出す料理のことです。山の幸や海の幸を使い、甘い味付けのものが多いです。定番料理には、 栗きんとん、伊達巻、紅白かまぼこ、昆布巻きなどがあります。一の重に詰められます。

料理に込められた意味

  • 栗きんとん:金運
    きんとんとは金団と書き、財運や富を表しています。その色と甘さから、「金銀財宝が増え、幸運が訪れるように」との願いが込められています。
  • 伊達巻き:文化、学問、教養
    伊達巻きは、甘い卵焼きに魚のすり身を加え、巻物状に作られます。その形が巻物や書物を思わせることから、知識や教養を得ることや特に学問や文化の発展を願う意味が込められています。
  • 紅白かまぼこ:お祝い
    紅白かまぼこは、その色合いがお祝い事に使われる装飾を連想させます。赤は「魔除け」、白は「清浄」を象徴し、幸せと平和を願う意味があります。また、かまぼこの形が日の出に似ているため、「新年の幕開け」を祝う料理としても親しまれています。
  • 昆布巻き:幸運、不老長寿、子孫繁栄など
    昆布巻きは、「喜ぶ(よろこぶ)」「養老昆布(ようろうこんぶ)」「子生(こぶ)」など語呂合わせから、さまざまな幸福を願う料理とされています。また結ばれている姿は人との絆を表しています。

腸活ポイント

栗きんとんや伊達巻には、お砂糖の代わりに麹甘酒を使うことでより優しい味わいが楽しめます!
発酵食品である麹甘酒にはお腹の調子を整えて便秘を改善する効果が期待できます(*1)。
伊達巻きの手作りは、ハードルが高いという方には、巻かない伊達巻きもおすすめです。
また、おせち料理の砂糖の量が気になる方や、いつもとちょっと違うおせち料理の一品を楽しみたいという方は、クリームチーズを干し柿で巻いた「クリチロール」はいかがでしょうか。
天然の甘みが美味しい干し柿には、食物繊維が豊富に含まれます。

焼き物

焼き物は、おせちのメインディッシュとなる料理です。縁起がいいとされる海老や鯛(タイ)の姿焼き、切り身を使用した西京焼きなどの魚介類や、松風焼きなどの肉料理が定番です。二の重に詰められます。

料理に込められた意味

  • 鯛(タイ):お祝い
    鯛は「おめでたい」にかけて、日本のお祝い事には欠かせない魚です。
  • 鰤(ブリ):出世
    成長するに従って名前が変わる鰤は、別名「出世魚」とも呼ばれて、照り焼きなどでおせち料理に使われます。出世への願いが込められています。同じく出世魚の鰆(サワラ)の西京焼きなども好まれます。
  • 海老(エビ):長寿、縁起の良さ、出世
    長いヒゲに曲がった腰が、長寿を連想させるエビ。赤い色や目が出ているところが「めでたい」として縁起物として重宝されています。
  • 松風焼き:隠しごとなく正直に生きる
    松風焼きは、味付けをした鶏のひき肉を型に入れて焼き、表面にごまやケシの実を飾ります。裏面にはなにもないことから「裏がない=隠し事がない」として、まっすぐに生きることへの願いが込められています。

腸活のポイント

タイやブリなど、魚からはDHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸を摂取することができます。
オメガ3系脂肪酸は、私たちの体中で作れず食事からの摂取が必要です。それだけではなく、最近の研究では、オメガ3系脂肪酸には腸内細菌のバランスを整える役割を果たしている可能性が示されています(*2)。
ごぼうとオリゴ糖を加え、お腹に優しい松風焼きを、管理栄養士が考えました!型もオーブンも不要で、フライパンで焼けますよ。

酢の物

おせち料理の中でも、口直しや箸休めの役割をするのが酢の物です。紅白なますや飾り切りが美しい菊花かぶや酢れんこんなど、彩り豊かなおせち料理です。三段重では二の重に、四段重では三の重に詰められます。

料理に込められた意味

  • 紅白なます:お祝い
    細長く切った大根とにんじんを甘酢で和えた紅白なますは、紅白かまぼこと同じく赤と白でお祝い事を象徴しています。
  • 菊花かぶ:長寿と健康
    菊花かぶは、かぶを菊の花のように細工して甘酢で漬けた料理です。長寿を象徴するかぶを、おめでたい菊の花の形に切ることで、おせちに彩りを添えながら長寿と健康を願います。
  • 酢れんこん:明るい将来
    れんこんの穴が「先を見通す」ことを象徴し、将来の見通しが明るくなるよう願いを込めています。

腸活のポイント

おせち料理の中でも低カロリーでサッパリと楽しめるのが、酢の物です。体重が気になる方は、積極的に食べましょう。また、ここでも、お砂糖の代わりにオリゴ糖を使用するのがおすすめです。

煮しめ(煮物)

おせち料理には欠かせないのが煮物です。食材や味付けは地域によって異なりますが、ごぼう、れんこん、たけのこ、くわい、人参、里芋、こんにゃくなど、山の幸がふんだんに使われています。三段重では三の重に、四段重では与の重に詰められます。

料理に込められた意味

さまざまな食材を一緒に煮ることから、「家族が仲良く、末長く繁栄できますように」という願いが込められています。

腸活のポイント

煮物の味付けには、塩麴や醤油麹がおすすめです。塩麹は素材の野菜や肉をやわらかくし、甘味や旨味をアップさせる働きがあります!また、腸内に多様な菌を育てるためには、多様な食材を摂ることが大切です。
食物繊維が豊富な根菜を中心に多くの野菜を味わえる煮しめは、腸内細菌のエサを増やすことにつながります。

おせち料理で健やかな一年のスタートを

ひとつひとつの料理にさまざまな願いが込められたおせち料理には、腸活に役立つ発酵食品や食物繊維が豊富な食材も多く含まれています。
伝統の味わいを楽しみつつ、腸内環境も整えて、心身ともに健やかな一年をスタートさせましょう。

引用文献

*1:住吉 和子、中尾 美幸:便秘に対する甘酒摂取の効果 Japanese Journal of Nursing Art and Science Vol.16, pp 36-40, 2017

*2:Mennni C, et al. Omega-3 fatty acids correlate with gut microbiome diversity and production of N-carbamylglutamate in middle aged and elderly women. Sci Rep. 2017 Sep 11;7(1):11079