・2023年12月15日(金)開催

・タイトル:「全ては日本サッカーの発展と恩返しのために」名アナウンサー桑原学を突き動かす原動力と徹底した準備力

・登壇:桑原学 氏(フリーアナウンサー/サッカー実況者)

・モデレータ:鈴木啓太(AuB株式会社 代表取締役)

下田さん自身が現在日常的に取り入れているコンディショニング術

talk theme①

桑原さん、今日はよろしくお願いします!早速ですが、桑原さんご自身が現在日常的に取り入れているコンディショニング術というところを、1つ目のテーマとしてお聞きしていきたいと思っております。

実況の方は生活のリズムを作るのが大変な一方、生放送が多いと言う仕事柄、コンディションを少しでも崩せないのかなと思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

不規則なのももちろんですが、深夜に働くことがとても多いんですよね。なので、本番にいかに頭が冴えた状態に持っていくかというところが、一番実況者として必要なコンディショニングかもしれません。

特に、深夜中継が一番コンディショニングが重要かなと。

深夜中継が多いと生活のリズムとしては夜型になるのですか?

そうですね。とはいえ日中は情報を整理したいので、完全に夜型と言うわけではありません。合間に仮眠を多めに取るぐらいで。

若い頃はJリーグの実況の後に、寝ずにそのままヨーロッパの試合を実況していましたが、今はちゃんと仮眠を取らないと体力的にも集中力というところでも難しくなってきています。

え?Jリーグの実況をしてその後ヨーロッパの試合を2試合実況するんですか?

はい。最近は少なくなってきましたけど、今でもたまにやっていますよ。

その時ってどんなテンションですか?笑

テンション?(笑)

例えば1日3試合中継があるとして、僕にとっては3試合目だったとしても、視聴者の方にとっては、その3つ目の試合が唯一見たい試合というケースも当たり前のようにあるわけですよね。

確かに。深いですね。

なので3つ目の中継だから力を抜いてということは絶対にできません。1つ1つリセットして100%で臨むようには心がけてはいます。

変な質問ですけど、見ていて面白い試合もあれば、この試合の実況するの辛い・しんどいみたいな時もありますよね?

もちろんあります、それが3試合目だったときは結構しんどかったりします(笑)

ただ、だからと言って僕が変に盛り上げることも必要ないと思いますし、ありのままを伝えようとは思っています。とはいえ膠着したゲームだったり、あまり動きがないゲームだと眠くなってしまうことはあるので、かなり気をつけています。

桑原さん的に、「このチームの試合はいつも面白いからテンション上がる」みたいなものもあったりするのでしょうか?

攻撃的なチームの方が黙ってても面白くなりますし、チームスタイルによって点が入りやすいチームと入りにくいチームがありますよね。点が入りにくいチーム同士だと、実況としては時々難しい試合もありますね。

確かに。

でも、例えば久保建英選手のいるレアル・ソシエダの試合は、彼を見ているだけでも面白いなと感じます。それに加えてチームスタイルも面白いので、実況としてはやりやすいです。

試合のテンポによって、それだけで喋りやすい・喋りづらいとかもあります。これは海外サッカーに限らずJリーグでも同様ですが。

桑原さんは5大リーグ全て実況されていますよね?

はい。

このリーグは実況として喋り辛いなみたいなのはありますか?セリエAとか…

イタリアも近年は攻撃的で面白いチームが多くなってきたと思います。ただ、印象論もあると思うのですが、確かに以前だとセリエAは守備的なチームも多かったかもしれませんね。

そういうリーグとかだと、解説を求められてもきついんですよね(笑)

守備戦術を語るのが得意な方は合っているのかもしれませんね。

私はほぼ解説はやっていないので、そこまで偉そうなことは言えないんですけど(笑)

そういえば、僕が啓太さんと初めて仕事をさせてもらったのはチャンピオンズ・リーグの中継じゃないですか?

そうでしたっけ?

おそらくスカパーのチャンピオンズ・リーグ中継でご一緒させていただいたのが初めてだと思うんですよね。

僕が現役を引退してすぐのタイミングですかね?

そうだと思います。

現役引退後5試合くらい解説したのですが、3試合目で「これは向いていないからやめさせてくれ」とマネージャーに言ったんですよ(笑)

(笑)

マネージャーから「あと残りの2試合も決まっちゃっているからそれだけやってくれ」と言われて(笑)

その貴重な1試合が僕だったんですね(笑)

そうですね(笑)その頃からもうAuBを経営していたので、深夜に試合を見るとか無理なんですよね。名前も覚えれないし(笑)

(笑)

でも、両立はかなり難しいと思います。

私の話はここまでにしておいて(笑)

実況としてコンディショニングにおいて大事なのは、声とか喉、あとは頭がクリアになっているかというところなんですかね?

そうですね。

そのあたりで気をつけてらっしゃることはありますか?

このウェビナーに登壇させていただいてこんなこと言うのは憚られるのですが、これまで体調管理において細かく気を配っていたわけではないんです。

ただ、食事に気を使ったり、家では身体を休める時間もしっかり作ったりはしていますが。妻がきちんと食事を作ってくれるので本当に助かっています。

桑原さんは今ご年齢はいくつですか?

47歳です。今年48になる年です。

体調の変化ってあります?

ありますね。特にサッカーをやると変化を一番感じます。

今でもご自身でサッカーをやられているんですね。

自分の仲間との試合は仕事の都合で近年全く行けていないのですが、少年団のコーチをやらせていただいてるので、そこでこどもたちと一緒にボールを蹴ることで身体を動かすようにしています。

一緒に体幹をやったりとか、ストレッチしたりとかもしていますよ。

リスナーの方からこんなご質問が来ているんですが「あの試合、実は体調崩していました」みたいな裏話はあったりしますか?

ぱっと思い浮かぶものは無いですね。ただ、試合中にお腹が痛くなってしまったことはあります。2時間以上縛られるので途中で腹痛が起きたりとかはしばしば。

え?どうされるんですか?

もう耐えるしかないですね(笑)

ちょっとびっくりです(笑)

解説の方が今まで何度か生放送中に「ちょっともう我慢ができない」ということでトイレに席を立ったりというケースはあったのですが、実況サイドがいなくなると放送が成り立たなくなってしまいますからね。なので必ず我慢してますね。

でもそれは健康にとってはあまり良くないですよね(笑)

そもそもこんな不規則な仕事をしている時点で健康に良いことではないと思うんですけどね(笑)

実況がトイレに行くのも別にダメとは言われないと思いますけど、一応そこは責任を持ってやりたいと言う自分のマイルールでもあります。

なるほど。

元々、僕自身腸が強い方じゃないんです。ただ、身体が弱いかと言われたらそんなことはなかった。

なのでこれまでの人生そんなに体調管理を気にしてこなかったのですが、今回啓太さんにaub ambassadorに誘っていただいて、aubの商品で腸活を始めたことが自分の弱点にマッチしていたので、ありがたいなと。本当にいいきっかけになっています。

ありがとうございます!

内側から整えていただくのはすごく大事なことですし、実際にトップアスリートが私達の製品を使ってくれているのですが、体調管理は栄養学や運動、睡眠がすごく大事と言われているじゃないですか?

そうですね。

いろいろな競技のトップアスリートや、各界隈のやり尽くした人たちが体調管理で行き着くところって、結局腸なんですよ。

全ては腸から病気が始まる。ヒポクラテスと言う紀元前の方も腸の大切さを説いていて、これまで科学的に解明されていないけれども大事だと言われていたものが、最近科学的に解明されてきました。

そうなんですね。面白い。

ぜひ続けていただければと思います。

もう1つリスナーさんからいただいた質問で僕もすごく気になったものがあるのですが「眠気を覚ます術」はありますか?

すごい古典的な答えで申し訳ないんですけど…一応筆箱の中に刺激の強い目薬を入れています(笑)

(笑)

本当にそのぐらいしかやっていなくて。集中力を維持するということを、自分で心がけながらやるくらいしかしていないかなと言う感じですかね。でも大体3時間くらい睡眠時間を取れていれば問題なくやれますね。

すごい!やっぱり元々身体が強いんですね。

かもしれません。父親が身体に強い方なのですが、おそらく身体の作りは父親に似たのではないかなと。

ただ、それにかまけて何もせずに放置するというのは難しい年齢になってきているので、だからこそ今AuBプロダクトを用いての腸活をきっかけに、いろいろ模索していきたいなと思っているんです。

なるほど。

これは僕だけではなく同年代の同業の方と話していて話題に上がるんですけど、「目が衰えるね」と。

目ですか?

はい。動体視力であったり、視力だったり。

例えばJリーグのライブ中継の際に、放送席からピッチが遠いスタジアムがたくさんあるじゃないですか?そうなると、反対のバックスタンド側のサイドの選手の見分けは結構難しいんです。どうすれば一番見やすくなるかを自分なりに色々工夫しているものの。

海外の試合だとモニターですが、Jリーグの試合だとピッチを生で見ながらですもんね。

そうなんです。今何をアップにして映しているかと言ったようなことも、バランスよく伝えなければいけない。画面に今映ってるものは何なのかというところを見つつ、ピッチ全体を見てという使い分けになるのですが、そこにはやはり動体視力が大事。あとは選手をきちんと見分けられると言う意味では当然視力も大事。

この2つをできるだけ維持することが重要なのですが、加齢によって視力はどうしても落ちます。最近は、老眼対策も話題になるのですが僕も徐々に来ているところはあるんですよね。

実況者界隈の中では目がホットな話題なわけですね。

そうなんです。あとはメンタル的なところの方が広義の意味でのコンディショニングという点では大事なのかなと。自分が幸せに過ごせる時間を大事にするようにっていうのは心がけてますね。

いいですね。

仕事だけに追われてしまうとどうしてもストレスが溜まりすぎてしまうと思うんです。なので、忙しい中でもストレスを解放できる時間を必ず作れるように心がけています。

具体的には何をされているんですか?

今はこどもたちとサッカーをして一緒に過ごすことが一番幸せなので、睡眠時間を多少削ってでも大事にしています。

素敵です。

コンディショニングというとどうしても身体のメンテナンスをイメージされる方も多いのですが、身体と心が整ってこそのコンディションなので、どちらも重要なわけです。そういう意味では、身体のコンディショニングはaubプロダクトを使った腸活を、そして心のコンディショニングはこどもたちとのサッカーを、というのは非常にバランスがいいのかもしれませんね。

しっかり継続していきたいと思います。

高いパフォーマンスを維持し続けるために必要な”準備力”とは?

talk theme②

それではトークテーマ2に移りたいと思います。

高いパフォーマンスを維持し続けるために必要な準備力」ということなんですけども、具体的にどのぐらい準備をしたり、何を意識されて日々準備をされているのでしょうか?

仕事の準備は20年くらいルーティン化しているのですが、意識としては自分の中の興味をアップデートするということ。

当たり前かもしれませんが、新しい情報は素早く入れ続けるようにしています。

さらっと言っていますが大変ですよね。

サッカーの世界は、チームや選手の移り変わりが本当に早いじゃないですか。新たなスター選手が突然台頭したり、戦い方のトレンドの変化も早い。且つ情報がオープンになる頻度も多い社会になってきていて、中継を見てくださっている視聴者の皆さんもかなり知識が豊富なんですよね。

そういった方々に納得していただく実況をするためには、常に様々なことにアンテナを張って自分の言葉として伝えられるようになっておかないといけないんです。

大変ですね。

本番以外の時間は、常に次の中継や仕事に向けた準備をしています。完全に休む日はなかなかないですね。

1週間のうち大体何試合実況されるのでしょうか?

大前提週によって違うのですが、中継だけで言ったら3、4試合ですかね。ミッドウィークがあるかどうかでも変わります。そして今は中継以外の仕事の割合も多くなってきました。

中継以外の仕事というのは、DAZNの番組とかですか?

はい。ジャッジリプレイなどです。

ジャッジリプレイは実際やってみてどうですか?

番組が始まってからそれなりに時間は経ちますが、ずっと悩みながらやっています。どうしたら一番良い方向に伝わるのかということを考えながらやっています。難しい番組ですね。

難しいですよね。

はい、難しいです。でも、うまく仕事ができればサッカー界に貢献をしている感覚を得やすいので、やりがいはあるんです。

ただ、当然難しいテーマを扱うので緊張感は常にありますね…

そうですよね。ジャッジリプレイがあることによって、間違いなくサッカーの見方であったり、ルールに関する認識を揃えることはできるような気はするものの。

サッカーのわかりにくいルールや知識の理解を広めるというところは、わかりやすく貢献できると思っているので、常に番組で発信していければいいなと思うんです。ただ一方で、個人に対して厳しい意見が向いてしまうことも多くなったりするというのは本当に難しい一面で。

僕らが伝えたいことは本来そういうところではなくて、正しいルールの理解とともに「審判というのは100点を出せる仕事ではなく、いかに大変か」ということをサッカーファンの皆様にわかっていただく、リスペクトを持っていただけるように常に考えてやってはいるんですけど。試行錯誤の連続ですね。

「こういう状況のときはこうだよね」とか、そういったものを知ることができれば、もっとサッカーを面白く見ることができたり、選手や審判に対するリスペクトが生まれたりするけれども、一方でサポーターからすると勝ち点だったり順位が直結するシーンであればあるほど、批判・誹謗中傷の的になりかねないと言う意味では、難しいですもんね。

難しいですね。全員に100%納得してもらうのは本当に難しい。どうしても相手がいる競技ですから。ただその中で、「サッカーに必要なこの仕事は、こんなに大変ですごいことなんだ」ということが伝わればいいかなと僕は思うんですけどね。

ちなみに、桑原さん自身の「準備」の話ももう一度お聞きしたいのですが、例えば選手を覚えたりとか、事前に試合を見ておくとか、そういったものはキャリアを重ねた今でもかなり時間をかけるのでしょうか?

常に準備に追われている毎日です。試合を見ない日はまず無いですし、試合見て選手をより深掘りしてということの連続です。

日々情報がアップデートされていくので、少しでも準備・情報収集をさぼると、最前線に追いつくのが本当に大変になってしまうんです。なので、朝起きたら一番最初にするのは寝ている間に起こった世界のサッカーニュースに目を通すこと。これを毎日やっています。そこから1日が始まります。

すごい…。

そうしないと、後が大変になってしまうんですよ。

経営者たちが日経を見るのと同じような感じですね。

(笑)

そんな大したものじゃない気もしますが、ジャンルとしては同じかもしれません。

世界中で起こったサッカー界のニュースを毎日チェックする。徹底していますね…。

対象を世界にすると、6時間だけでも相当ニュースが増えてるんですよね。毎日本当に追われまくっています(笑)

桑原さんの中で最近のサッカー界の傾向であったり、気づきってありますか?

サッカーという競技の傾向で言うと、よく言われてることかもしれませんが、サッカー自体がすごくフィジカルなものになってきているというのは顕著に変化してきていますよね。

おそらく今、Jリーグの下部組織のセレクションも、フィジカルの要素をかなり重要視していると思います。

確かにそうですね。

だからこそ、こどもの頃からコンディショニングに気を遣う家庭がすごく増えているなと。

僕らがこどもの頃では考えられなかったと思うのですが、小学生のうちからサプリであったり、プロテインについて親が学んで子供に摂らせてみたり。

間違いなく増えていますね。

なので、フィジカルが本当に求められる時代になってきたなと感じています。

当然これは良いところも悪いところもあると思うのですが。世界最高峰のプレミアリーグはその最たるものでしょうし、選手にとっては本当に大変なんだろうなと。啓太さんだったら今でも順応できると思いますが…(笑)

いや…ちょっともうきついかもしれないです(笑)

当時は走れるプレイヤーというふうに言われていましたけども、今の選手たちの中に入ってしまうと並になりますよね。

そんなことはないと思いますが、今は走れることがベースですもんね。

実は先日、今シーズンで引退を表明された柏木陽介選手と話をしたのですが、アキレス腱を切って、復帰した試合で走行距離を見たら13.4キロだったみたいなんですよね。

すごい!

相当走ってるじゃないすか?

今シーズンのJ1の走行距離ランキングでTOP10にかかってくるんじゃないすかね?

それくらい走らないと勝てない世界なのかなと思うと、今の現役選手たちを本当に尊敬しますよ。ちなみに、桑原さんの視点から見てヨーロッパのサッカーとJリーグのサッカーでいうと、どんなところが違いますか?

大前提こどもの頃からどんな教えでプレーしてきたのかという文化も違うと思うので、そこから繋がってると思うのですが「抜かれないことを良しとするのか」「奪うことを良しとするのか」。

そういうところから全然違うのかなと思いますね。

なるほど。

対峙した時にどこまで出ていくのか。ディフェンス面で何を優先するのか。その辺がヨーロッパと日本は考え方・カルチャーがそもそも違う気がします。

カルチャー・考え方が違うから、トレーニングも全然違ってくるってことですよね。奪うためのトレーニングをするのか、抜かれないトレーニングをするのか。

そうですね。

ちなみに、桑原さんが実況のためにトレーニングされていることはありますか?

トレーニングというのは、フィジカル的なトレーニングだけじゃなく、当日を万全な状態で迎えるための準備という広い意味で。

例えば、その試合を担当するにあたって言わなきゃいけない呼称があるじゃないですか?国によってはものすごい言いにくい(笑)

最近だとACLが開催されていますけど、タイのチームとかは、すごく選手の名前が長いんですよ。あとは中国のチームや韓国のチームだと似た名前の選手が多いとか。そういうのは中継に向かう前に、スラスラと言えるようにトレーニングしていますね。

これは実況ならではですね…(笑)

逆にJリーグではそういうことはほぼ無いんですけどね。

でも、どうしても言いづらい、はっきりと発音しづらいお名前の選手はいるので、間違えないように気をつけています。ただ、ACLだと審判団が直前に言い渡されたりすることがあるんです。且つお名前がすごく長かったりするんですよ。

直前だとしんどいですね。

とはいえ間違えられないですし、だからと言ってゆっくり読むのはカッコ悪いというか…。だからすごい集中力で臨んだりしますね(笑)

大変だな〜(笑)

質問が来ているのですが「SNSでフォロワーやアンチからの声を参考にされたりするのでしょうか?」とのことですが、批判はやはりあるのでしょうか?

中継に関しては僕はおそらく少ない方じゃないかなと思うんですよね。自分でエゴサーチをしていないからというのもあるかもしれませんが、ほとんどそういうことはないと思います。

すごいですね!

ただ、番組に関しては結構あります。番組で出た見解がご自身の望んでいたものではなかった際に、強い口調でお叱りや批判が来たりということはありますよ。

「そんなわけないだろ!」みたいな話ですか?

そうですね。ルールを誤認されてしまっていることもありますし、自分が応援しているチームが優勝や残留争いを迎えていて、1つのジャッジで勝敗が変わってくる場面だと、どうしてもサポーターの方も熱くなりますから。

それくらい熱く応援するのは良いことでもあるんですけどね。1人のサッカーファンとして気持ちはわかるので、そういう意味ではもう慣れました(笑)

続いて「私は仕事柄デスクワークが多く座ってる時間が長いのですが、桑原さんは実況などで座り続けた際のリラックス方法や気をつけていることありますか?」と言う質問も来ています。

生放送中はそういうことに気を配る余裕すらないというか…。

基本的にはもう全集中で3時間くらい臨まないといけないので。中継が終わった後に「腰が痛いな」とかはあるんですけどね。中継中はそういうことすらもあまり感じないぐらいのめり込んでやっているんだと思います。

なるほど。もしかすると実況の方は「瞬発系」なのかもしれないですね。3時間っていう時間からくるものなのかもしれないですけど。

なので自宅で資料整理をしたりするデスクワークの時の方が、そういうことを感じますね。そういうときはストレッチをしたりします。

運動ってされています?こどもに対するサッカー指導以外で。

サッカー以外はしませんね。運動はこどもの頃から全てサッカーをベースにやってます。

桑原さんの日中の働き方や、中継のない日の働き方がすごく気になるのですが、どんな感じなのでしょうか?

深夜中継がなければ、早起きをしてきちんと朝食を摂って…というスタートから始まります。

そこからすぐに「試合を見る」「資料を作る」といった情報収集や作業に臨んで、1日没頭している感じです。

お休みってあるんですか…?

結局僕もフリーの立場なので、中継のための準備の時間は自分で調整して時間割を作れるわけなんですよね。なので、やれることはいくらでもあるので結局1日何も仕事に関わることをしないという日はなくなりますね。

なんとなくそんな感じがして、すごいなと思ったんですよね。

この世界に入ってから「仕事の準備を丁寧に細かくやってて偉いね」と若い頃によくプロデューサーに言っていただいたのですが、何かその言葉に違和感を感じていて。

結局好きなことを仕事にさせていただいてるので、努力している感覚は無いんです。好きだから出来るだけだと自分では思っています。

サッカーが好きすぎて、フランスワールドカップを現地観戦したくらいですもんね(笑)

はい、若い頃に貯金をはたいて行きました。

もっとそのお話も聞きたいんですけれども、一旦トークテーマ3に移りたいなと思います。

はい!

日本サッカーの発展と恩返しのために桑原さんが見据えるチャレンジと必要なコンディショニングについて

talk theme③

最後のトークテーマは「日本サッカーの発展と恩返しのために桑原さんが見据えるチャレンジと、必要なコンディショニングについて」です。今はもうサッカー界で知らない人がいないくらい大人気の実況者桑原さんですけれども。

いえいえ、まだまだです。

桑原さん個人としては日本サッカーの発展そして恩返しのために精力的に色々なことに取り組まれていらっしゃると思うのですが、ことコンディショニングにおいては生まれ持った身体の強さもあって、あまり気にされてなかったという話もあったかと思います。

今後についてはどんなコンディショニングが必要だとご自身で考えていらっしゃるのかを深掘りしていきたいなと。

ぜひ!

僕自身思うのは、サッカー選手のときに、コンディショニングにおいてもっとこうしておけばよかったなと思うことはたくさんあるんですよ。

それは誰にでもあることでしょうね。

自分はできなかったけど、本当はやった方が良いことを後世に伝えていく義務が我々はあるのかなと思っていて。

そういう意味では桑原さんは、将来実況者になりたいというこどもにはどんなことが必要だと伝えます?

やっぱり「好きな気持ちを育てること」が一番の近道だとは思うんです。そのために何から取り組めばいいのかを整理していく。

なるほど。

誰しも、自分に向いていることが必ずあるじゃないですか?

はい。必ずみんな才能がありますからね。

自分に向いてること、つまり才能を、自分で認知することはもちろん第三者の目線で自分を見られるようになることが重要なのかなというのは若い頃から考えています。

僕の場合サッカーに関わって仕事をするというのを目指したときに、とはいえサッカー選手になるプレイヤーとしての才能が全くなかった。でもそれで諦めるのではなく「プレイヤーという形以外でどうすればサッカーに関われるのか」をとにかく考える。その結果、「自分はこういうことが得意だから」「こういう角度であればサッカーに関わって生きていけるかも」というところをまずは知る。信じられるものを見つける。僕はそれをやったおかげでこの世界に入れたんです。だからこそ、自分に向いていること、自分が得意なことは何なのかということを、知ることが一番大事だと思うんですよね。

深い。

だから今、コーチと言う役割を通してこどもたちと接する機会が多い中で、僕は常にこどもたちに自己肯定感を高めてほしいなと思って接しています。

サッカーだけじゃなく、人生を通して色々なことにチャレンジできるようになってほしい。そうなると、結果的にもっとサッカーを好きになってくれるんじゃないかなと。

やっぱりまずは本当に好きなこととか、自分のやりたいことを見つけるというのが人生において大事ですよね。特に未来の可能性に満ちたこどもには「自分ならできる」と思ってもらいたい。

本当にそうですね。

「自分にはこれできないな、向いてないな」といった、そういったネガティブな考えが最初に来るのではなくて、「これならできそうだ」とか「俺だったら何だってできる」って思ってもらいたい。そう言った気持ちの面が大事ですよね。

思考のコンディショニングがすごい大事だと思っていて。

特にこどもたちはメンタルがまだまだ安定していないところも多々ある。誰かと比べるのではなく、自分自身にフォーカスを当てて、昨日より今日、先週より今週「これがちょっとできるようになった!」みたいな経験を積み重ねて、たくさん自信を持ってもらいたいなと思っています。

間違いない。

この考えは決死でこどもだけではなく僕ら大人も変わらないと思いますが。そういう意味でも、やはりメンタルがすごく大事だと考えています。もちろん年齢的にも身体には気をつけないといけないんですけど…(笑)

まさに今言っていただいたことは「思考が現実を作っていく」ということだと思いますし、やっぱり思考できないことは実現しないと思うんですよね。

そうですね。

もちろん全てがうまくいくわけではなく、結果的には自分が思い描いていたものよりも「あれ、思ったよりもうまくいかないな」と言う結果になることも当然あると思うんですけど、結局は自分の想像の範囲は超えないじゃないですか?

だからこそ思考をとにかく育ててほしい。確かにこれはもう大人もこどもも一緒ですね。

だからこそ、啓太さんがやってくださっているドリームサッカーのような、夢を叶えた大人が夢を叶えたいこどもたちと触れ合う時間が本当に貴重だと思っていて。あの時間は、こどもたちが夢を見られる時間だと思うんですよ。

嬉しいです。

もっともっとそう言った活動を増やしていけるように貢献できたらいいなと思っています。

ちょっと質問にも答えていきたいんですが、「桑原さんは準備を怠って失敗した」といった失敗談はあるのでしょうか?というご質問が来ています。

いわゆるしくじり先生的なものですね。

怠って…ということはあまり無いですね。

ただ、全く予想していなかった、つまり準備の対象に入っていなかった選手が出場してきて、且つその選手が活躍してしまって深く語れなかったみたいな経験はありますよ。

でもそれは情報がないから仕方ないことですよね?

そうですね。

ただ、もっと準備できたことがあったんじゃないかなと後悔したりすることはありますね。もちろん世界で行われている全ての試合を見ることは不可能なので、どうしても何かしらは情報が漏れた状態になるのは仕方ないことなのですが、知らなかった選手が活躍するというのはある意味自分の情報収集の仕方が間違っていたんだと捉えて、準備の方法を今一度見直したり、自問自答したりすることはありますね。

世界中のサッカーをずっと追い続けなきゃいけないのはかなり難しいですよね。

そうですね。でも、できる限り極限まで近づきたいなと思っています。

続いては、「実況者になるためにはどんなスキルが必要なのでしょうか?」という質問が来ています。いかがでしょうか?

スキルという意味では、言語化する力は必須かなと思います。ただ、最終的にはその競技・人・クラブに対する愛情があるかが、結局は一番大事なんじゃないかというのは常に思いますね。

キャリアを積み上げて第一線で活躍し続けている桑原さんの言葉は重いですね。

人の気持ちって言葉の端々に現れるものだと思っているんです。

リスペクトが足りていなかったら、言葉に表れるんですよね。そうするとやっぱりサポーターの方、視聴者の方が不快に感じることが必ずある。リスペクトであったり、謙虚さは持ち続けないといけないというのは毎日感じていますよ。中継に臨むときには、常に始まる前に自分に言い聞かせます。

これは僕が個人的に実況者の立場の方に聞きたかった質問なのですが、桑原さんは好きなチームはあるんですか?

ありますよ。例えばヨーロッパの中継をしていて、日本人がいるチームはどうしても肩入れしたくなることはあります。

でも、対戦相手のチームが好きな視聴者の方も必ずいらっしゃるわけじゃないですか。なので、そう言った個人の感情はもちろん出さないようにはします。

確かに桑原さんの実況は、特定のチームが好きというよりフラットな目線で中継している感じが伝わってきます。

なので、ACLの中継はすごく不思議な感覚になるんですよね。

どう言うことでしょうか?

応援寄りの中継になっても問題ない珍しい雰囲気があるというか。先ほど伝えたものとは真逆の雰囲気になるんですよ。

確かに。

1月から始まるアジアカップ、僕も中継を担当させていただきますが、日本代表の試合はどうしたって応援目線にはなってしまいますよね(笑)

そしてそれが許されるところでもある。ただ、だからと言ってジャッジに関して応援目線で間違ったことを発言したりというのは絶対にしないように心がけてますね。そこは必ず中立に。

なるほど。ジャッジに関するところはセンシティブですもんね。

そうですね、ミスリードだけはしちゃいけないと思っています。

日本サッカーラブだけれども、大前提フットボールラブなわけですもんね。

その通りです。まずそこありきなので。

ありがとうございます。

最後の質問にお答えいただこうかなと思うのですが、桑原さんにとって、こうなればサッカー界に貢献できたなというご自身の基準はあるのでしょうか?

貢献の形ってたくさんあると思うんです。僕は自分に大きなことができる力があるとは全く思っておらず、それを自覚しています。

そんなことないですよ。

だからこそ、自分の関われるところから少しずつ変えなきゃいけないことを変えて広げていくことができればなと。本当にもう草の根活動ですよね。

今は小学生年代の育成に関わっていますが、大会が毎週のようにあって、実際現地に行くとそこで行われているコミュニケーションに悲しい思いをすることが毎週あります。そういう光景を目の当たりにすると、もっともっと自分がいろんなことを発信したり、率先して子供たちにとって良いと思える関わり方をしないといけないなと感じるんです。徐々にではありますが、まず自分のいるクラブの他のコーチの方々に伝わって、そこから他のチームのコーチの方々まで少しずつ広がっていく感覚はあるんです。

いいですね!

こどもたちに対して試合中にどういうふうに声をかけたらモチベートされるのかだったり。いわゆるパワハラのように感じる言葉をかけてはいけないという当たり前のことではあるんですけど、実際現場で起きているのはその当たり前が出来ていない。常識になっていないことが多い。

なので、僕は本当に大きな事より草の根で貢献したいなと日々思って活動しています。

こどもに対して、高圧的に指導されているコーチとかも、ドリームサッカーでもいらっしゃったりするんですよね…。

たくさんいらっしゃいますよね。

勝ち負けとか競争とか、もちろん競技である以上大事なんのですが、本質はサッカーの面白さや楽しさを感じてもらうことだと思います。スポーツは本来教育ではなくて楽しむものだという原点が僕の中にはあるので、もちろんプロを目指すとなればいろんなことを取り組まないといけなくなりますけれども、一番のゴールは歳を重ねてもボールを蹴ってるような大人になることかなと僕は思っています。

素敵。

そんなふうにサッカーの楽しさを感じてもらえるこどもが増えてくれると、一番嬉しいです。

ありがとうございます。

我々AuBも「全ての人をベストコンディションに。」というミッションを掲げて活動しているんですけれども、ビジョンとしては「人も社会もコンディショニングする」というふう思っています。身体的なコンディショニングはもちろんなんですが、社会全体のコンディショニング、つまり生きていく環境ですよね。身体と社会のコンディションが揃ってこそ、初めてベストコンディションになると信じているので、今日の桑原さんのお話は、社会をコンディショニングしていくというところに繋がると強く感じました。

おっしゃる通りだと思います。

ご参加された皆様にとっても良い時間だったのではないでしょうか?

それでは第10回となる節目のgoodcho live now!、ここまでとさせていただきます。改めて桑原さん本当にどうもありがとうございました!

ありがとうございました。皆さんありがとうございました。